毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

北風とベイドラゴンに敗れたり

2007年11月24日 10時54分21秒 | 観光
 チェーンを替えて迎えた週末。もう、こりゃどっか行くしかないでしょ。
 外に出てあまりの寒さに心が萎える………。
 寒すぎる。
 走り出してあまりの北風に心が折れる………。
 気付くといかりや長介と化して、「だめだこりゃ」と呟いてる。
 そんな一の酉の日、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 荒川へ向かう道すがら、寒くてどうしようもないので100円SHOPに飛び入り、フリースの手袋を買う。そのときつけていた自転車用の手袋は掌の部分にクッションがあって楽なんだけれど、指先が出るタイプのもの。寒くてどうにもならなかった。
 荒川に着いて思案に暮れる。これからどうしよう。今まで荒川を北上していろんなところに行っていたのに、この北風じゃ北上はきついのである。しかし南下は葛西までしかないが、北上はいろんな可能性がある。川越(上江橋)までの40kmコース、熊谷までの80kmコース、その他、入間川サイクリングロードへ入って秩父へ抜けたり、妻沼から利根川を使えば千葉の銚子、群馬の水上までアクセスできるのだ。葛西からも江戸川へアクセスできるが、道はそこから北上しかないので意味がないのである。江戸川を北上できるなら、荒川で悩んでいない。
 冬は輪行で山登りかな。たとえば高崎まで電車に乗せて行って、碓氷峠登り降りして帰って来るような、そんな感じがいいのかもしれない(道が凍結してるって)。
 荒川まで来た今日はとりあえず南下してしまおう。


 強風に背中を押され、あっという間に葛西臨海公園着。
 向こう側に広がる夢の国という名の巨大ビジネス。横にまた一つ大きな建物を建てている。すごい。
 ここで休憩がてら豚まんを食べる。ベイドラゴンという屋台。1つ200円。
 寒いんだか暑いんだかわからない。
 体の中から熱は出てくるのだけれど、受ける風があまりにも冷たくて、耳と鼻は「旦那、寒いっすよ、なんとかして下せえよお」って訴えてるし、脚は「こう汗かいちまっちゃしょうがねえな」などと汗ばんでるし。ぼくに訴えずに、きみたち同士で話し合ってくれ、と思う。
 これから江戸川を北上する心は最初から折れているし、検見川まで行って印旛沼まで北上する気も失せた。これで帰ろう。北上そのものがすでに却下されているのだ。あれほど、楽しかった北上なのに。すまん、北上。でも、ぼくたちのあの夏の輝いた日々はきっと永遠だよ。さようなら、いや、また春になったら会おう。それまで、元気で、北上よ。
 しかし、鶏程度の頭脳があれば、荒川を南下してきたのだから、家に帰るのに北上しなくてはならないことは自明である。そう、また北上するのだ、これから。
 あ、さっき劇的な別れ方をしたのに、なんか照れくさいな。閉まった電車のドア越しに、泣きながら手を振って、投げキスまでして別れを準備していたのに、プシュウっとドアが開いちゃったときみたいな感じである(やったこたあないが)。
 途中、巨大なジャスコがあったので、昼食に寄る。わざわざ「巨大な」をつけなくたって、ジャスコはぼくの知る限りたいてい巨大である。そしてその中で何か食べることができる。なか卯を見つける。寒いのでつゆものが食べたい。注文したのは牛丼大盛り。体がそのときそのときに欲するものがぼくにはよくわからないのだ、きっと。唐辛子と紅ショウガをたっぷりかけて食べる。
 ジャスコの駐車場に臨海公園で食べた豚まんのベイドラゴンの屋台を見つける。1つ150円。
 勝ち負けで言うとなんか負けたような気がする。
 今日の走行距離は55km。週末にしては少なすぎる………。ベイドラゴンに1敗、冷たい北風に1敗。今日はなんだか2連敗だ。
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今月のお買い物

2007年11月23日 07時36分35秒 | らくがき

 左からチェーンカッター、チェーン、コネクティングピン。
 自転車買ってから6500km。こないだサイクルモードで自転車を試乗してみて、自分の自転車がいかにチェーンが伸びちゃってるか実感した。
 そこでチェーン交換。



 チェーンカッターという名前だけれど、チェーンのピンを抜いたり入れたりするもの。
 チェーンを挟んでピンを押し出してはずします。



 コマ数を合わせて新しいチェーンを巻いて、チェーンカッターでピンを入れてつなぎます。はみ出たコネクティングピンをフライヤーなどでバチンと折って出来上がり。チェーンには向きがあるので、それだけ要注意。
 所要時間5分。
 足取りが軽くなった。
 次はブレーキをなんとかしないとな。
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ああ爆弾

2007年11月21日 14時58分37秒 | 映画
 快作、怪作。
 とにかく不思議な映画。得も言われぬ魅力か魔力か引きつけられる人にはたまらないが、そうじゃない人には思いつきを並べた悪ふざけのような映画だと思う。
 3年ぶりに出所した親分(伊藤雄之助)。
 ところが愛人は奪われ、組は乗っ取られ、妻(越路吹雪)はナンミョーに走ってる。
 刑務所で知り合った爆弾マニア(砂塚秀夫)に爆弾を作ってもらい、乗っ取った男(中谷一郎)に復讐する。
 まあ、いわば普通のストーリーなのだが、そんなものはたいしたことではない。

 刑務所の中、明日出所だというところから狂言の所作で始まる。刑法120条を謡い、舞う。なんだこりゃ。ウエストサイド物語が公開され、日本でもミュージカルがブームになったらしいが、岡本喜八のミュージカルは一筋縄ではいかない。
 伊藤雄之助はもともと歌舞伎の出身なので、所作は見事。細かなところで体を使ったギャグが笑える(妻のナンミョーに合わせて、くいっくいっと布団から起きあがるところなど)。ゴリゴリのあくの強さが好き嫌いを分けるだろう。
 謡で始まった映画はやがてジャズやチャールストンまで加わり、にぎやかに、そしてほぼ唐突に「閉店しようとしたら10円合わなくて困ってしまった銀行レビュー」が幕を開ける。
 爆弾をしかけ終えると、「安宅」の謡が。勧進帳も安宅も、これ好きなんだよなあ。

「笈をおっとり肩にうちかけ、虎の尾を踏み、毒蛇の口をのがれたる心地して、陸奥の国へぞくだりける」

 でもしかけた爆弾は回り回って自分の家に持ち込まれる。なかなかうまくいかないのだ。
 そして2発目の爆弾も失敗。
 終わってみたらなんのことはない。全部吹き飛んじゃった大団円。
 なんなのこれは、この映画は。

 個性派俳優が揃って真面目に馬鹿をやってる。砂塚秀夫なんて、「かーにかに」ってかにかまぼこの印象しかなかったし、中谷一郎もぼくの中では弥七だ。しかし、そういう彼らの演技がまたいいのだ、もちろん伊藤雄之助は出色。
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四千万歩の男

2007年11月20日 09時57分08秒 | 読書


  井上ひさし著 「四千万歩の男」(1)~(5)     講談社文庫

 50歳で隠居。その後江戸に出て測量・天文を学び、56歳で測量の旅に出た伊能忠敬。現代でもその年代で新たにものを学び、徒歩で全国を歩くのは大変なことだと思う。今よりずっと平均寿命の低く、道だってよくない江戸時代に成し遂げた偉業。凄いことだ。
 その伊能忠敬を主人公に据え、虚実皮膜の間(いや、相当にフィクションなのだが)の大冒険を描いたのがこの本である。
 主人公のポジションが実に井上ひさしに合っていると思う。幕府の権威をかさにきた権力者などではなく、商人出身でありながら公儀方という中間のポジションであるため、伊能忠敬を通して、庶民と武士、両方の世界にコミットできるのだ。
 天文観測や測量という本来は自然科学の旅なのに、行く先々で人事に巻き込まれる。それがときに水戸黄門漫遊記風であったり、ときに冒険活劇だったり。
 十返舎一九、鶴屋南北、二宮金次郎など実在の人物も絡んで、厚手の本5冊の中は物語にあふれている。
 表現の妙やくどいほどの並列など、井上ひさし特有のレトリックも面白い。
 たとえば
 
「世間からは、馬鹿といわれ、愚者と軽く見られ、阿呆とうとんじられ、でくの坊と鼻先でせせら笑われ、唐変木と指をさされ、狂人よばわりされ、奇人とそしられ、変人と名札を貼られながらも、ひとつひとつ小さな苦労を積みあげつつひっそりと生きている人間のひとりがここにいる日誌きちがいの三河低馬だ」

 こんな風に。
 惜しむらくは、まだ構想の七分の一だというところでの中断。続きはたぶんもうないだろう。それが残念である。


 あと、全然関係のない話なのだが、オシム監督の快復を心よりお祈りします。
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行ってきました、サイクルモード

2007年11月16日 21時33分32秒 | 観光


 行ってきました、サイクルモード2007。
 試乗するためには、住所・氏名などを記した申請書を出してパスを貰わなくてはならない。開場30分前に着いたのに、すでに申請書の受付には100人以上並んでいる。試乗パスをもらって、入場口に並ぶと1000人を越える人たちが開場を待っている(長蛇の列が8つもできてた)。
 いろんなものを見て回るほか、今回の課題はカーボンのロードバイクとちゃんとしたマウンテンバイクの試乗。
 で、ぼくの乗っているジャイアントのブースに行って試乗を申し込む。ここはえらい。他のところが、延々と試乗する人を列にして待たせているのに対して、ジャイアントは車種ごとに時間を書いた紙を配ってる。要するに、ディズニーランドのファストパスと同じ。試乗するまで延々と列に並んでいるのではなく、予約時間まで他を見て回れるのだ。賢い。


 まずはジャイアントのTCR ADVANCED 1(577500円也)に試乗する。ああ、ぼくのTCRと全然違う! すごい!! そうかあ、高いバイクってこういう感じなのかあ。何もかも気持ちいい。シフトも踏んだ感じも。欲しい。ぼくの物欲ノートの上位に書き込んでおく。
 にしても57万かあ。ふう。


 次に試乗したのは、ジャイアントのANTHEM0(535500円也)。
 なんちゃってマウンテンと違う、ちゃんとしたマウンテンバイク。そりゃ、53万円ですもの、ちゃんとしてるよね。なんちゃってマウンテンと違って、軽々。マウンテンバイクの試乗用にコースには木組みで段差やジャンプポイントなんかが作ってあって、そこを楽しめるんだけれど、初めてのぼくでも楽しく走ることができた。このバイク欲しい!
 物欲ノートにまた書き込む。

 課題をクリアしたので、方々見て回る。デローザやコルナゴ、ピナレロにはやはり試乗を待つ人たちの列が長い。 
 自転車な人には有名でも一般的にはそれほど有名じゃない有名人たちの姿もちらほら。今中大介とか一本木蛮とかサイクルスポーツの岩田編集長とか。明日はエミコ&スティーブ、栗村修、ドロンジョーヌ恩田、ツーキニスト疋田など一般からすると微妙に有名な人たちも来場するらしい。


 ピナレロの自転車はセクシーだと思う。
 こういうフォークを考えるって凄い発想だよなあ。
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江分利満氏の優雅な生活

2007年11月15日 10時48分02秒 | 映画


 小学生の頃、21世紀なんて来るもんかと思っていた。21世紀に自分は30過ぎ。30過ぎの自分を想像することができなかったのだ。
 その頃の21世紀は、自動車は道じゃなくて空を飛び、ロボットが働き、タイムマシンが恐竜見物に出かけていたものである。
 あにはからんや、相変わらず自動車は地べたをはいずり回っているし、働くどころか歩くロボットってえだけで大騒ぎ、タイムマシンはこりゃ、仕方がないな。要するに21世紀はぼく的にはまだ来ていないようなものなのである。
 なのに、「3丁目の夕日」は2作目が公開され、ノスタルジックに「昭和」が語られる時代。1作目は付き合ったが、さすがに2作目はなあ、もう付き合いきれませぬ。ノスタルジーに浸るのはまだ早いんじゃないか。
 どうも思うのだが、生の昭和を振り返るというより、2007年に作られたノスタルジック昭和を見て懐かしがっているような気がする。
 昭和を振り返りたいのなら「3丁目の夕日」もいいが、たとえば「江分利満氏の優雅な生活」を見ても十分振り返れると思う。しかし、そこに現れる昭和は夕日に象徴されるようなノスタルジーや美しさとは別のものだ。
 サントリーの広告部に勤める主人公(それにしてもサントリー広告部からは直木賞、芥川賞作家両方が出ているというのもすごい話だ)36歳、口癖は面白くない。気力が続かないとぼやく。数字に弱い、口笛が吹けない、靴のひもがちゃんと結べない、北陸と東北を間違い、コピー機も使えない、音痴、そんな不器用な彼がつましいながらも家族を大切に暮らしている。どこにでもいる江分利満氏である。
 そんなどこにでもいる人間にもいくつものドラマがあり、歴史がある。ときにユーモラスに、ときに哀しく、アニメの使用やアステアの「恋愛準決勝戦」で使われた特撮などを織り交ぜ斬新な映像表現で描いている。
 「3丁目の夕日」では三浦友和役にわずかに残る戦争の匂いも、この映画では主人公の中の屈折として大きな存在である。直木賞受賞後の泥酔状態でそれが炸裂する。大正末期生まれの主人公は徴兵された最後の戦中派であり、その酒乱に付き合わされる20代の若手社員にはもうその主人公の気持ちは理解できない。いやがる若手社員に代わって新珠三千代が朗読するシーンが実に象徴的で、そこに深々とした断絶が存在するのだ。
 戦争に行った戦中派の気持ちを理解できない若者が現在70歳くらいなのだ。戦争観も変わってくるだろう。
 昼の平凡な会社員と夜の酒乱とを小林桂樹が名演技でみせる。ウルトラ警備隊から2人が出演。1963年制作の映画だけれど、映像表現を含めて、決して古くない今見ても十分面白い映画であった。
 ただ、夫婦の関係(今、こんな夫がいたら即離婚だろう)とか、出てくるみんなタバコ吸い過ぎとか、時代の隔たりを感じる部分もある。が、その違和感も一興だろう。
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荒川

2007年11月14日 13時07分44秒 | 観光


 久しぶりの自転車、久しぶりの荒川。
 先々週の日曜日無理をして膝を壊して以来ずっと自転車に乗っていませんでした。こんなにブランクがあいたのは今の自転車を買ってからは初めて。
 昨日、久しぶりにリハビリで自転車に乗ってきました。最初はちょびっとおっかなびっくり40kmだけ。
 「なに見つめてんのよ」
 「いや、久しぶりに会ったけど、改めてきれいだなと思って」
 「もう馬鹿みたい(はあと)」
 などという会話を荒川と交わしている危ない中高年。
 でも、やはり荒川は美しいのであった。
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埼玉B級ご当地グルメ王座決定戦

2007年11月07日 00時04分12秒 | 食べ物
 何で見たんだろう、覚えていないのが残念なんだけれど、「先進国の住民が、ズボンのベルトの穴1つ分ウエストを細くすれば食糧問題は解決する」なんていう文を記憶している。
 でも、それって嘘だと思う。
 事実、ぼくのベルトの穴は1つ細くなったけれど、食べる量は以前より増えてる。
 ぼくは高校時代体重が50kgないガリガリくんだったのだが、高田馬場の「ボルツ」でライス9杯お代わりしたあと、1階の立ち食いうどんを食べたりする大食漢でもあった。
 「ボルツ」懐かしいなあ。昔は池袋にもあったのだけれど、今は神田と宇都宮にあるくらいらしい。激辛カレーにすると、少しのルーでライスが一杯食べられる気がして、かなり辛いカレーを食べていた。今から25年前、一部の好事家をのぞけばカレーはインド料理ではなく、日本食だったと思う(スパゲッティがイタリア料理じゃなかったように)。そんな時代にあのスパイシーなカレーは真新しかった。ああ、食べたい、食べたい。
 そう、四半世紀を経て、またぼくは大食漢になりつつあるのだ。
 実によく食べる。自転車に乗っているので体重は増えないが、去年のぼくが見たらやんわりと注意するであろうほど食べる。
 そんな折、こんな催しを見つけてしまった。
埼玉B級ご当地グルメ王座決定戦!味の競演in GYODA
 なにも戦わなくてもいいような気もするが、これは確かにそそられる企画である。
 こないだ高崎へ自転車で行ったときも、実は妻沼で雪くまを食べようと思ったのに、ふられた腹いせに遠くまで行ったようなものだし、行田のフライは一度食べてみたかったし、埼玉はうどんがとにかくうまいので、加須(これ、「かす」って読むんじゃないんですよ、「かぞ」って読むんです)のうどんも食べてみたい。
 日曜日は早稲田対帝京のラグビーを青山の秩父宮へ見に行こうと思っていたのだけれど、これはまた自転車にまたがって行田まで行かざるを得ないか、と。
 っていうか、これほど埼玉県に頻繁に出かけたことは人生初めてだと思う。群馬に行こうが栃木に行こうが、とにかく埼玉を通り抜ける。普段走るのも埼玉。関東平野にありながら、日本三大峠の一つ雁坂峠のある県。最近、ぼくの中で好感度上がりまくりの県である。
 やっぱり日曜日は青山じゃなく埼玉かあ。
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動く居酒屋

2007年11月06日 00時58分22秒 | らくがき
 電車でもバスでもいい。ベンチ式の椅子じゃなくて、クロス式の椅子を見ると旅情を感じる。
 旅情を感じた上は飲まなくては。旅とは、そういうものであろう。
 初めて仕事先の旅行に行ったとき、出発の朝、電車の中ですでにアルコールが回されていたのに驚いたことがあったが、そんなもんは序の口。さんざん夜飲んだ明くる朝、朝食の席でビールがばんばん抜かれていたのには度肝を抜かれたものだ。
 二日酔いの身にさらにビールですか、と。それも朝っぱらからですか、と。
 そんな20代後半を過ごしているうちに、旅と酒は切っても切れない仲になってしまった感じがする。
 今は、移動する乗り物で飲むのが趣味、と言ってもいい。
 こないだ「むとう」で蕎麦を食べたあと、ぼくと友人は八重洲からリムジンバスで羽田へ向かった。バスにはぼくたち二人の他、客はもう一人だけ。大型の通行料は1400円だと首都高の入口に書いてあった。乗車賃は一人900円。つまり、このリムジンバスの収入は2700円。で、首都高代が1400円だとしたら、粗利は1300円。運転手の時給にもならないだろう。銭の花が咲かない寂しいバスである。
 で、ぼくたちはコンビニ(ほんとは大丸で買い物をしたかったのが、ちょうどこの日は大丸最終日。6時で終業してしまったのだ。逆だろう。こういう歴史的な日なんだから、いつもより遅くまで名残惜しんでやってます、お客様いつでもカモンです、と。それでこそ老舗だろう)で買ったつまみやビール、ウィスキーで飲んで楽しんだのだ、レインボーブリッジからの夜景などを見ながら。たぶん、お互い、異性と来ていたらこの情緒とは違った感じを楽しめるのになあ、などと思いながら、「あっちがヴィーナス・フォートの観覧車で、あっちは葛西の観覧車だなあ」などと言ったりしながら。
 自転車で遠くに行く楽しみの一つもこのへんにある(まあ、遠くたって、200km超えたことはないのだけれど)。
 帰りはタイヤを外して袋に詰めて電車に乗る。
 こないだは高崎から。昨日は宇都宮から。新幹線には乗らない。湘南新宿や快速RAPID、あるいは普通の高崎線やら宇都宮線。でも荷物が大きいからグリーン車に乗る。通勤ラッシュとは違うので、2人掛けの席の隣に誰かが座ったことは一度もない。ゆったりデジカメの画像を見たり、本を読んだり、ウォークマンで音楽を聴きながら(あるいは、すべていっぺんにやりながら)、今日の自転車旅を思いつつ電車で帰る。
 快楽。
 自転車であえぎながらも快楽物質が分泌されたりするが、旅を終えて電車に揺られながらビールを飲むのも快楽である。
 だから、ぼくはJRか西武線沿線のサイクリングが好き。
 だって東武東上線にはグリーンも指定もないんだもん。帰りまで忍耐の旅はちょっとイヤだな。
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手打蕎麦 むとう

2007年11月01日 17時02分25秒 | 食べ物


 ああ、三日月と同じ風情だよなあ、としみじみ。
 三日月はこの春まで八重洲の富士屋ホテル脇にあったお蕎麦屋さん。ネウマ譜がインテリアとして飾ってあったり、蕎麦もおいしいが、雰囲気もたいそうよかった。
 こちらは同じ八重洲と言っても三越の方。住所で言うと日本橋室町1丁目にあたる。


 店内は少し暗めで雰囲気がいい。しかし、各テーブルの上には照明があるので手許は明るいし、料理ははえる。この照明は最近のしゃれた蕎麦屋さんに多い。
 行ってみたら、夜はおまかせコース(7000円)のみの設定。一緒に行った友人がその後飛行機で帰らないと行けないので、だめもとで尋ねてみる。そうしたら、せいろかおろしそばのようなものでしたらできます、とのこと。親切である。


 蕎麦は十割の手打ち。十割でこの歯ごたえは素晴らしい。
 つゆは強すぎず穏やかなお味。もちろん、蕎麦を受けとめるだけの強さはある。
 うまいっす。
 薬味はネギとわさびと大根おろし。丁寧におろされたわさびは香りがよく、蕎麦と相性がいい。ああ、うまい。
 名店盛りではなく、量もちゃんとあるが、うまいのであっという間になくなってしまう。


 頃合いを見計らって出された蕎麦湯。
 そうなんだよねえ。いつも思う。蕎麦湯って、最初薄くて、最後濃厚になるんだけれど、あれどうにかならないかなあ、と。で、湯桶を振ったりして、こぼれてやけどしたりしていたのだけれど、ここは竹のスプーンがついてきた。かき回してお飲み下さい、とのこと。
 気が利いてます。
 うまい蕎麦を愉しみ、濃厚な蕎麦湯に舌鼓を打ち、八重洲の夜は更けていく。
 ああ、いい店でありました。


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