毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

横須賀

2008年02月01日 00時58分14秒 | 観光
 「あんなアバズレのために死ぬなんて」としかめ面のまま郷田一尉が言った。「いや、死んだんじゃない、殺されたんだ、NSAのやつらに」
 「NSAが四文字じゃねえのが不思議だ」ベントン軍曹はそう言うと目一杯ドライにしたマティーニをあおる。
 「世界で一番勇気のある行動はどうしようもないアバズレのために死ぬことだ」昔読んだルーマニア人の本を思い出してぼくは言った。「誰もほめないような死に方をするには勇気が必要だ」

 アメリカ海軍と海上自衛隊とスカジャンを着た目つきの悪い情報屋が、犬の遠ぼえがかすかに聞こえる夜中に、1階がアイリッシュバーになってるホテルの一室で死んだ友だちのために一杯やっているのだ。
 横須賀とは、きっとそういう街なのだ。
 と、ものすごい思い込みで訪れた横須賀。
 ホテルの密室でどのようなことが行われているか、それはもとよりわからないけれど、見た目ではそんな感じの街ではなかった。
 海と急坂。
 海から離れれば、そこには大倉山シャンツェのような急坂が待ちかまえている。毎日の通勤・通学は、ほぼ罰ゲームに等しいのではないかと坂を登りながら考える。
 いや、違う。
 多摩川と江戸川に挟まれた区間にいる人間は坂に関してヤワなのだ。坂の甘ちゃんなのだ。
 せいぜい100メートル程度の急坂を胸突坂などと呼称してしまう。
 ここに来い。集え。胸突坂近辺の住人よ。
 胸突坂程度の坂など、ここでは名前さえつけてもらえない、ただのそんじょそこらの無名の坂だ。
 横須賀において坂とは、崖を上り下りするための手段なのだ。坂を選ぶかロッククライミングを選ぶか、横須賀市民は常にギリギリの選択を迫られた挙げ句、坂を選んでいるのである。
 しかも、横須賀の坂はまだ成長を続けている。今でも毎年数mm隆起しているのだ。
 横須賀市民の子孫はますます厳しくなっていく坂を糧に大きく羽ばたいていく。
 目の前にそびえる崖を見ながら、ぼくは、でも、横須賀には住めないなあ、と思ってしまったよ。

 写真は横須賀三笠公園に保存されている戦艦三笠。バルチック艦隊と戦った連合艦隊の旗艦であった。
 どの国に寄港していようと、軍艦は治外法権下に置かれる。手こぎボートでも、旭日旗を掲げるなど要件を満たせば軍艦として認められる(もちろん自衛隊所属の手こぎボートじゃなきゃだめだけど)。
コメント
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