村役場の宿直春秋抄(16)
日露交渉
真弓は前夜に続き十一日も宿直している。その書き出しに「本日、米国大統領の勧告により交渉委員を任命する旨回答ありとの報を耳にす。慶すべし。賀すべし」とある。
史実によれば、日本政府が全権委員を任命すると発表したのが、前日十日のことだ。ロシア皇帝ニコライ二世も講和の提案を承諾していた。その発表を当日に知らなかったため、十日はロシアの強硬な姿勢に閉口したような書きぶりだった。
ところが、翌日の十一日にその報が大鶴村に飛び込んできたわけだ。その伝達の速さは信じがたい。
大鶴村はその情報をどのようにして入手したのだろうか。報を耳にするとあるから新聞情報ではない。そもそも新聞は郵送される。記事が載るであろうその日の朝刊が届くはずもない。むろん、ラジオもない時代だ。また、大鶴郵便局の電報電話の取り扱いは昭和に入ってからになる。早い話、大鶴村では情報の入手は遅い。だから速い伝達手段に首をかしげた。(この項続く)
日露交渉
真弓は前夜に続き十一日も宿直している。その書き出しに「本日、米国大統領の勧告により交渉委員を任命する旨回答ありとの報を耳にす。慶すべし。賀すべし」とある。
史実によれば、日本政府が全権委員を任命すると発表したのが、前日十日のことだ。ロシア皇帝ニコライ二世も講和の提案を承諾していた。その発表を当日に知らなかったため、十日はロシアの強硬な姿勢に閉口したような書きぶりだった。
ところが、翌日の十一日にその報が大鶴村に飛び込んできたわけだ。その伝達の速さは信じがたい。
大鶴村はその情報をどのようにして入手したのだろうか。報を耳にするとあるから新聞情報ではない。そもそも新聞は郵送される。記事が載るであろうその日の朝刊が届くはずもない。むろん、ラジオもない時代だ。また、大鶴郵便局の電報電話の取り扱いは昭和に入ってからになる。早い話、大鶴村では情報の入手は遅い。だから速い伝達手段に首をかしげた。(この項続く)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます