さだ・とし信州温泉紀行

続編;茨城パートⅡ

小学生との交流会『作ってあそぼう』

2017-01-30 20:19:54 | 地域







2017.1.28(土)10:00~13:00、学校区児童館にて
二区児童館中里さんの招待で阿見町の小学生約30名と、さやっぽ歩会8名が集まりゲームと工作教室の交流、講師は水戸より、「おもしろ理科先生」飛田さん。
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さやっぽ歩会新年会2017

2017-01-23 19:56:12 | 地域
大正琴「春よ来い」「荒城の月」「早春賦」


かなめ会「黒田節」


師範と相舞踊「かっぽれ」


カラオケ「二輪草」

新年会2017.1.22、公会堂にて、参加者41名
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宝篋山ハイキング

2017-01-17 19:58:34 | 地域










2017.1.15(日)宝篋山ハイキング
筑波山の南東側にある宝篋山(ほうきょうさん)、通称小田山は、標高461m。 昔からこの地域の里山として親しまれ、平成16年に、地元住民などの協力で、本格的な登山コース(ハイキングコース)が整備された。
 宝篋山の登山コースは、6コースある。今回は、第7番目の簡単コース(片道30分)を特別ガイドをして頂き挑戦、山頂でのお弁当、360度パノラマの景観を満喫した。
山頂には、山の名前の由来となっている宝篋印塔(高さ2.5m)がある。ここで、湯を沸かし、コンソメスープとおにぎり。
山頂からの眺望は格別! 関東平野を一望できる。霞ヶ浦はじめ、北には筑波山、 天気がよければ富士山も望むことが出来る。

◇忍性(にんしょう)
良観房忍性(りょうかんぼうにんしょう)上人は鎌倉時代の律僧で、今から800年前、建保5年(1217年)7月16日に奈良県磯城郡三宅町に誕生した。
 母の影響で幼少より文殊信仰と行基崇敬に親しみ、母の逝去を機に16歳の時、出家。36才、1252年、東国布教のため関東に下向し、常陸三村寺(極楽寺)、鎌倉極楽寺(ごくらくじ)を拠点に布教活動。とりわけ民衆救済に生涯を捧げ、貧窮民への施物や療病所などの社会福祉活動に多大な業績を残した。山頂に宝篋印塔(高さ2.5m)を建立。「山頂から見える範囲に住む人間や動物など全ての命を極楽浄土に導きたい」と願った。鎌倉へ移るまで、約10年間、宝篋山にいて貧者と病人救済に努め、「救済の忍性」として、語りつがれている。
 忍性は、蒙古襲来の際には北条時宗の命に応じて祈祷に大功あり、東大寺大勧進職、四天王寺別当などの重職も歴任している。
映画「忍性」(和泉元彌主演、秋原監督)
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ドキュメント『再生への道』の立ち読み(1)

2017-01-17 19:54:59 | 出版




 経営不振、倒産の危機に陥っている企業を見ると、その原因の根っこの部分はみな共通しています。連続赤字、不良債権の山、借入金の三重苦に苦しんでいます。
 これらをもたらした原因を明らかにし、短期間のうちに取り除く。これが会社を再建するということです。
 そんなことはわかっていると経営者の方はみな言います。が、わかっていながら、むずかしい、できるわけがない、それをやっては今後に差し支えるなどと言って、手を打たずにいる。手を打ったとしても、中途半端なことしかやっていない。時代や社会環境のせいにして思考をストップさせる経営者も少なくありません。
 つまり、会社が再建できるかどうかは、経営者が本気になるかどうかで決まるのです。本気で会社を生き残らせたいのか、本気で会社を改革したいと考えているのかどうか。経営者の本気度で決まります。
現在、私はターンアラウンド・マネジャー(再建請負人)の看板を掲げていますが、もともとは板硝子メーカーの営業マンでした。営業には販売店や問屋を相手とするルート営業と、設計事務所や建設会社を相手にする技術営業があり、私はルート営業担当でした。そのため、営業担当、課長時代には取引先の監査役を何社も務め、決算監査をやっていました。
 そうした経験を買われて89年、46歳のときに東京都内にある販売子会社に専務取締役として出向しました。これが再建請負人としての第一歩です。ここでの3年間で、売上管理と経理の違いや、人材の採用・教育の大切さなど、経営者のやるべき仕事、役割を学びました。
 その後、92年に都内B社に専務として、95年に東北T社に代表取締役社長として出向。そして97年に、赤字続きで苦しんでいた茨城県内の卸売業者4社が合併した株式会社ひたち硝子の二代目代表取締役社長に就任しました。
 同社では、「厳しく、楽しく、たくましく」をモットーに、経営者としてたずさわりそれまでの赤字を3年弱で黒字に転換。以後も増収増益を続け、05年に取締役顧問に退きました。
 同年、ムラキ総研を設立し、ターンアラウンド・マネジャーを名乗りました。すると、親会社から依頼があり、独立系の創業80年以上の老舗問屋・株式会社信州硝子のCEO・代表取締役副社長として再建を託されました。
 契約期間は2年間。これまでの体験をすべて注入して再建にあたり、1年数ヵ月で黒字化に成功。2年目に増収増益基調としたところで、契約通り退任しました。

■ 改革に聖域なし
――― 長引く建設不況と円高による輸入品の流入で、板硝子業界はバブル崩壊後、苦境の一途。当時、「日米貿易摩擦問題」を契機に、系列化の排除、リベート制度が廃止され、従来体質の問屋は商売が成り立たなくなってしまった。そんな環境下で、にっちもさっちもいかない会社を任されました。

 まず必要なのは、再建を担う責任者にその会社の1年後、2年後の姿が見えるか、絵を描けるかどうかです。私はひたち硝子の再建に約3年かかりました。が、信州硝子では2年足らずでできた。それは茨城で経験したことをもとに、長野で絵が描けたからです。
 たとえば、ひたち硝子では現業部門、管理部門の整理、効率化を進めましたが、当初は営業部門は聖域として手をつけませんでした。販売会社は営業第一と考えたからです。
 ところが、営業が改革を遅らせた一番の原因でした。営業管理は、売上、回収、利益の3項目がありますが、売上しか見ない営業が何人もいました。原価を割って売ったり、不良債権を膨らませたり、赤字を隠すため経理処理せず何年も仕掛在庫のまま残していたり……。
 改革に聖域を設けてはいけない。この教訓も長野で活きたわけです。

「改革と改善は違う」ということも、茨城時代に学びました。
 これまで100円でつくっていたコップを80円とか85円で作るのは改善。50円以下でつくらないと改革にはならず、グローバルな時代の競争に勝てない。
 改革は、誰がみても分かる劇的な変化です。再建を担う責任者は、この仕掛けを立案し実践するのです。


■ 根っこ以上の木は育たない
――― 会社再建とは何か? 一言で言えば、これまでの体制、経営陣が手をつけなかった経営上の問題点、解決できなかった問題点を、手遅れになる前に、一気に取り除くことです。

 経営悪化の問題点は、冒頭に述べた三重苦に行き着きます。解決できるのは経営トップ以外ありません。改革が進まないとしたら、それは社長がサボっているということ。社長の怠慢が会社の経営を悪化させるのです。
 赤字縮小のためコストカットしようというとき、給与体系の見直しは避けて通れません。年功序列型は即刻改める。それを、長年一緒にやってきたからなどと、しがらみに引きずられて進められないのでは明日はありません。
 不良債権の回収もトップが自ら相手先に出向かなければ話になりません。「3割カットするから7割払え」などといった交渉は、トップでなければできないからです。
 支払の悪い先には売らないのが基本、そして不良債権や不良在庫は損切りし、損失を計上する。赤字決算だと銀行融資が打ち切られると心配する人がいるでしょう。しかし、それは再建計画書などをまとめて説明することで解決できるはずです。
 
再建とは、木にたとえるなら枝葉を落として根っこ、すなわち経営基盤をつくることです。改革を進めると、やる気のない社員、改革についてこれない社員は、木の幹を揺さぶると活きの悪い枝葉が落ちるように、自分から辞めていきます。そのかわり根っことなる人材を、経営が厳しいときでも3年後、5年後のことを考え、採らなければなりません。
 根っこ以上の木は育ちません。人材だけでなく、職場風土の活性化が大切です。収益構造や財務面、商品力、技術力も含め、根っこ(経営基盤)をしっかりつくっていくことが必要です。
 長いトンネルから抜け出るとともに、次の成長路線の入り口に立たせることができるかどうか。ただ数字を瞬間的に赤字から黒字に戻したというだけでは、必ずもとのトンネルに引き戻されてしまいます。
 成長路線のスタートラインに立ったという実感を、経営トップも社員も感じ、将来に期待を持てる状態に持っていくことこそが再建なのです。



 再生には当然、痛みがつきまとう。だが、社員の気持ちが痛んだ状態で再生に時間をかけてしまっては、社員はまた、途方に暮れるだけ。社員たちに言い聞かせたことは、“短期間でともに乗り越えよう”ということ。「闇夜は続かない。必ず夜明けが待っている」と。

■ 長期的な”改善”でなく、短期に状況を一変させる”変革”
会社再建の要諦の第一は、再建期間は短期にということです。長期的な“改善”ではなく短期に状況を一変させる“変革”が必要となります。
ターンアラウンド・マネジャー(再建請負人)である私の場合、会社再建を果たす期限は1年半、遅くとも2年以内と考えています。

 短期間で再建させなければならないのは、一般の経営者が再建にあたる場合も同じでしょう。
 再建には当然痛みが伴います。社員の給料カットが避けて通れないケースも多いはずです。それなのに示された再建計画が5年、10年などと長期にわたるようでは、社員は途方に暮れてしまいます。
 計画自体は短期だったが、期限内に黒字に転じることができず、締め付けがズルズル続くというのもいけません。社員は途中で疲弊してついてこられなくなります。
「いつになったら給料は元に戻るのか」
「いつになったらボーナスが出るのか」
 などと考えるようになって士気が落ち、社内の雰囲気もかつての怠惰なものに戻ってしまうのです。
 会社再建は、時間的に余裕を持ってじっくりと取り組む「改善」では達成できません。追い込まれた泥沼状態からすみやかに抜け出せなければ、会社再建など不可能です。再建に向けて必要なのは、短期間で状況を一変させる、抜本的、劇的な「変革」なのです。
 再建実務自体は、むずかしいことはありません。問題点を発見したら、あとは手順通り粛々と作業を進めるだけです。手の打ち所もだいたいは決まっています。それをしっかりやり遂げられるかどうかです。
 ところが取引先や社員、社員の家族などのことを考えて、問題点の洗い出しをためらったり、聖域をもうけたり、決断や実行を躊躇してしまう経営者が少なくありません。「改善」でお茶を濁そうとする経営者も多い。前回述べたように、再建できるかどうかは経営者本人が、本気になれるかどうかにかかっていることを忘れてはいけません。


■ 社員にどんなメッセージを送るか
――― 信州硝子のCEO・代表取締役副社長に就任したのは、2005年5月の大型連休明け。就任するとすぐに情報収集に努め、再建計画の作成にあたった。1ヵ月後の6月11日、全社員を集め、1枚の紙にまとめた「信州硝子の再生・改革計画」の要旨を発表しました。

 再建計画は、主要仕入先や取引銀行にだけでなく、社員に示すことが必要です。会社再建には社員の理解と意識変革が不可欠だからです。社員の意識が変わらなければ再建など不可能です。
 私は社員に説明した計画要旨の冒頭に、「はじめに」として次のように記しました。

「現在、当社は不良債権、借入金過大と、労務倒産型の収益体質のため、経営破綻寸前になっています。失業するより、力を合わせて『ベンチャー企業=新生・信州硝子』の創業メンバーになることを決意しましょう。
 闇夜は続きません。必ず夜明けが待っています。生き残る条件として、足もとの危機を克服し、黒字化を図り、『社員にとって、やりがいのある会社、仕事を通じて自分が成長できる夢のある会社』を創業しよう」

 そして具体的な再生・改革計画を示しました。
① 売上指向から粗利重視へ
 固定費の大幅削減、不良債権処理、与信回収管理ルールの徹底と、まずは健全経営に転換することを宣言します。
② 人事制度改革
 年功序列型賃金を成果主義・実力主義に改めます。
③ 組織改革
 ピラミッド型組織をフラットな組織に変更するを掲げました。
④ 職場風土の活性化と差別化
 職場を、そして社員の意識を劇的に変えるために、企業風土の活性化策として、活力朝礼の実践、差別化戦略としてのコンピテンシーの導入を盛り込みました。


■ 風土を劇的に変えるから、
「あの会社は変わった」と言われる

―――信州硝子には朝礼がなかった。ときどき全社員が朝、召集されることはあったが、それは社員にハッパをかけたり説教するための場でしかなかった。

 信州硝子の場合、よい社風、よい企業風土と呼べるものが私には見えませんでした。
 会社再建では、社員をやる気にさせ、社内の雰囲気を明るいものに変えることもたいへん重要です。それには職場の雰囲気を劇的に変える必要があります。
 社風、企業風土の確立には、朝礼を活用することが一番です。朝礼には、その企業の社風、社員の質などのすべてがあらわれます。まさに朝礼は“企業の縮図”です。朝一番に、さわやかで、楽しく、リズミカルな職場朝礼を創造することで、“ヤル気集団”が生まれてきます。
 当番社員の「皆さん、おはようございます」の声に、全員が元気よく「おはようございます!」と挨拶すること、連絡事項を手短に伝えることなどのルールを決め、毎朝の朝礼を導入しました。すると、たったこれだけのことで、社員の表情が明るくなり、態度もキビキビしたものに変わりました。

 そして効果が高かったのが「コンピテンシー」の導入です。「コンピテンシー」とは、「高い業績をコンスタントに示している人の行動の仕方などに見られる行動特性」と定義されており、簡単に言えば、「職場風土を活性化する、よい習慣づくり」ということです。
 それまで同社では、事務所はうす暗く、職場の清掃にまったく無関心、女性社員がたまにデスクの上をきれいにする程度でした。電話がかかってきてもすぐに出ようとせず、平気で相手を待たせていました。来店のお客さまに対しても、ろくな挨拶をしていませんでした。
 導入にあたっては、
「多少改めましたという程度では駄目。劇的に変わらないと他人は評価しないものだ」
 と社員に言いました。

 しだいに銀行とか取引先から「電話に出るのが早くなった」「事務所に行くと、さわやかに挨拶をしてくれた」「信州硝子は変わった」という声があがるようになりました。
 掃除についても、朝の朝礼前に全員が自主的に10分間掃除をするようになりました。
 企業風土は非常に重要です。活性化することによって職場が明るくなり、会社にプライドを持てるようになり、そこから会社に対する忠誠心も芽生えてくるのです。




 黒字基調に戻すために、固定費削減は避けて通れない。人員削減という止血のための苦しい決断を伴う。希望退職を募って辞めていく人たち、会社の先行きは暗いと、長く勤めてくれた人が辞めていく。「再生することが社員のため」の信念を決して曲げることはなかった。

■ 先に血を止めなければその先が続かない
─── 会社再建には社内改革が必要だ。改革には当然ながら痛みを伴う。だが、社員が望むのは今日の苦難より、先の見通しである。経営者は明確なビジョンを打ち出し、その可能性を確信的に、そして明快に語りつづけ、社員に希望と安心を与えなければならない。

 再建でまず手をつけなければならないのが、『止血』です。それに即効果があるのが、人員削減と社員の給与総額の圧縮です。会社再建にはこの2つの固定費削減策の実行が避けられません。毎月、毎期、ダラダラと流れ出ていく固定費を抑えることこそ、その他の再建計画に先立って、まず行うべきことです。
 実は私は、1997年3月にひたち硝子の社長に就任し、実際に赴任するまでは、人員削減は期末である同年12月頃をめどに行えばいいと考えていました。内情をじっくり把握し、再建計画を練ったあとにやればいいと。
 ところが親会社から、「時間的余裕はない。希望退職者を募集するのが先決だ」と言われました。毎月赤字を出し続けているのだから、すぐに手を打てというわけです。このとき、止血こそが再建を託された経営者が、第一にやるべきことなのだと学びました。
 止血を怠ったままでは、銀行が支援を継続してくれたり、仕入れ先がいつまでも納入してくれることなども考えられません。
 当時、長引く建設不況と円高による輸入ガラスの流入で、業界は苦境に立たされていました。94年をピークに板硝子の需要は落ち込み、ピーク時を100とすれば需要は約40%減。価格も約40%近くダウンという厳しい事態に追いやられていました。


■ 辞めたいという人間に慰留する必要はあるか
─── 97年4月1日、ひたち硝子の社員数は私を含め80名だった。適正社員数は2割減の64名と計算した。2割減れば、売上高が伸びなくてもなんとか赤字を脱却できると。5月31日、同年春に入社した新入社員も含め全社員に対し、希望退職者の募集を文書で通知した。募集人員は、期末までの自然減を考慮して11名。会社都合による退職金に給料1ヵ月分をプラスするという条件で、募集期間は6月1日から6月15日までとした。

 人員削減の対象となる人物像というのは、やはりあります。
 第一に、挨拶や返事がちゃんとできない人。
 第二に、素直でない人、嘘をつく人。
 こういう人はなかなか自己改善が難しい。朝礼で練習しても大きな声が出せない、リーダーの目を見て話せないという人です。
 隠し事をしていたり、ルールを守らなかったり、会社に損害を与えているケースがあります。少なくともこういう人がいると、チームやグループ内の人間関係が悪くなる。
 人員削減で大切なことは、優秀な人材を辞めさせず、いらない人材、いてほしくない人材に辞めてもらうことです。優秀な人材が辞めてしまい、ただ会社にぶら下がっているだけの社員、マイナスの社員しか残らないのでは、再生計画も何も話になりません。それこそ会社消滅が現実の話になります。
 希望退職者を募集した際、優秀と見ていた人間は幸い手を挙げませんでしたが、もし手を挙げたら説得して慰留させようと考えていました。  
 しかし、いかに優秀な人材でも、辞めたいと言う人間に、慰留のための説得をしてはいけないと、これはひたち硝子での経験で感じました。結局、11名の募集に対して8名が手を挙げ、その後、自己都合や定年などで期末までにほぼ予定通りの17名が退職しました。
 こういう時期に辞めていく人の理由は、会社の先行きが明るくないという思いや、朝礼を導入するなど職場がどんどん活性化してくるのについて行けず、居づらくなったというものです。
 ところが面白いことに、それまで10人だった職場が8人とか9人になると、残った社員たちが辞めた人の分をカバーしようと燃え、さらに職場が活性化するようになったのです。改善など新たな工夫も生まれ、前と変わらないか、従前以上の業績が上がるようになりました。
 いくら上から見て、必要な人材と思っても、無理やり説得して、イヤイヤ残ってもらうより、残った人間が知恵を出しあい、発憤して仕事をしたほうがコストパフォーマンスが高いことがわかったわけです。それからは慰留する考えは捨てました。いったん辞めると言った人には、喜んで辞めてもらう、それが鉄則だと学びました。


■ 黒字体質にするには指名解雇もやむなし
─── 翌98年、ひたち硝子は不採算部門であったサッシ加工部門の外注化などで収益改善を進め、人員も12月の期末時には58名になった。が、売上高が予想を下回ったため、同年度での黒字転換ができなかった。

 決算対策のため、10月11月の2ヵ月間、社長20%、管理職12%、一般社員10%の給与カットを実施しましたが黒字転換できませんでした。
 ただ、給与カットにより会社が危機的状況にあること、現状のやり方、考え方、意識の持ち方ではダメだ、自らを改革しなければ、という危機意識を全社員に浸透することができました。
 翌99年、経営は土壇場に立たされ、市況がさらに悪化しても黒字体質に転換させるには、計4名の削減が必要でした。ここまでくると、希望退職募集という生ぬるい手段でなく、指名解雇をやらざるを得ません。決算が出る2月末に指名解雇を行うことを全社員に通知しました。
 では誰を指名するか。自分ひとりで、2ヵ月間近く社内を見ながら、「あいつをカットしたらどうなる」「こいつを辞めさせたらどうなる」と、頭の中でシミュレーションを繰り返しました。
 もうこの時点で、いてもらっては困るような社員は一人もいませんでした。そこで自分なりに、「彼の仕事ぶりでは将来的に社のガンになるかもしれない」「このまま仕事を続けてもマイナスにしかならないのでは?」などと、会社が普通の状態にあれば解雇理由にならないことを理由に、課長1名、現業3名を選び出しました。
 2月末頃、Xデーとなる1週間前の月曜日に、該当者を個別に呼んで理由も言わず、ただ解雇する旨、通知しました。みな、指名解雇を行うことはわかっていましたから、納得はしていなかったでしょうが、抵抗もなく「わかりました」と答えて辞めてくれました。
 辞めたあとのトラブルもありません。赤字会社ですから、退職金の割増もありませんでした。
 この時は社長という役職の権限の大きさ、社会的責任の重大さを痛感しました。さまざまな場面で決断を下し続けなければならない経営者。いちばん辛い決断が指名解雇でした。私は、会社は社員のためにあると考えています。ですから経営者は、人に優しい、人間重視の経営を心がけなければならないと信じています。
 しかし、会社再生を図ろうというときには、希望退職者を募り、さらに指名解雇を行わなければならない場合もある。全社員の給与を下げるような給与体系の改訂が必要なこともあるかもしれません。
 そうしたとき経営者は、これが残る社員のためであるとの信念を一歩も引かずに貫く覚悟と、精神的なタフさをあわせ持つことが求められるのです。
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ドキュメント『再生への道』の立ち読み(2)

2017-01-17 19:51:37 | 出版


階段は上から掃除しなければ、いつまでたってもきれいにならない。再建も同じ。トップの意識から変えていかなければ、決してすべての社員の意識は変わらない…。

 ■ 今に慣れきった人に再建は不可能。
“異質”遺伝子が会社を変える

――― 階段は上から下へ掃除するもの。下から上に掃除していっては、階段はいつまでたってもきれいにならない。会社再建も同じで、現場の担当社員や中間管理職、役員より、まず最初に変わらなければならないのは経営トップだ。

 中小企業は社長しだい。99%、経営者で決まります。ですから、経営者が変わると会社も変わることができます。
 会社が経営危機に陥ったとき、もっともいいのは経営者が交代することです。
私が2005年から2年間、CEO・代表取締役副社長に就いた株式会社信州硝子の幸運は、私を招いたことではなく、社長が交代したことだったと思います。
 長野オリンピック後の需要急減に対応できず、経営危機に追い込まれてしまった、創業者の長女の婿である前社長に代わり、それまで常務を務めていた創業者の末子である嫡男が社長に就きました。
 新社長は社内の抜本的改革の必要性を痛感し、経営のわかる人材を外部に求めたほうがいいと判断して、主力の仕入メーカーに相談を持ちかけ私を招いたのでした。
 前社長は、業績悪化の原因は会社を取り巻くビジネス環境の激変にあり、自分は一所懸命がんばっていると、辞めるつもりはなかったそうです。
 ところが、このままでは会社の存続が危ういと危機感を持った新社長が立ち上がり、大株主の同意を取りつけて前社長を更迭しました。
 私を招請しても、新社長に危機感がなければ、再建はうまく行かなかったでしょう。新社長が「俺が、俺が」とならず、裸になって、きちんとした会社にしたいという意欲に燃えたからよかったのです。
 危機感と、社の経営に強い意欲を持つ人材が社内にいたことが、同社にとって幸運でした。
 では、再建請負人の役割とは何かというと、私は“異質ビジネス遺伝子”として社内に刺激を与えることだと考えています。
 下関のトラフグを生きたまま京都や東京の高級料亭に陸送するとき、生け簀の中にフグだけを入れておくと、何割か死んでしまう。ところが、違う種類の魚を一匹入れておくと、フグは死なずに到着するそうです。
 私の任務も同じです。再建が軌道に乗ったら終わりです。
「糞の中にいる虫は、糞の臭いを知らない」「大酒飲みは酒の鑑定はできない」と言います。外の人間が見ると、「へー、よくこれで潰れずにやっていけるなあ」と思うようなことも、その中にはまっているとわからなくなる。それが当たり前だと思っている。
 会社の常識は世間の非常識。それをわからせることが、異質ビジネス遺伝子を持った再建請負人の仕事だと思っています。

■ 挨拶の実践ひとつで一体感が出るようになる

―――しかし、多くの中小企業は、倒産の危機に直面したどん底状態にあるようなときに、社長に代わって経営を引き受けようという意欲を持った人材など、肉親といえどなかなか出てこない。結果、経営者がそのまま社を引っ張り続け、再建を目指さなければならないケースがほとんどだろう。

 そうした場合も、経営者が意識や心構えを変えることで、会社を変えることができます。
 まず変わらなければならないのはトップの心構え。トップが変わることから会社再建が始まります。それが原点です。
 続いて着手するのが、全社員の危機感の共有化、そして企業風土の改革です。活力朝礼やコンピテンシーの導入などが効果的です。
 ただ、これらは言葉や書面で指示するだけでは高い効果は望めません。トップがまず意識を変え、実践しなければなにも始まりません。
 例えば挨拶。社員に「出社したら『おはよう』と挨拶するように」と言うだけでは駄目です。社長が明るく大きな声で社員に「おはよう!」と言い続ければ、その日のうちに社員は挨拶するようになります。
 社員が挨拶を交わすのを眺めているのではなく、トップが意識を変えて、自ら実践しなければいけません。
 業績不振の会社には共通の特徴があります。社員に元気がない。お客さまが来ても挨拶しない。会社に一体感がない……。こうしたことも、挨拶の実践一つで、変えることができるのです。
 むずかしいことではありません。要は経営者が危機感を持って、意識改革できるかどうか。それにかかっているのです。

■ 社員全員のベクトルを同じにするマネジャーの役割

――― 経営トップの考えをマネジャーに伝え、マネジャーはそれを担当者に伝える。このとき重要な役割を担うのが、トップと担当者を結ぶマネジャーの存在だ。

 私の好きな言葉に、禅の『啐啄(そつたく)同時』という言葉があります。鳥のヒナが卵から孵るとき、卵の殻を内側からヒナがコツコツとつついて合図を送ることを「啐」と言い、親鳥がそれに応じて外から殻をつついて破ってあげることを「啄」と言います。この!啐と啄が同時に行われることで卵の殻が割れ、ヒナが孵ることができるのです。啄が早くても、遅くても、一瞬でも時期を外すと、中のヒナの命が危ない。そこから「機を得て両者相応じる得難い好機」のことを「啐啄同時」と言うのです。
 経営者とマネジャー、上司と部下も、阿吽(あうん)の呼吸で啐啄同時の関係になれれば、会社の再建も容易に軌道に乗るでしょう。
 ただ、鳥の親子は本能で啐啄を同時に行いますが、人間はそうはいきません。日ごろからよく対話すること、話し合うこと、会議をすることが必要です。対話することで情報の共有化を図り、ベクトルを同じ方向に向けなければなりません。
 社員全員のベクトルを同じにするには、マネジャーの役割が重要になります。逆に言うと、おかしな会社はちゃんとしたマネジャーが育っていません。年功序列でただ年をかさねただけで、リーダーシップを持ち合わせていない中間管理職しかいません。
 ではどうするか。
 これから経営再建しようという会社に、再建請負人はやってきても、マネジャークラスの人間をよそから持ってくるのは大変にむずかしいことです。生え抜きの社員を教育して、愛社精神を持ち、リーダーシップを持った社員を発掘してマネジャーに育てるしかありません。
 しかし、教育といってもむずかしいことはありません。危機感を持って意識改革した経営者が、日ごろの対話や会議を通じて自分の考え、思いを伝え続けることで、情報を共有し、ベクトルも自ずとあってきます。
 トップの危機感・意識・思いを、マネジャーに下ろし、マネジャーが担当に下ろす。階段は上から下に、順番に掃除するものです。


 赤字会社では、ありとあらゆる数字にメスを入れていかなければならない。現状を隠そうと数字を操作することは延命にはつながらず、死期を早めるだけだ。それは「人」についても同じことが言える。

■ 財務情報の信頼性を上げ、現状を正確に把握する

――― 一度左前になった会社を再建するのは、なまやさしいことではない。社員も危機感を共有し、経営者と一丸とならなければ再建はおぼつかない。自己保身を図ることなどを考えて、経営者とベクトルを同じくしない社員がいると、再建計画は内部から崩壊していく。

 再建のプロセスで、うそ、隠し事、ごまかしがあってはなりません。特に、次の3つについてはなおのことです。
 第1は「月次資料」の信頼性確保。赤字会社がまず手をつけなければならないのは、財務情報の信頼性を高めることです。これがおろそかだと会社の置かれている状況が正確につかめません。業務から発生する「数字」を信頼性のあるものにする。その数字をいろいろな視点、切り口で集計、分析する。そうしないと問題点が見つからず、次のアクションが起こせません。
 赤字会社では、売上、仕入、在庫、粗利など、ありとあらゆる数字が信用できないというか、数字のあちこちに問題があります。たとえば在庫や不良仕掛かりなど。本来は処理しなければならないのに、さも価値があるように装うということは、それだけで会社の置かれた状況を見えなくします。
 どの部門が儲けを生み出していて、どの部門が損しているのかがはっきりしないと、この部門には人を重点的に配置しよう、この部門は廃止しようなど、経営資源の選択と集中の判断もつきません。逆にいえば、それが正確に把握できるようになればいろいろな手が打てるので、業績は着実によくなります。
 しかし、数字の信頼性を上げることは簡単なことではありません。赤字が習慣化している会社というのは、えてして不良在庫も長年処理しないまま来ていて、そのため、業務の棚卸しもいい加減になり、利益の計算もいい加減になっているものです。
 月別、部署別、商品別、顧客別、担当者別の売上、利益の正しい数字が時期を失せず出てくるよう、意識と仕組みを改めなければなりません。
 疑わしい数字の精査は、時間をかけずに早急に行わなければ意味がありません。時間がとられては、やっと出てきた数字も時期が過ぎたために意味がなくなることが往々にしてあります。


■ 将来有望な社員でさえ、会社を裏切ることがある

―――第2は「異常債権発生報告」の厳格化だ。営業担当が上司報告を怠ったり、隠したり、値引き処理を先送りしていると、不良債権がどんどん貯まり、結果、資金不足解消のため利益を考えない売上に走り、売上至上主義、資金繰りに走り回る悪循環に陥る。

 悪循環を止めるには、たとえ少額でも未収金が発生したときにすぐ上司、トップに報告することを徹底することにつきます。
 すぐ報告しないと、信用調査とか出荷停止などの手を打てず、ずるずる不良債権を膨らませ続けることになります。負の資産の処理、過剰債務の解消がなければ会社再建などできるはずがありません。
 りそなホールディングスの細谷英二会長は、不良債権の処理にあたって、全行員に次の3つのメッセージを伝えました。
 ① 厳格に
 ② うそをつくな
 ③ 先送りするな
 中小企業であっても、まさにこれなのです。
 担当者がうそ、隠し事、ごまかしをする理由は、自己保身だけではありません。情にほだされてということもあります。
 ひたち硝子時代、将来有望と見込んでいた若手の営業社員がいました。ある販売店が破綻して手形ジャンプが続き、総債権残高が何千万円かに膨らんだため、その販売店の再建策を話しあいながら、債権残高がこれ以上増えないよう、限度取引をしていました。
 ところが販売店は取引先の工務店から商品を卸してくれと言われ、その店主は営業社員に「不良債権とは別にちゃんと支払うから」と泣きついてきた。
 店主と長いつきあいの彼は情にほだされ、新しい販売店を開拓したと社にうそをついて架空口座を開き、商品を流した。が、工務店から販売店に入った代金は、サラ金への返済に回され、さらに不良債権を膨らませました。
 彼は当然、解雇です。が、能力を認め、将来を嘱望していた人間に裏切られ、私は悔しい思いをしたのと同時に、一時人間不信に陥ってしまいました。


■ 役員間のホウレンソウが全社一丸の鍵を握っている

――― 第3は「ホウレンソウ」を根づかせること。“悪いことの報告こそ大切”ということをいかに理解させるか。それには、ミスは報告したら叱らない、ミスを隠していたら罰を与えるという方針を周知、徹底するといい。

 会社再建では役員会をいかに運営するかが重要です。役員が一致団結することが再建の前提であり、役員それぞれに異なった思惑があっては再建など無理な相談です。経営者とベクトルを合わせないといけません。
 その役員が集まる役員会で、「情報の共有」がしっかりなされなければ協働などあり得ません。役員会でうその報告や、隠し事、ごまかし、駆け引きがあるようでは話になりません。数値データを含め、いいこと悪いことすべての情報を共有してはじめて一丸となって前進することができます。
 しかし、いくら経営者と役員がベクトルを合わせなければならないからといって、役員が経営者のイエスマンである必要はありません。経営者は一時でも早く儲かる仕組みにしたい、儲かる会社にしたいと考えるものです。ですから、経営者が役員会で何かを発案したとき、反対意見を述べることが役員の大きな任務のひとつです。
「それは無理ではないですか。時間が必要です。なぜなら……」といった声がたいへん重要になります。経営者は誰もがそうした意見が言える役員会にしなければいけません。そうでないと経営者が先走って、独り相撲を取り、失敗することになりかねません。
 役員会を活性化させるために、ルールを決めておくといいでしょう。
 たとえば、役員会は反対意見であれ、思いつきであれ、何を言ってもいい場とする。ただし結論は多数決では決めない。反対意見が多数になっても、トップが下したことを結論とする。そして決めたことは一丸となって断固としてやり遂げる。役員会で話し合ったプロセスは一切口外しない……。
 再建できるかどうかという瀬戸際のときに、反対意見は言いづらいものです。しかし、それが言える雰囲気の役員会にしなければいけません。反対意見が出たとき、経営者が嫌な顔をするなどもってのほか。次からもう誰も反対意見を言わなくなります。


 再建を進めるにあたって、金融機関と主要取引先の支援が受けられるかどうか。ここは決して避けて通れない道。私は、再生3年計画をまとめ、それに向けた進捗を細かく報告することで支援を取り付けた。一方、会社の将来に対する「人材」という投資には資金も労も惜しむことはしなかった。

■ 再建の必達目標を設定し退路を断つ

――― 赤字続きの会社が経営を立て直そうとするとき、特に欠かせないのがメイン金融機関と主要仕入れ先の支援だ。だが、銀行も仕入れ先も、ただ「頑張るので助けてほしい」などと懇願しただけでは、甘い顔をしてくれないことは言うまでもない。

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長は、日本語では『目標』という同じ言葉が使われるところを、ニュアンスの違いを明確にするため『コミットメント』と『ターゲット』の2つの言葉を使い分けました。
 コミットメントは、絶対に達成すべき必達目標です。対してターゲットは、コミットメントより高い目標です。「実現目指して頑張ります」といった希望的観測が多分に含まれ、実現を確約できるものではありません。
 ゴーン氏は就任直後に発表した『日産リバイバル・プラン』で、
・2000年度に連結当期利益の黒字化を達成
・02年度に連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
・02年度末までに自動車事業の連結実質有利子負債を7000億円以下に削減
 との具体的な目標を1999年に掲げました。そしてこれらはすべてコミットメントであると内外に宣言し、達成できなかったら責任をとる、社長を辞すと明言しました。
 いずれも1年前倒しで達成させたことは周知の通りです。
 会社再建では、もっともリスクを背負っているメイン金融機関と主要仕入先の理解と支援が不可欠です。
 それには再生計画を立て、金融機関、仕入先それぞれにきちんと説明し、その後も計画の進捗状況を定期的に報告することが必要となります。
 再建計画はもちろん、希望的観測を羅列したターゲットではなく、説明を受ける金融機関、仕入先も納得できる具体的なコミットメントでなければなりません。
 私が2005年からCEO・代表取締役副社長として再建にあたった信州硝子では、着任するとすぐに『再生3年計画』をまとめました。
・05年8月期
 =経営陣刷新、固定費削減、不良債権処理、与信管理の徹底
・06年8月期
 =黒字転換、財務改善、モラル向上
・07年8月期
 =営業構造改革、業務改善による物流コスト削減、資産の有効活用を断行する
 として、それぞれ具体的な計画を立てました。


■ あらゆる部分の出るを絞る

――― 再建計画を説明したからといって、金融機関がすぐに新たな融資に応じてくれることはないだろう。まだ実績が出ていないのだから当然だ。計画を粛々と実行して実績を残すしかない。実際、信州硝子では07年2月中間決算後、数字となって出だすと金融機関が新規借入に応じたばかりか、金利の引き下げにも応じてくれた。

 その1年前の06年2月中間決算後、メインとサブの金融機関に借入交渉に行きました。が、新規融資や金利引き下げ要請は断られ、なんとか借り換え融資に応じてくれただけでした。
 再建計画の説明には納得してくれても、いざ貸付の話になると、あくまでも過去数年間の数字をもとに判断します。
 ひたち硝子では、月々約3000万円を仕入れていた主要仕入先の一つに、支払いを1ヵ月延ばしてほしいと交渉に伺いました。1ヵ月猶予してもらえれば、金利がかからない金が、そのまま運転資金になります。
 結局、販路の維持を重要視していただいたようで、小口仕入先が支払いサイトの短縮や現金払いを要求してくるなか、応じてもらえました。
 
05年8月期に2億5000万円の不良債権を特別損失として計上し、計3億円の赤字を出しました。膿は一気に出したほうがいいと判断したからです。金融機関は巨額の赤字決算を懸念しましたが、キャッシュフロー戦略を細かく説明し、理解を得ました。
 資金を流入させるキャッシュ・インフローでは、出(いずる)を絞ることが最重要です。人件費に代表される固定費のほか、在庫、売掛債権などの削減、資金回収サイトの改善、不要な土地の売却など、あらゆる部分に手を着けて黒字転換を果たしました。
 不良債権を処理したため、売上が取り消しになり、仮払いしていた消費税が還付されました。売上は2億円ほど減りましたが、消費税が1000万円戻ってきました。これも黒字転換の上で大きかった。


■ 赤字でも夢があれば新卒は採れる

――― 資金が流出するキャッシュ・アウトフロー戦略も必要だ。新規採用や研究開発費など将来に向けての投資は、どんなに経営が厳しいときでも企業の発展のために必要だからだ。

 信州硝子ではキャッシュ・アウトフロー戦略として大学新卒者の採用と、市内2ヵ所に分散していた倉庫を物流加工センター内に一元化する物流効率化を中心に行いました。
 新卒採用はひたち硝子時代も毎年行っていたもので、企業の存続、発展には欠かせません。
 会社を変えようというとき、一方で人員整理をしながら、新しい血を入れる、若い人を採用することが必要です。
 会社が変わるということは、社員も変わるということ。本音をいえば、既存社員を教育して変えようとしても、そう変われるものではありません。それより、新しい若い人を入れたほうが会社はよほど変われます。中途採用も結構ですが、新卒採用を毎年定期的に行うことが重要です。
 茨城でも長野でも、私が新卒社員の定期採用をすると言うと、「赤字会社に新卒など来てくれるわけがない」とみな腰が引けていました。ダメでもともとと、地元出身者で東京などの大学に通っているUターン就職希望者を狙って、リクルートなどが主催する就職説明会に出展しました。これだと出展コストも数十万円程度と安くすみます。毎年三十数名が説明会のあと、会社訪問に来ました。
 学生獲得のコツは、経営者が学生に「夢」を語れるかどうかと、会社訪問に来た学生に、社員が挨拶などちゃんとできること。
 採用者数は1人だけだとすぐに辞めてしまう確率が高いので、毎年3人くらい複数でとります。
 再建とは、長いトンネルから抜け出るとともに、次の成長路線の入口に立たせることができるかどうかです。将来たのしみな新人が入ると、みなが一緒になって頑張るようになります。
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ドキュメント『再生への道』の立ち読み(3) 

2017-01-17 19:48:43 | 出版


「あなたは何のために会社を経営しているのか?」。なんとなくなら、どんな「社長」でも経営できる。「管理者」の延長線上に「経営者」がいる訳ではありません。
企業再建という、これまでの経営の常識が通じないなかでは、「目的」と「使命」といった支えを強く持つ「経営者」でなければ、会社は存在すらおぼつかなくなる。

■目的感、使命感はどうやって持つのか

─── 会社再建を成功させるには、絶対に再建を成功させるのだという強い決意が必要だ。それは、何のために再建するのか、何のためにこの仕事をしているのかという目的感、使命感に裏づけられたものでなければならない。

 当たり前のことですが、再建にかぎらず、どんな仕事をするときも、目的感、使命感をしっかり持っていないと、最後まで頑張り抜くパワーは生まれません。
 しかし二代目社長や、親会社から天下りで来た出向社長などのなかには、これを持っていない人が少なからずいます。
 創業者の息子だからという理由で、苦労もなく、御輿の上に乗せてもらった二代目社長。会社からの突然の人事異動に驚き、出向を左遷という意識で受け止め、やがて帰る親会社があると腰掛け意識の出向社長。経営者は、管理者の延長線上にいるわけではありません。
 こういう社長は概して、回収が甘い、仕入先にいい顔をする、お客さまには冷たい、部下にきつく当たるという傾向があります。
 企業の多くをダメにしているのは、こういう二代目社長・出向社長です。
 社長には誰でもなれます。が、誰もが経営者になれるわけではないのです。
 では、目的感、使命感はどうやって持つのか、どうやったら持てるのか。
 実は動機づけするための理由は何でもいいのです。「ご先祖様の顔に泥を塗っては申し訳ない」でもいいですし、「社会のために」「家族のために」とか、「街の経済を支えなければ」という思いでもいい。
 ただ、自分が儲けるために頑張ろうといったものは駄目です。
 自分のためだと、うまく行かないことが何度か続くと、「まあ、いいか」と簡単に諦めてしまいやすいからです。自分以外のもののために一所懸命頑張ろうと思えるものを見つけられれば、それが動機になります。
 ある駅伝選手が「いちばんしんどいときに何を考えた?」と質問されたとき、こんなことを言っていました。
「ゴールまであと何キロだから頑張るのではない。走るのをやめると、一緒に苦しい練習をしてきたチームの仲間に迷惑をかけるから、走るのだ」
 自分一人のことしか考えていないときには、100%の力しか出せない。でも他人の思いを背負うと100%以上の力が出せます。

■社長は自ら置かれた立場を十分認識すること。

ーーー会社再建とは、会社を替えること。変革には反撃、思いもしないところからの攻撃、誹謗中傷がつきものだ。どんな問題、アクシデントがあっても、必要とあれば裸にもなれる、馬鹿にもなれる心の強さが必要だ。

 私をCEO・代表取締役副社長として招いた信州硝子の四代目社長は、創業者の末子でした。なぜ経営再建を外部の人材に託したのか、その思いを直接聞いたことはありません。が、何かの折に、「私には企業経営の知識、経験がありませんから」と話されたことを記憶しています。自分のことを率直に見つめ、それを恥ずかしがらずに正直に話ができる方なんだと思ったことを覚えています。
 新たに就任した社長は創業者の末子とはいえ、4人姉弟の中の唯一の男子でした。そのせいか、長野市内で85年も続いた名門企業を潰してはならない、従業員を路頭に迷わせてはならないという意識を強烈に持っていたようです。
 プライドばかり高い御曹司だと、会社が倒産の危機に瀕していようと、「俺が、俺が」となり、結果、潰してしまうところです。
 が、社長はそうした性格とは正反対の方でした。自分の置かれた立場を十分に認識し、恥を忍んで、裸になって、主力の仕入メーカーに、経営のわかる人材を紹介してほしいと頭を下げられた。
 信州硝子を絶対に潰さないという目的感、使命感があったからこそできたことでしょう。

■孟子の『五知』が教えてくれる、目的感、使命感

─── 私にとって、信州硝子を再建させるという使命感を持つ動機づけとなったのは、大学を出て就職してから約40年間世話になった、親会社に対する「恩返し」の気持ちだった。

 私が信州硝子の再建請負人として親会社から声をかけていただいたのは、ちょうど株式会社ひたち硝子の社長を退き、現役からリタイアするつもりでいたときでした。サラリーマン生活の総仕上げの場を提供していただいたわけであり、これは恩返ししなければと奮い立ちました。
 長野県市場で大きな市場シェアーを持っている老舗問屋が経営危機に直面しており、そこが再生(リ・バース=生まれ変わる)することは、メーカーにとってもうれしいことです。
 私はサラリーマン時代、営業マンとして全国の販売店や問屋を見て歩いていましたので、46歳で本社を離れて、はじめて販売子会社に出向したときも、左遷されたとは思いもしませんでした。それぞれに問題を抱える子会社、関連会社を立て直すことに強い目的感、使命感を持って赴任していきました。
 長野に赴く際、経営者が集まる倫理法人会という勉強会で学んだ孟子の『五知』の教えを心のなかで反芻しました。
 経営者など上に立つ者は「命を知る、難を知る、時を知る、足るを知る、退を知る」の5つを知らなければならないという教えです。

 五知の意味を簡単に説明すると──、
「命を知る」… 自分に与えられた立場、使命を深く知り、今やるべきことに力を抜かずぶつかっていく。
「難を知る」… 困難にぶつかったら冷静に対応し、目先の現象に振り回されたり、バタバタせず、軸足をぶれさせない。自分の能力以上の困難は与えられない。打つ手は無限、解決できないものはない。

「時を知る」… 一刻でも早くと考えてしまうが、相手のある仕事には、待つことも必要。事を進めるには、何ごとも最高のタイミングがある。まわりからのよいアドバイスがある。
「足るを知る」… 私利私欲を一切持たず、ひとつのことに執着しないで、現状に満足、肯定的人生を送る。
「退を知る」… 引くタイミング、状況をいかに美しく、よいものにするか。
 ───となります。

 このなかで「命を知る」とは、まさに目的感、使命感を持つということです。 私は「命を知る」を常に意識するとともに、いかによい状況にして退任の時期を迎えるかという、「退を知る」を意識して仕事をしました。



率先垂範が社員の意識と行動を変える。これは、どん底にあえぐ再建企業ほど徹しなければならない。全社員の意志の力が会社を再生させるのだ。社長はなにが起こってもぶれることのない、カリスマ的存在となることを追求したい。

■経営者のカリスマ性とは社員の不平不満を鎮める力

─── 経営者が引き続き指揮を執るにせよ、再建請負人が経営にあたるにせよ、経営再建を目指す企業の経営者はカリスマ性を持たなければならない。会社のため、社員のためと言っても、厳しい再建策は言葉だけでは受け入れられず、社員は動かない。社員に疎まれ、恨まれるだけで、改革は挫折する。

 経営者のカリスマ性というと、京セラの稲盛和夫名誉会長のような超一流経営者だけが持つものと思われるかもしれません。が、そんなことはありません。
 カリスマの語源は、ギリシア語の「神の恵み(カリス)」です。最初にカリスマを使ったのは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバー(1864~1920)。彼は人間を支配する権威の類型は3つあり、1つは伝統の権威、2つめは合法の権威、3つめはカリスマだと言った。つまりカリスマは、権威というわけです。
 権威は人を従わせる。人は権威に従う。辞書を引くとカリスマとは、自然に人々の心をつかみ、人々に影響を与える能力だと説明しています。
 経営者にとってのカリスマ的支配とは、社員の不平不満を鎮める力。要は、言うことを信用して、行動に移らせる力です。口先で「ああしろ」「こうしろ」と指示するだけでは、すぐに「何だ、言うだけか」「自分は何もやらないのか」と見透かされ、言うことを聞かずに勝手なことをし出しかねません。
 カリスマは生まれつきのものではなく、実践から学び身につけるものです。誰でもカリスマになれます。
 経営者が普段の活動の中でカリスマ性を身につけるには、次の4つの行いのうちのいくつかを実践することが近道でしょう。
 第1は「軸足が定まっている」こと。
 価値判断の基準・原則を決め、個々の現象に振り回されず、ブレないことです。
 倒産の危機に瀕した会社には、さまざまなことが起こります。クレーム、風評、取引停止、社内反乱……。
 そうした一つひとつの事柄に振り回され、経営者がここではこう言い、あそこではああ言ったなどとなっては、社内、取引先を問わず混乱し、足もとを見られ、つけ込まれます。
 決めた基準に照らして、どんなことにもブレのない、的確な反応をしなければいけません。
 会社再生という目的意識を強く持ち、軸足が定まっていれば、体面など気にならなくなります。軸足が定まっていれば、社内の対立意見を“抵抗勢力”と決めつけて排除することなく、歓迎できるでしょう。
 仮に本当の抵抗勢力だとしても、会社を何とかしたい、社員の生活を何とかしたいという気持ちが見えるなら、少なくとも意見を聞くだけは聞いたほうがいいでしょう。得てして改革スピードが速すぎて、社員が誰もついて来られないなどといったことを、こういう人が教えてくれることもあります。


■社員への責任追及だけではいつか誰もいなくなる

─── カリスマ性を身にまとう第2の方法は、「過去に解決できなかった難題を解決する」こと。難題解決といっても、さほど難しいことではない。たとえば先送りされてきた不良債権問題。焦げ付きの責任は経営者にあると考え、率先して処理にあたれば事は意外に簡単に動く。

 第2は「過去に解決できなかった難題を解決する」こと。
 問題が起こると担当者の責任を追及して懲罰を与え、問題の解決そのものは担当者任せにしたままという企業が多いと思います。
 私も、1997年にひたち硝子の社長に就いた当初はそうでした。焦げ付きを出した担当者、支店長、そして私の給料を2ヵ月間減給の懲戒処分をして、済んだ気になりました。後の処理は支店長や担当者に任せていました。不正販売をしたため、焦げ付きを発生させた社員を解雇したこともあります。
 しかし、あるとき、ふと気づきました。「こんなことをしていたら、いつか社員が誰もいなくなる」と。
 担当者の責任を追及してばかりいても問題は解決しません。焦げ付きの責任は社員ではなく経営者にあると考えて、直接、私が処理にあたることにしました。
 債権回収方法は得意先の状況に応じて細かく分けました。分割払いや手形ジャンプで回収。下請け手間代から相殺して回収。訴訟を起こし法的手続によって回収。根抵当権を設定した不動産の任意売却によって回収。連帯保証人から回収……。
 こうしてひたち硝子では、98年に20社約2億円あった不良債権を、02年には5社1500万円にまで減らすことができました。債権回収によって、銀行借入ができない状況下で、1億円以上のキャッシュフロー改善を果たしたのです。
 どの回収策を採るかは最終的にはトップが決断することです。社長でもむずかしいことを支店長や部長に責任をもってやれといっても、50~60人規模の会社ではできる人材がいません。
 先送りされている不良債権の処理は嫌で億劫な課題ですが、決定権限のある経営者自ら対峙すれば、問題は解決します。

■経営者のマイナスパワーは社員に感染する

───第3は、疲れた顔を社員に見せないこと。体調が悪いとき、風邪を引いたとき、弱気になったときも、疲れた顔、曇った表情は絶対に見せてはいけない。

「元気」は感染します。元気な人といるとウキウキしますが、暗い人といると気分が暗くなります。不景気な人がいると、こちらも不景気な気分になります。
 経営者のマイナスパワーは、社員に感染します。いつも疲れた表情、眉間にシワを浮かべた顔をしていると、社員は「うちは大丈夫だろうか」と心配になり、負のオーラがうつってしまいます。
 したがって、カリスマ性を持つ第3は、「疲れた顔を社員に見せない」こと。
 心配事があれば、人間どうしても顔に出るものです。が、企業再建に取り組む経営者であれば、絶対に表情に出してはいけない。出さない努力をすることが大事です。風邪を引いても、引いたとは言わない。熱が出ていても何気ない顔で過ごすことが大切です。
 社員に疲れた顔を見せないために、普段から心がけておくべきなのが夫婦円満でいることでしょう。家庭円満が明るいパワーの源泉です。
 第4の方法は「日々の実践」です。
 挨拶、返事、後始末、さらに清掃、時間厳守など、社員に教育していること、日々言っていることを、経営者自らが謙虚に率先垂範することです。
 経営者のほうから社員に「おはよう」と声を掛ける、ゴミを拾う。こんなことを日々実践するだけで社員は、「ただ口で言うだけでなく、行動がともなう経営者だ」と感じ、より強い連帯感が生まれます。
                    *
 カリスマ性をまとうためのこれら4つの事柄のうち、ひとつでも結構です、徹底してやってください。そうすれば社員は必ずついてきます。
 口先だけでは社員は動きません。


 退職を考え辞めたいと申し出てきた社員を慰留してはいけない。その社員は、慰留されたことで従来のやり方でかまわないと勘違いし、「一丸となって再建しよう」というまわりの戦う姿勢についていけなくなる。「企業は人なり」。ベテラン社員であっても「人罪」であれば、そのまま居座らせてはいけないのだ。

■改革を遅らせるガンを放置してはならない

─── 会社再建に向け、給与カットなどの厳しい策を打ち出すと、「辞めたい」と言ってくる社員が必ず出てくる。そうした社員には、ベテラン社員が含まれるケースが少なくない。だが、退職希望が出されたら、誰であれ喜んで受けるべきだ。

 辞めたいと申し出てきた社員を慰留すると、本人が意図していなくても、いずれその社員は改革を妨害する勢力になり、改革を遅らせるガンになります。会社再建は、病気の原因をすべて取り除くことから始まるのです。
 仮に慰留に成功したとすると、その社員は「今まで通りやっていればいいんだな」と思います。それでなくても自分は優秀だという自負がありますから、仕事のやり方、信念を変えようとしないものです。
 会社が生まれ変わろうとするなか、今まで通りのペースで仕事をし、既得権を守ろうとすれば、当然、周囲とぶつかります。
 しかも、意識改革した他の社員に比べて、見劣りする成果しか挙げられなくなります。すると言い訳や、不平不満が多くなる。
 そして他の社員に、やる気をそぐようなグチを言うようになります。腐ったミカンが一つでもあると、周囲のミカンも腐っていきます。よい組織はできません。
 ひたち硝子時代、希望退職を募ったところ、古参の営業担当者が手を挙げました。
 私は、得意先を熟知している彼がいなくなっては再建などままならないと思い、慰留しました。が、周囲がぬるま湯から脱して戦闘集団に変わったのに、彼だけがマイペースのまま。注意しても一向に変わらない。それどころか同僚や部下に、「どうせこんな会社……」といった誹謗まじりのグチを言い出す始末でした。
 そこで今度はこちらから辞めさせようとしたのですが、彼も会社が再建軌道に乗ったことがわかっているだけに、なかなか辞めると言わず苦労しました。
 辞めると言ってきたときに、辞めさせるべきだったと反省しました。


■人罪を人材に入れ替え、つねに新陳代謝をはかる

─── ダーウィンの『進化論』の中に次の一文がある。「強いものが生き残るのではない。優れたものが生き残るのではない。環境に適応したものだけが生き残るのである」。これは生物の進化だけでなく、会社にも個人にも言えることだ。

 会社の空気、企業風土が変わると、会社に馴染めなくなる人が出てきます。
 業績不振の会社には、ぬるま湯的でたるんだ雰囲気が漂い、個人プレーが横行し、物事が惰性で動く傾向があります。それが業績がよくなり成長軌道に乗ると、ピリッとした心地よい緊張感が漂うようになります。会社が変わると、知識力や技術力が多少あっても、空気の変化に適応しようという意識がないと、淘汰されていきます。
 よく人材は「人財」20%、「人在」60%、「人罪」20%で分布すると言います。が、はじめから人罪の人はいません。しだいにお局様化し、老害をまき散らし、人罪になっていくのです。
 彼らにはいくつかの特徴があります。
 まず、今までのやり方が一番いいと思い込み、自分のやり方に固執して他人の意見を聞かず、やり方を改善、工夫しようとしない。
 仕事が増えて自分や部下のキャパシティを超えるのが不安になり、新しいことにチャレンジしようとしないのもお局様化の特徴の一つです。
 また、仕事を抱え込んで他人に渡さない。仕事は完璧にこなし、責任感も強いのですが、部下を指導したり、部下に任せることが苦手で、その結果、仕事を山のように抱え込み、肝心のことがおろそかになる。
 企業は人なり、です。人罪はどんどん新しい人材に入れ替えなければいけません。再建中の会社は、人罪が定年退職していくのを待つ時間的ゆとりがありませんから、給与体系を実力主義、成果主義に改めるほか、苦しくとも新人の採用を続け、新陳代謝をはかる必要があります。
 森林の再生には普通、何百年という歳月を要します。が、横浜国立大学の宮脇昭名誉教授が提唱する森づくりは、わずか20年で森をよみがえらせると言います。
 その要諦は次の3点です。
・その土地にあった樹を植えること(適材適所)
・主木を取り違えないこと(正しいリーダーを据える)
・混植して、混ぜる、混ぜる、混ぜる(競り合いながら成長させる)
 組織のあり方に実によく似ています。


■いまこそ、内部改革の好機、危機感を失うな

───「城は内から崩れる」の言葉があるように、企業の業績不振の原因もすべて内にある。携わる社員が腐っているか、光っているかの差が大きい。

 不況時は、内部改革の好機です。
 好況時は経営者も社員もつい有頂天になり、危機感を失い、現状にあぐらをかき、気づいたら破綻の道へということが多々あります。逆に言えば、経営者は景気がよい時期ほど気を引き締めることが必要ということにもなります。
 給与制度、評価制度、人事組織の見直しなどを行うのに、不況時ほど適した時期はありません。
 辞めたいと手を挙げる社員はどんどん辞めてもらって結構ですが、不況時は他社に転職することがむずかしい時期でもあります。ショック療法を実行しても、多くの社員が必死になってついてきてくれます。それによって「人罪」も意識改革して「人在」「人財」へと変わっていき、一人ひとりが光り出します。
まさに、いまこそが内部改革の好機です。
               *
 9回にわたって会社再建の要諦を述べさせていただきましたが、改革は当然ながら経営者にも社員にも、痛みを伴うものです。しかし私は、経営の原点は、社員にとって楽しい会社であることだと考えています。
 どんなに経営が苦しいときでも、厳しい再建策を実施しているときでも、社員がうきうきして出社してくる会社を目指していただきたい。それには、近い将来のビジョンを明確に打ち出し、その可能性を確信的に明快に語り続け、社員に希望と安心を与えることです。そう信じています。
                                  (連載完)

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常陸大田「金砂の湯」

2017-01-16 15:29:41 | 温泉紹介






金砂の湯
地下50mから汲み上げる西金砂天然水の温泉。地下水を汲み上げて温めているので厳密には温泉ではない。大自然が作り上げた天然水は、肌に良いとのこと。露天のお湯が一番温度が高く、すべすべ感も高いような気がした。そば処「金砂庵」は、挽き立て、打ちたて、ゆでたての『3たて』にこだわっている。
住所 〒313-0101茨城県常陸太田市上宮河内町336 電話0294-76-9919
料金 600円(木曜定休)
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