旧ユアサ食糧

2010-09-30 19:26:24 | 京都・兵庫







 現在は業務用食料品を取り扱う企業の事務所(倉庫?)となっているこの建物は昭和2(1927)年の建築。 窓の一部がベニヤ板で塞がれるなど各部はかなり痛みが目立ちますが、手持ちの資料では旧岡方倶楽部と記載されていて倶楽部建築らしい(?)風格も感じさせます。 設計者は高松吉三郎で施工は原田末吉、戦時中は食糧営団が使用し昭和33(1958)年に旧財産区から神戸市に譲渡。 建物は旧西国街道に面し、かつては周辺に銀行建築も建ち並ぶなどこの辺りは人通りの多い賑やかな時代があったそうです。  兵庫県神戸市兵庫区本町2-3-33  08年12月下旬他

 ※参考 『阪神間の戦前の建築物について』 第三次調査報告書  2005

鳥居本駅

2010-09-29 21:43:50 |  滋賀県






 昭和6(1931)年開通の近江鉄道・米原~彦根間に設置された駅で、何度も補修を続けながら開業当初より使用されているという小さな駅舎です。 赤い洋瓦を葺いた腰折屋根と、かつて使われていたというストーブ用の煙突が建物を山小屋のようにも見せ個性を演出しています。 ガラスの欄間(?)のアーチをくぐってみれば内部は小屋裏を見せた高い天井空間。 縦方向にとられた窓によって窮屈さを感じさせず、小さな建物を明るい空間に仕上げていました。  滋賀県彦根市鳥居本町647  09年10月中旬


 ※おまけ  こちらは駅を出てほんの少し歩いた所にあるT邸。 案内書きによるとT家は代々、鳥居本宿の本陣を務めたそうで、この建物は昭和10(1935)年頃にヴォーリズの設計により建てられたと記してあります。


 煙突がヴォーリズっぽい?


 こちらはT邸から少し南に行った所で見つけた建物。 現在は個人邸のようですが元は何かの事務所建築だったのではないかと思われます。 正面側に貼られた茶系のタイルと歯型の装飾が特徴的。


 写真が一部大きくなります。

旧船木郵便局

2010-09-26 19:49:57 |  滋賀県





 現局の東隣り、琵琶湖を廻る湖周道路から一本入った通りに面して建つかつての郵便局舎(昭和14年築 1939)。 この時代の局舎としては標準的な下見板張りの建物ですが、窓は引き違い窓、玄関ポーチと寄棟の屋根には和瓦を載せて洋風の要素はかなり薄めたものとしています。 今回の探訪で高島市内には高島(山の方で駅から遠い 詳細不明)と新儀(新旭 昭和4年)の旧局舎の現存を確認出来ました。  滋賀県高島市安曇川町南船木  10年09月中旬

河村商店

2010-09-23 18:29:02 |  大阪府






 現在は衣料品店となっているこの建物は大正7(1918)年に加島銀行池田支店として建設されたもの。 設計が辰野片岡建築事務所となっているので何となくレンガ造りの建物に思えてしまいますが、実際には木造でレンガ調のタイルを張り付けてそれらしく演出しています。 同じ設計者・同規模の建物で九州の八幡には百三十銀行八幡支店(大正4年)がありますが、そちらは外壁こそレンガ風タイルですが構造は鉄筋コンクリート(RC)造。 防災・防犯面で不安の残る木造建築で建てられたのは当時の両銀行の資本力の差などが出ているのでしょうか?  大阪府池田市栄本町8-7  09年11月下旬

山之上公民館

2010-09-21 19:36:39 |  滋賀県




 
 アウトレットモールの開業で激熱な(?)滋賀県竜王町にあるこの下見板は、大正14(1925)年完成の㈶米久報徳会事務所だった建物。 門構えも中々に立派で白色に仄(ほの)かなブルーの色使いが街並みに一服の清涼感を与えるような存在です。 このレベルの建物が去年刊行の『湖国のモダン建築』にも掲載されていなかったのは少し不思議なくらいに思えました。  滋賀県竜王町山之上3408  10年09月中旬





 ※12年02月追記。 米久とは苗村の竹中久次が明治にいち早く近江牛の販売を開始した時の牛肉店の屋号だそうです。

旧石川商銀信用組合小松支店

2010-09-10 07:04:07 |  石川県


 旧加能合同銀行小松支店(昭和5年築 1930)。 円筒形になったコーナー部分、装飾を簡略化しスクラッチタイルを貼り廻らした外壁など、旧来のいわゆる「銀行建築」とは一線を画したモダンな建物。 現在は「空とこども絵本館」分館・絵本館ホール(十九番館)となって必要最低限の改修のみで活用されています。  石川県小松市京町19-5  06年08月中旬他



 一つ目のような窓。 2階の屋根から連続する水平線部分だけスクラッチタイルを縦貼り。




 かつての正面玄関。 上部はヴィオラのような弦楽器を連想させる独創的なデザイン。




 円筒形のこの部分は螺旋階段になっているそう。 見たかった。。。


 左側の大きなガラス窓の建物が活用に当たっての増築部分。


 向かい合う山本久次商店(昭和5年築)も現在は似たような茶色の外壁に変更されています。


 これが今の姿。

旧三島測候所

2010-09-07 07:10:01 |  静岡県


 中央気象台三島臨時出張所として昭和5(1930)年に開設。 定規で引いたような直線基調の建物ですが、目に付きやすい部分に半円形のアーチを用いる事によってモダンな雰囲気を高め個性を演出しています。  静岡県三島市東本町2-5-24  10年03月中旬



 半円形にデザインされた2階の窓台。


 青空にスッと伸びた煙突も美しい。


 このアルミ扉は最大の残念ポイント。


 ステンドグラスを内側から。 静岡なら富士山が描かれそうですが。


 中に入ると2階への階段がお出迎え。






 1階の中央廊下。 室内も見学できます。


 何かの警報装置でしょうか。 盤内には桜の花びらのマーク。


 竣工当時は田園の中に孤立した姿であったそうですが、現在は周りが住宅地となって民家に取り囲まれています。

銚子市公正市民館

2010-09-03 07:11:15 | 埼玉・千葉


 濱口儀兵衛商店(ヤマサ醤油の前身)の十代目・濱口梧洞の組織した㈶公正会の会館として大正15(1926)年に建設。 図書室を中心に大小の集会室を設け、夜間中学である公正学院を開いたりするなど独自の社会教育事業を行いました。 昭和23(1948)年に施設は銚子市に移管され、公正市民館と改称し地域の社会教育活動の中心として近年まで機能し続けました。  千葉県銚子市新生町2-1-5  10年08月下旬他

 ※参考 『総覧 日本の建築 2 関東』  1989





 現在は地区のコミュニティセンターとして活用。


 柱頭はかなり簡略化されたデザイン。




 天女が描かれたステンドグラス。


 取り外した跡があるのでこの蝶番は古くないかも。




 2階へ上がる階段下の装飾。


 分かりやすい解説をどうぞ。


 濱口梧洞翁の胸像。


 設計者の高橋清輔は東京・有楽町にあった米国貿易商事の営繕技師だったという。


 
 ※参考  同じ醤油醸造業者の興した社会事業施設としては、こちらの興風会館も同様です。 野田醤油(現在のキッコーマン)により昭和4(1929)年に建設されたもの(千葉県野田市)。

旧武毛銀行本店

2010-09-02 07:09:04 | 埼玉・千葉


 「国神銀行」と金融業の「共栄」が合併して明治35(1902)年に誕生した武毛銀行の本店新社屋として大正7(1918)年に完成。 煉瓦造(資料によっては木造レンガ積みとも)の建物ですが、女性の白粉(おしろい)化粧のように正面と側面の3分の1ほどを白色系のタイルで覆って明るい雰囲気に仕上げています。  埼玉県秩父市下吉田3871-1  08年03月下旬

 ※参考 『近代埼玉の建築探訪』 2006 



 「登録文化財」のプレートが誇らしげな正面玄関。


 2階部分の装飾。 大正時代の建築という事もあり、古典様式から一歩進んだようなデザイン。




 レンガは小口積み。




 この建物が建った頃の武毛銀行は資本金50万円を超える大銀行でしたが、大正11(1922)年に秩父銀行と合併してその歴史に幕を閉じる事になります。

下関南部町郵便局

2010-09-01 07:11:03 | 岡山・広島・山口


 明治33(1900)年に約五万円の工事費で建設された煉瓦造りの郵便局。 創建当初の名称は赤間関郵便電信局といい、現役の郵便局舎としては国内最古のものとなっています。  山口県下関市南部町22-8  09年9月下旬



 古典的な様式をあしらったエントランス。 設計は明治31(1898)年から3年間、逓信省技師として勤めていた三橋四郎によるもの。


 床下換気口のデザイン。


 建物の平面プランはコの字型。 現在、中庭は局内に併設するカフェのテラス席になっています。 


 1階が郵便で2階は電信の業務を行っていたそう。 それぞれアーチ窓とペディメント付きの窓が並ぶ。


 この部分を見れば煉瓦造というのも納得。 そういえば旧函館郵便局(明治44年)も煉瓦造ですね。 


 建物の裏側。 扉をくぐれば中庭に繋がります。


 唐戸の交差点に架かる歩道橋の上から。 ファサードは古典的な装飾で賑やか。


 軒飾りは10年くらい前に復元された物。 古写真と比べると立体感が無く、表面的な復元にとどまっています。