ケイの読書日記

個人が書く書評

押川剛 「子供を殺してくださいという親たち」 新潮文庫

2021-03-05 16:45:08 | その他
 何とも物騒なタイトルですね。でも、こういう殺伐とした事態になってしまうことも…あるんだろうと思う。

 押川さんは、精神障碍者移送サービスをしている民間業者。強制的に拘束して連れて行くんではなくて、対話し説得して患者を病院に連れて行く。本当にそんなに上手くいくんだろうか、とも思う。色んな人がいるものね。

 この本には、たくさんの事例が載っているが、ほとんどの家は親が社会的地位もあり裕福。なぜだろう?と考えたが、結局、押川さんは民間業者なので、依頼すると高額なお金が必要なのだ。だからお金持ちしか頼めないんだ。
 お金が無い人はどうするんだろう? 放置して事態が一層悪化し、事件になって、本人が刑務所あるいは医療刑務所に行く事になるんだろうか? それとも、親や世話してくれる人がいなくなったら、ゴミ屋敷の中で衰弱し白骨死体となって見つかるまで、そのまま放置されるんだろうか?

 悲観的な事ばかり書いたが、楽観的になれない。そもそも、押川さんが患者を説得し医者に連れて行っても、患者さんが完治し家族もニコニコなんて事になるのは稀! あまりない。
 結局、治る人は治るし、治らない人は治らない。TVの報道番組では、専門の医療機関に相談をとかMCが言ってるけど、相談したら必ず解決!なんて事はないのだ。

 本当にどうすればいいのかな? 最近よく特集される『7040問題』『8050問題』も「子供を殺してくださいという親たち」問題の前触れなんだ。
 親は子どもに、子どもは自分自身に期待しすぎるから苦しいんだ。「最近の子どもは自己評価が低すぎる」と教育評論家の方々はおっしゃるけど、自己評価が高すぎるから、現実の自分が全くそれに達しないから、苦しいんだ。自己愛が強すぎて。

 では、どうすればいい? 「自分は決して主人公ではない」「取るに足らないちっぽけな存在だ」と自覚すること。それが中々難しいんだよね。
コメント
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