毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

立山ウォーキング(前編)

2015年09月23日 21時46分01秒 | 観光
 今回お世話になったロッジ立山連峰。外見より中はずっときれいで快適でした。



 そしてなにより温泉! 湧水や温泉に感じる魅力って、単にきれいな水や効能のあるお湯ということだけではなく、なんとなく別世界からの贈り物っぽい、何かこの世ならぬ価値を感じるところにもありませんか。ぼくは前からそう感じてるんです。見えない地下のどこからか湧いてこちらの世界に湧いてくる湧水や温泉はいわば異界からの贈与。近代社会以前において財は異界と此界との境界上に生まれてくるものと考えられていた、あの感じです。近代人になりきれてません、ぼく。

 露天風呂からのパノラマ風景。ここの温泉は地獄谷の地下からそのままひいてきているもので、混ぜ物も追い焚きもしていません。ってことは、地獄谷の地下からって、それはもはや地獄そのものなのでは。お湯が出てくる口をちらっと見ながら、おいおい、この口は地獄につながっちゃってるよ、いまこの瞬間、皮のよろいすらなく、真っ裸で地獄と対峙しちゃってるよ、おれ、などと感じて強烈な恐怖。装備一切なくデスピサロに挑む感じです。そういう湧水や温泉にちょびっと交じる恐怖がさらなる価値を高めていると思うのはぼくだけでしょうか。まあ、最高のお湯でした。


 さてロッジで一泊、温泉、夕飯、朝食を楽しんだあと、ロッジ前でモカエクスプレスで再びコーヒーを飲み、昼出発のバスに乗るまで近くをウォーキング。舐めてました。昨日は登山だったけれど、今日はウォーキングだもの、たいしたことない、と。そんなわたしを待ち受けていたのは、案外ハードなウォーキング。

 ウォーキングの道なんですが、なんか、中国の山岳地方の映像とかでこういうの見ますよ。


 地獄谷。有毒ガスのため立ち入り禁止なんですが、音をたてて吹き出すガスに見惚れます。ここを地獄だと思う人間の心情はよくわかります。草木1本生えない土地は農耕民にとって地獄の風景なんでしょう。

 謡曲「善知鳥」では、外の浜(青森県)へ旅する僧が、途中立ち寄った立山で亡霊と出会います。亡霊は出会い早々自らを亡霊だと自己紹介します。稲川淳二の話よりずっと直截でオープンです。で、この亡霊は生前は外の浜の猟師で、外の浜に行くなら家族んとこへ行って自分のために蓑笠を手向けてくれるよう言伝を頼みます。まあ、いろいろあって外の浜の家族のもとに赴き、亡霊の言うがまま蓑笠を手向けるわけなんですが、ほら、あなた、東松照明の写真などがお好きなあなた、蓑笠をつけ、暗がりからこちらを伺う一枚の写真を見たことありませんか。そうです、あれです、神の一種です。蓑笠はまさに異界から訪れるものが身にまとう装束なんです。
 え? 立山ウォーキングの話じゃなくて「善知鳥」の話なのか、ざけんなよ、タイトルと内容が違うじゃないか、とお怒りのみなさま、次回も「善知鳥」ちょっと続きます、ごめんなさい。でも、この謡曲は面白いんです。
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立山登山(後編)

2015年09月17日 19時27分19秒 | 観光
前回も申し上げましたように、この雄山頂上にはちゃんと神主さんがいらっしゃる神社があります。空腹も癒やされて精神的な余裕が生まれたぼくは、せっかくだからそこでご祈祷受けようじゃないか、と、いそいそと参ります。 



 鳥居横で500円支払ってさらに上の神社へ。十数人集まったところで神主さんがご祈祷、お祓いをしてくれます。なんだろう、ものすごい感動してるんですよ。前回、立山、青森と関係あるって言ってたじゃないですか、その二つを結ぶのが謡曲の「善知鳥」なんです。高校時代、あの謡曲に魅せられて以来、ようやく初めて立山に登ったんですよ、あの痩せっぽっちだったインドア文化系男子高校生が。あ、いや、その高校生の成れの果てが。山に登るだなんてどんな刑罰だよと思っていたあのクソ生意気な高校生が、ああ、紆余曲折経てここに来たんだなあ、と。ご祈祷、お祓い受けながらなんだかいろんなことが浮かびました。もしかしたら山というのは新たな自分に出会える場所なのかもしれません、死と再生的にも。



 神社からは黒四ダムが見えました。裕次郎です。黒部の太陽です。



 なんだか新しい自分に生まれ変わった気分で(たぶんお腹がいっぱいになったことが大きかったかも)、今度は大汝山を目指します。
 大汝山到着。道がいろいろ趣があって飽きない登山。



 手許のsuuntoもぴったり3015mを指してる。



 「春を背負って」の舞台になった大汝山休憩所。蒼井優がジャイアントタイフーンを受けて隣の山までふっとばされたところ。それにしても狂ったような映画だったが、それをわざわざ劇場で見たぼく自身もずいぶん酔狂なところがあった2014。



 などとのんびり歩いていたらずいぶんな時間。日没までにたどり着けるか心配になって次の富士ノ折立では写真も撮らずに一気に通過。
 楽しい尾根歩きも急ぎつつ大走りの分岐を目指します。



 分岐からあとは下り。ところが下りが厳しい。だいたい下りが辛い。地味に下半身の筋肉をむしばんでいきます。翌日階段下るのにガニ股を強いるあの筋肉痛です。



 そして無事下山、称名川上流の橋を渡ります。水は透明で冷たく口に含んでみるとさらさらと喉を越していきます。



 色とりどりのテントがきれいな雷鳥沢キャンプ場。その横を通って今晩のお宿ロッジ立山連峰へ。どうもおつかれさまでした。


 そんなわけで次回、登山の翌日の立山ウォーキング大作戦をどうぞよろしく。
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立山登山(前編)

2015年09月14日 11時12分14秒 | 観光
 富山県の立山と青森。一見なんの関係もなさそうな2つの場所が、今年の夏休み大人チャレンジの舞台(なんだそりゃ)であります。まあ、もちろん関係のないことはないわけなんだけれども、今回はとりあえず山登ってきました的な。写真多め的な。
 立山というのは、雄山、大汝山、富士ノ折立の3つ合わせた総称で、その代表みたいな感じが雄山。頂上にはちゃんと神主さんのいる神社もあります(でも、1番標高が高いのは大汝山3015m)。
 さて、竹橋の毎日新聞社から夜行バスに乗り、朝、立山のふもとにたどり着きます。そこから立山有料道路を走って室堂へ。距離にして14.4kmの有料道路の通行料金はバス51,820円也。なかなかパンチのきいたお値段です。
 室堂到着。雷鳥と雷鳥コスのキティちゃんがお出迎え。夏毛のキティちゃんは夏の光が眩しいのかサングラス着用。



 玉殿の湧水で水を補充して登山開始すると、まもなく雪渓が登場。立山は日本でも珍しい永久凍土となんと氷河が存在してる場所(こんな風に「みなさん知ってました?」みたいな書き方してるけど、ぼくが知ったのは翌日の立山自然保護センターで、この雪渓を横切ってるときにはノー知識。悲しき無知のまま登山は続きます)。



 祓堂。槍ヶ岳と並び北アルプスを代表する山であり百名山として知られる立山ですが、そうした登山的興味と同時に、日本三大霊山としての宗教的側面も見逃すことはできません。ここでそれに触れると大変なのでそれは日を改めて、青森と一緒に。この祓堂を堺に下界を離れ聖なる領域へ足を踏み入れることになります。かつてはここで禊を行ってから登山したとのこと、寒いですよ、それ。



 なにげに置かれている石仏からもこの地が特別な地であることが伝わってきます。



 まだまだ頂上にたどり着く気配のないこのあたりの登りで空腹が容赦なく襲ってきます。自転車であれほど懲りているにも関わらず、またやってしまったハンガーノック。室堂駅で白えびのかき揚げ蕎麦を食べてこなかったことを後悔するとともに、もう心が蕎麦のことだけでいっぱい。霊山で心の餓鬼と化す精神ステージの低さがわたしです。



 ようやく雄山到着。冷たい強風が吹き付ける中、なかなか火を使う場所を探すのも大変。そこで頂上から一段下がったところで壁を風よけにしてこの日のランチ。



 カップ麺を食べるためにお湯を沸かすのだけれど、今回は水の段階からレトルト食品を袋ごと投入。お湯が湧き、カップラーメンができる3分間をつなぐ天空のブリ大根。これがなかったら平常心で3分待つことができたであろうか。否。断じて否。ありがとう、ブリ大根。ありがとう、おれのトンチ。



 標高3000m以上で飲む味はどうだろうと持参したモカ・エクスプレスで食後のコーヒー。というか、ここまでそれ担いでくるその余裕と実際の飢餓状況との落差がありすぎるだろう、我ながら。


 さて、そんなこんなで飢えもようやく収まってからあたりを見渡す余裕もできたところで、次回立山後編をどうぞよろしく。
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