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阿久津 久先生(元 茨城県立歴史館学芸部長)
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常陸国風土記
今から1300年前、奈良時代(律令国家)に編纂された『常陸国風土記』(ひたちのくにふどき)は、大和朝廷という国家統一がなされ、中央集権的国家体制が確立されたころ、地方の実情を知る目的で、各地の国司に命じて報告書を作らせたもの。
□ 国司とは?
国司は、中央から天皇の御言持(ミコトモチ)として、交代で赴任。郡司を指揮して国 内を支配した。
□ 現在も残っている『風土記』は?
豊後(大分県)、肥前(佐賀県・長崎の一部)、播磨(兵庫県)、出雲(島根県)、 常陸(茨城県)の五か国だけである。
常陸国風土記は、江戸時代に写本されたものが、水戸家に大切に保存されていたため 現在に残った。
□ 常陸風土記の作家は?
藤原宇合(ふじわら うまかい)が養老3(719)年7月13日、常陸国司となった。この時期に風土記が編纂されている。恐らく、前任者の期間に調査、蒐集された資料に基づいて、彼と万葉歌人の高橋虫麻呂との二人で書き上げたものと言われている。
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信太郡の条に霞ヶ浦周辺の藻塩つくりの記述がある。
□ 倭武(やまとたける)の天皇が海辺を巡幸したとき乗浜の里には沢山の海苔が干してあった。
□ 乗浜の里の東に「浮島の村」があり、四方を海に囲まれ、戸数15戸、田は、7,8町ばかり、住民たちは塩を焼いて生計をたてている。ここには、9つの社があり、人々は言行ともに謹んでいる。
□ 藻塩について
藻塩は、古事記や日本書紀に記載されている古代の製法。
海から海藻をとって天日で乾かし、何度も何度も海水をくみ上げては掛けて塩分の濃度を高めて火で焼く作業を「藻塩を焼く」。
焼いた灰を回収して、さらに海水で溶解させて上澄み液を取った後、土器で焼いて濃縮し、ようやく塩がとれる。
《万葉集に見る藻塩焼き》
須磨人の海辺(うみへ)常去らず、焼く塩の 辛き恋をも我(あ)れはするかも
(訳: 須磨の海女は一日中海辺で塩を焼いています。その塩のように辛くも切ない恋を私はしたものです。)
□縄文時代の製塩が発達したのは、茨城県・霞ヶ浦西岸で、製塩に使用された多量の土器が発見されている。製塩時は、熱効率を良くするために薄く造られている。
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『親鸞伝絵』に描かれている常陸国の鎌倉時代の塩づくりの様子
□ 藻塩は製造法が複雑なため、神功皇后による三韓出兵の後、大陸から伝わった揚浜式塩田砲が普及してなくなった。さらにその後、豊臣秀吉の朝鮮出兵後、入浜式塩田法に進化した。
しかし、揚げ浜式、入り浜式塩田法による塩は「にがり」成分を多く含み、人々の寿命が、内臓を痛めることにより50歳ぐらいになったとされる。
藻塩は、適度な「にがり」を含み、海藻のミナラル、海水酵素、活性炭を含んだ毒消し作用のなるアルカリ食品であった。
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沢田遺跡『揚浜式塩田』
人力で海水をくみ上げて、塩田にまき、砂をかきならして天日で乾燥させる。すると、砂に塩分が付着し、これらの砂をかき集め、再び海水をかけて砂についた塩分を溶かしだして濃い塩水を作り、これを火に煮詰めて塩を作る。