ケイの読書日記

個人が書く書評

小泉八雲 「鏡の乙女」

2020-12-18 15:04:58 | 小泉八雲
 若くて美しい女性が登場する、怪談らしい怪談。ちょっと泉鏡花みたいな雰囲気がある。

 室町時代、南伊勢の歴史ある神社の社殿が大破した。でも、その土地の大名は、続く戦乱のため修復する財力が無いので、神社の宮司が、将軍や大大名に援助してもらおうと京に出向く。
 その時、しばらく滞在した屋敷に古井戸があった。人の噂によると、以前に住んでいた人が理由もなく幾人もその井戸に身を投げて死んでいるという。不思議なことに、この古井戸は、ひどい日照りなって京中の川が涸れてしまっても、水がこんこんと湧き出るのだ。そのため近所の人は、この古井戸の水をもらいにやって来た。
 ある日、水をもらいにやってきた一人の男が、井戸の中で水死体となって発見される。宮司は、以前も何度も入水自殺があった事を知っているので、不審に思い、その古井戸の水の面を見ていると…1人の若く美しい女の姿が現れた。そして…

 この話で一番気味悪く感じたのは、その何人もの人間が入水自殺した井戸水を何も思わず、みな飲んでいるってこと。そうだよね。川で溺れ死んだ子供がいたからと言って、その川の水を使うのを止めるだろうか? やめないよ。生活必需品だから。
 危険って至る所にあるのだ。特にこの応仁の乱以降の乱れに乱れた世の中では。

 この話の終わりに、宮司は、足利第八代将軍義政から、大破した社殿の修繕費として莫大な金銭と、たくさんの引き出物を賜ったと書いてある。
 しかし、この足利義政将軍に、そんな財力があったんだろうか? 将軍と言っても名ばかりで、お金は無かったんじゃないの?


PS. カミュの「ペスト」を半分くらいまで読んだ。熱病がペストだと知れ、オランの町は封鎖される。中国の武漢市を思い出したよ。ただ武漢では家から出るなという締め付けが厳しかったようだが、オランの町では、封鎖された町の中では自由に行動できた。ただ、どうしても外に出たい人が一定数いて、彼らはお金を遣っていろいろ画策している。ちょうど、そのあたりを読んでいる。

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