
一昨日「ロシア・メロディア原盤のフルトヴェングラー」と題して第二次世界大戦中の巨匠フルトヴェングラーの録音についてその経緯を紹介したがその2回目はその昔「ウラニアのエロイカ」とマニアの間で話題になったLPにスポットを当てて話を進めてみたいと思う。この録音のオリジナル・テープもソ連軍によって押収され当時のソヴィエト国営レコード会社「メロディア社」のテープ保管庫に保存されていたと言う。演奏はウィーン・フィルとの録音で戦時中の1944年12月16日とも18日とも言われているが判明されてないようだ。私の所持しているメロディア盤は12月16日と表示されている。(写真、右下は米国ウラニア盤をCD化したもので当時のオリジナル・ジャケット)この録音、聴衆の咳やノイズがほとんど聴き取れないので演奏会のライヴ収録ではなくゲネプロか放送用録音とも考えられる。門外不出のはずのテープがなぜ米国のウラニア・レコードから発売されてしまったのだろうか?平たく言えば「海賊盤」にすぎないのだが発売されたのは1953年で指揮者フルトヴェングラーの存命中だった。彼はこのレコード化を不法とし米国のウラニア社を提訴したが米国国内法で合法と判断され訴えを却下されてしまった。その後、1960年代後半になり英国のユニコーン・レコードから世界中に公式に発売される運びになったが残念ながらこれもオリジナル・マスターテープからのレコード化ではなかった。音質はかなり向上したとは言えこのメロディア盤には及ばなかった。フルトヴェングラーとウィーン・フィルの「エロイカ」はこの他正規盤として1952年スタジオ録音のEMI盤がある。こちらは録音はかなり良好で演奏も優雅で上品な「エロイカ」に仕上がっている。またベルリン・フィルとの演奏では1952年12月8日、ベルリン、ティタニア・パラスト館(当時ベルリン・フィルハーモニーは空襲で崩壊され代替会場に映画館が使用されていた)のライヴ録音が仏THARAからでている。こちらは野生的で重厚なフルトヴェングラーが聴ける。
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