民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

中山間地のゆくえ

2006-10-31 08:42:40 | 民俗学
人口減少社会を迎え、くしの歯が欠けるように都市で地域で人間の数が減っていく。その減り方が例えば均一だとして、母体となる集団の人数が多い都市ならば、人の配置がまばらになるのだが、もともと粗い分布の中山間地では、全く人のいない空間が広がることになる。まばらに住民が点在する地域に行政サービスを行うとなると、効率の悪さといったらない。例えばゴミの収集にしても、移動時間の方が収集にかかる時間よりも長いことになる。よって、人がまばらな地域へのサービスは停止ないし軽くして、人の多い地域へ手厚くサービスをほどこすことで、人々の再集住をはかる、というのが最近の政策のコンセプトだろうか。バス路線をなくし、郵便局をなくし、過疎地・中山間地から人々を追い立てていくのが政治の役割だというなら、何もしないほうがましではないか。
 弱者は切り捨てられて仕方がないという世の中になっている。人権などという言葉は、20年も前に比べればほとんど語られなくなったし、語られたとしてもかなり限定的に使われることが暗黙の了解となった。一部の豊かな暮らしを守るために、多くの貧しい人々を切り捨てる風潮は認めることができないが、人口減少とサービスが低下せざるを得ないことは事実であり、私たちの側から新しい理念と生き方を見つけていかなくてはならないだろう。