今日の観光は、築地。
マーケット君によると「巨大都市東京の台所として、市場は24時間フルに活動しているんだよ」とのこと。マーケット君って誰よ? って方はクリックして下さい。
日比谷線「築地」で降りるとまず目にはいるのは築地本願寺。
日本は多神教だと言う。八百万の神々と仏教とが複雑に絡み合い、混じり合った信仰をもっていた、と。だから一神教のように宗教が先鋭化することがなかった。イスラムによる聖戦やキリスト教による十字軍のようなことはなかった、と。
でも、日本で唯一そのように先鋭化した宗教を持つ時代があった、と思う。それが浄土真宗、他宗の人間から言うと一向宗である。イスラムの武闘派がキリスト教の残虐非道な十字軍によって先鋭化するのと同時に、浄土真宗も織田信長というきわめてまれな暴力装置によって先鋭化した(イスラムがいまだに武力について「熱い」国であるのは、キリスト教側から受けた苦しみの記憶によるものも多いと思っている)。
まだ十代の頃、ずいぶん親鸞聖人に惹かれたものである。
さてさて、築地本願寺を左に見て、晴海通りを渡るとそこは築地場外市場。
交差点を左右に曲がれば、銀座の広い通りなのだが、信号一つ直進しただけであたりはこんな感じに。
「お母さん、お母さん、暮れの買い物、二ヶ月間違ってるよ」と声をかけたくなるくらいの混雑。これで平日の十時半。プラッターやスクーターが縦横無尽に走り回る。ああ、ここは日本じゃない。ホーチミンだ。ぼくは間違ってビンタン市場に迷い込んでしまったんだ、と、しらふで幻覚を見られるナイスな場所。
これが場外ではなく、卸売市場に足を運ぶともう、自分の居場所がない。いたたまれない状況。どっからスクーターが飛び出てくるか、わからない。人混みでにぎわう狭い路地をプラッターが疾走してくる。
この路地を突っ走ってくるんですよ。この狭い路地のセンターを縫って走ってくるんですよ。どうすればいいんですか? 教えておじいさんですよ。
慣れてくればどうってことないのかもしれないが、あちこちで鳴るクラクションもイヤが応にもヴィエトナム感をかき立ててくれて、私の中の何かがここにいることを拒否し始める。
そしてようやくたどり着いたお店、築地「高はし」。
100円寿司などいろいろある中、このような店構えなのに決して安くはないお店。でも、2000円くらいで料亭と同じ料理が食べられるんだから、お得と言ったらかなりお得。この時期はあんこうの煮付けがおいしい。もちろん他に刺身もいろんなものの焼き物もあるし、評判も高い。
300円でご飯とおみそ汁と一鉢つけてもらう。
さてさて、やってきた。ご飯大盛りじゃん(女のお客さんだと、「少なくもっておきましたので、お代わりして下さいね」などと言ってくれる)。
ああ、おいしい。しあわせ。
2300円でこの満足なら十分である。横で一人食べていた人が「ごちそうさん!」と言う。常連さんらしい。「いつもありがとうございます。1万300円です」
え?
一人で酒も飲まずに、ランチで………。
ほんと、ここに来て、ここでおいしい物を食べて喜んでるんだなあ。そんなお店でした。
さ、高はしでおなかも一杯、ちょっと築地を散歩してみましょう。
つまくらい自分んとこでやれよ、と思わず突っ込み。玉子焼きも自分んとこで作んない寿司屋さんもあるってえし。玉子焼きも、寿司屋さんとソバ屋さんとでは微妙に異なっていて面白い(ソバ屋さんの中でも違うし。もともとの江戸風は固めで、甘みの強いもの。固くないとシャリに乗らないし。で、シャリに乗せる必要のないソバ屋さんが、東京風だけじゃなく様々なヴァリエーションを採用しはじめたのだと思う)。
しかしそれにしても、大根のツマ1キロって、どれくらいのかさなんだろう? のれんのところの「美人妻」もナイス。
吉野屋創業店。牛丼あります(ただし和牛なので、値段は違うみたい)。
朝5時から午後1時まで、と築地っぽい営業時間。
吉野屋に限らず、なぜか築地は牛丼激戦区らしい。なんとさきほどの「高はし」でも牛丼が一応メニューにあるらしい(でも、高はしで魚食べなきゃどこで食べるんだ、ですよ)。
ビルから太いダクトが出ていて、操作すると氷がものすごい勢いで出てきます。築地ならではだ、と感心。
昨日のニューオータニといい、日本にいるのに、外国に旅行に出かけたような、そんなお得な東京小さな旅でありました。