岡崎信用金庫資料館

2010-10-30 17:29:06 | 愛知・岐阜


 旧岡崎銀行本店(大正6年築 1917)。 明治時代の始まりと共に紡績など地元産業が発展し、金融機関設立の必要性に迫られた地元財界人達により明治23(1890)年に設立されたのが岡崎銀行であり、この建物は大正6年に銀行本店を現在地に移転した時に建てられたものです。 昭和20(1945)年7月の岡崎空襲により煉瓦の外壁を残して建物は焼失しましたが、同様に空襲でビルを焼失していた岡崎商工会議所により終戦後に買い取られ内部を修復される形で使用されました。 その後は老朽化の問題等により取り壊しの話も出ましたが、岡崎信用金庫が建物を買い取って内部を鉄筋コンクリートで補強するなどして復元改装、現在は資料館として公開するに至っています。  愛知県岡崎市伝馬通1-58  07年09月下旬他

 ※参考 『東海の近代建築』  1981



 旧東海道に面する南側が正面ですが資料館の入り口はこの西側。




 赤レンガと御影石(花崗岩)のコンビネーション。




 こちらが本来の正面玄関。 南側は御影石が多く使われていますが、石灯籠を作る職人の多かった岡崎でもこれだけの石の化工は難工事だったそう。


 半円球を連ねた装飾が各所にワンポイントで使われています。


 東側の尖塔屋根。




 建物の設計者は鈴木禎次(1870~1941)。 名古屋高等工業学校建築課創設直後から教授を務め、後に独立し愛知県内に数多くの建物を手掛けました。


 装飾を簡略化して古典的な建築意匠からは脱却。 セセッションの影響があるともいわれます。


 



 無料の資料館でしたが撮影は禁止でしたので内部写真はありません。

旧勝央町郷土美術館

2010-10-29 18:52:13 | 岡山・広島・山口


 旧出雲街道沿いにあるこのトンガリ屋根の建物は明治45(1912)年に勝田郡役所として新築されたもの。 郡役所の廃止後は勝田地方事務所などに転用され、昭和29(1954)年に1町4村合併により新しく勝央町が誕生した時にはその町役場として昭和57(1982)年まで使用されました。 庁舎の新築移転後は解体される計画もあったようですが、協議の結果により保存改修が決定し廃庁の翌年には郷土美術館として開館。 しかし平成16(2004)年に勝央美術文学館が新設されるとこの建物は廃止され、以来空き家のまま現在に至っているようです。  岡山県勝央町勝間田635  10年04月下旬







 カーテンは厚く閉ざされたまま。


 この裏に階段があるんですね。


 塔屋部分のブロークンペディメント。


 現在の窓は引違い窓ですが元々は上げ下げ窓だったようです。


 銅板葺きかと思いましたが緑青もふいていないし違うっぽい。 ちなみにかつては通気用のドーマー窓があったみたい。




 この部分は昭和18(1943)年の増築。




 煉瓦の基礎の上に建っています。


 玉虫色にも見えてしまう。


 裏にはナマコ壁の蔵がありました。


 まだまだ綺麗な建物なので上手く活用されれば良いのですが。

旧ハッサム住宅

2010-10-27 20:05:05 | 京都・兵庫


 インド系英国人貿易商、J・K・ハッサムの自邸として明治35(1902)年に北野町2丁目に建設されたもの。 昭和36(1961)年に当時の所有者であった神戸回教寺院から神戸市が寄贈を受け、その2年後に現在地に移築されました。

 建物の設計はフランス北西部の都市カーン生まれの英国人A・N・ハンセル(1857~1940)と推定されています。 ハンセルは牧師であった父親に随ってイギリスに渡りそこで英国人建築家チャンピオン等の下で建築の修業を重ねたといわれ、明治21(1888)年にイギリス聖公会系の三一神学校教師として来日しました。 来日して間もなく建築測量事務所を開設し、明治24(1891)年には本拠を神戸に移して建築家としての活動を本格化させていく事になります。  兵庫県神戸市中央区中山手通5-3-1(相楽園内)  10年10月下旬

 ※参考『日本の美術 447 外国人建築家の系譜』  2003









 化粧煉瓦積みの煙突。


 ベランダ2階の柱にはアカンサスの柱頭飾り。


 玄関ホールを入ってすぐ左側の部屋は食堂になっています。


 黒い大理石の暖炉。




 雰囲気のある家具が設えてありました。




 食堂の奥にある配膳室。 奥に見える扉は地下室への入り口になっているみたい。






 玄関ホール正面にある2階への階段。 各所に凝った装飾が施されています。


 親柱は昇降部分の手摺りから45度傾けて設置。


 食堂と対になる部屋は応接室。


 こちらには白い大理石の暖炉。








 応接室の奥は居間。 ピアノはハッサム邸にあったものではありませんが、昭和初期に東京銀座の小野ピアノ製作所で作られたものを展示してあるそうです。


 照明に浮き上がる天井装飾の美しさ。


 居間の暖炉は木製ですが非常に手の込んだ細工がなされています。


 玄関ホール突き当りにあるトイレ。




 建物の裏にある別棟(?)の使用人室。








 ファンライトからの外光が玄関ホールを照らしだす。






 踊り場からの振り返り。


 2階へ到着。


 食堂の上の部屋はかつての寝室。


 居間にあった暖炉と同じものに見えます。




 惰眠を貪るにはもってこい。


 寝室に続く子供部屋からの見返り。


 子供部屋からは使用人室が見えています。




 浴室へのアーチ。




 年代物ですね。


 浴室の天井にも装飾がありました。




 東側の2室は資料展示室になっています。


 北側の部屋からは旧小寺家厩舎の特徴的な屋根が良く見えました。


 下を見てみれば附属の物置。


 南側の部屋の床面。


 ここを開ければバルコニー。








 

 バルコニーの中央にある照明吊りの装飾。








 阪神淡路大震災で落下した煙突がモニュメントとして前庭に飾られています。


 床下換気口のグリル。


 

 1・2階のバルコニーは現在は吹放ちになっていますが、移築前はガラス建具が嵌められていたそう。 日本の気候に合わない設計だった事がうかがえます。






 この日は菊花展が行われておりました。 

(仮)

2010-10-06 20:29:46 | その他・雑記
 
 タイトルは(仮)ですが、一応まっとうな内容でまとめてあります。


 旧名鉄 美濃駅  T12  岐阜県美濃市


 旧有知学校  M9  同上


 (旧)十六銀行関支店  S15  岐阜県関市  銀行は移転したみたい。


 旧川島郵便局  S11  岐阜県各務ヶ原市


 旧岐阜県庁  T13  岐阜県岐阜市


 旧加治田巡査駐在所  M10頃  岐阜県富加町  漆喰が剥がれ落ちて痛々しい状態。


 旧三里塚御料牧場貴賓館  M9  千葉県成田市  下見板+藁葺き屋根のコンビネーション。


 旧多古郵便局  S17  千葉県多古町  出入り口が二つ。


 N邸  詳細不明  千葉県東金市  平屋にしては天井が高そう。


 茂原昇天教会  S8  千葉県茂原市


 旧宮崎医院  S初?  千葉県市原市  近所の犬に吠えられまくりでした。


 旧郵便局  T末~S初  千葉県大多喜町  局名が分かりません。


 旧山崎医院  T9  千葉県木更津市  


 旧上伊那図書館  S5  長野県伊那市  内外とも綺麗になりました。


 追手町小学校  S4  長野県飯田市


 旧柳田國男邸  S2  同上


 旧木工学校  T末  長野県長野市


 長野高校旧本館  S14  同上


 旧長野県師範学校教師館  M8  同上  真夏の訪問でしたので、やぶ蚊の襲来が・・・。


 旧長野県庁舎  T4  同上  以前と雰囲気が変わったようにも思えます。


 老川外科病院  S10  同上  自家設計という。


 坂の途中の洋館  詳細不明  同上  


 旧上田蚕種  T6  長野県上田市


 草間歯科医院  詳細不明  同上


 志賀老人クラブ(M34)???  長野県佐久市  ネット情報では旧志賀村役場(M初)が大勢みたい。


 旧黒田原郵便局  S7  栃木県那須町


 JR白河駅  T10  福島県白河市


 日本基督教団 郡山教会牧師館  詳細不明  福島県郡山市  設計はヴォーリズらしい(?)


 旧塩津浜郵便局  S5頃  滋賀県西浅井町  


 旧新儀郵便局  S4  滋賀県高島市  


 旧伊藤医院(T6頃)?  同上


 日本基督教団 大溝教会  詳細不明  同上


 旧武曽学校  M11  同上


 旧琵琶湖ホテル  S9  滋賀県大津市


 旧大津公会堂  S9  同上


 旧日夏村役場  S9  滋賀県彦根市


 南川瀬町公民館  S5頃  同上


 犬方町の洋風建物  詳細不明  同上  元は何かの工場事務所っぽい。


 旧明治銀行(M38)?  同上  住所的にはほぼ合致ですが。


 小菅医院  S9頃  滋賀県多賀町


 多賀荘農協  S11  同上


 旧大杉医院  S28  同上  


 旧横関郵便局  S12  滋賀県甲良町  なにかバランスが悪いです。


 旧愛知郡役所  T11  滋賀県愛荘町  お世話になった学芸員の方々、お元気でしょうか。


 旧日野町隔離病舎・避病院  S18頃  滋賀県日野町  


 セルフポートレート。  同上


 旧南比都佐小学校奉安殿  S10頃  同上


 旧米原小学校  S8  滋賀県米原市


 旧大原村役場  S26  同上


 旧畝傍中学校  S8  奈良県橿原市


 旧郵便局  詳細不明  奈良県御所市  旧御所郵便局?  


 旧福田医院  T14頃  奈良県宇陀市


 旧郵便局  詳細不明  同上  ネット情報では旧榛原高井郵便局だそう。


 旧釜谷医院  詳細不明  奈良県御杖村  母屋と共に無人みたいな雰囲気。


 天理大学創設者記念館  T14  奈良県天理市


 志賀直哉旧居  S3  奈良県奈良市


 旧JR奈良駅  S9  同上  


 旧帝国奈良博物館  M28  同上


 旧奈良女子高等師範学校  M42  同上


 旧大阪電気軌道富雄変電所  T3  同上


 宝山寺獅子閣  M15  奈良県生駒市  訪問がひと月早すぎましたね。 せっかくなので再訪します。


 旧明治病院  M25  山梨県北杜市


 朝日村役場  S11  長野県朝日村


 旧福沢桃介別荘  T11  長野県南木曽町


 桃介橋  T11  同上


 旧仙石三原時計店  M40以前  青森県弘前市


 日本基督教団 弘前教会  M40  同上


 旧騎兵第八連隊・雨覆馬場  S初  同上


 広泰寺  M44  青森県西目屋村  レンガ造の寺。


 板柳温泉  M37  青森県板柳町


 太宰治 疎開の家  T11  青森県五所川原市


 旧津島家住宅  M40  同上  太宰治(津島修治)の生家。


 旧槇医院  S7  青森県大鰐町


 旧野場小学校  S2  岩手県軽米町


 旧岩手銀行浄法寺支店  T期  岩手県二戸市


 旧三戸銀行一戸支店  T15  岩手県一戸町


 旧殖産銀行  詳細不明  岩手県花巻市


 旧盛岡銀行野手崎派出所(T9)?  岩手県奥州市


 旧姉体小学校奉安殿  S3  同上


 喫茶レオン  T5  岩手県北上市


 旧山口尋常小学校  S11  同上

大阪市立工芸高等学校

2010-10-04 19:10:12 |  大阪府






 ベルギーのアールヌーヴォーの建築家、アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデが設計したワイマール工芸学校をモデルに設計したといわれる建物(旧大阪市立工芸学校本館 大正13年築 1924)。 1・2階の壁面にはレンガを積み、その上には旧勾配の屋根をかけて3階部分の窓面を屋根窓風に見せるという一風変わったこの建物は、大阪市営繕課・矢木英夫の設計ではないかと推察されるもの。 過渡期のデザインだとは思いますが国内に現存する同様な作品が少ないだけに非常に新鮮に映ります。 屋根に載っかる深緑の時計塔がとても繊細で儚なげな感じがして美しいと思いました。  大阪府大阪市阿倍野区文の里1-7-2  08年01月上旬他

菊池捍邸

2010-10-03 18:39:49 | きた東北 (青森・秋田・岩手)



 宮沢賢治(1896~1933)の寓話『黒ぶだう』に出てくるベチュラ公爵の別荘のモデルになったといわれる住宅(大正15年築 1926)。 家主の菊池氏は札幌農学校の助教授や長野・岩手・山形の各県で農業試験場の場長を歴任し、新渡戸稲造や後藤新平との交流から日本の農業の近代化と台湾の産業の確立に貢献したと伝わる人物。 建設当時は明治製糖の十勝清水工場長だったという氏はそれまで歴任した仕事の流れから北海道開拓の中で培われた北米・コロニアル様式の洋風建築を導入し、東京の設計士に依頼して建てたのがこの住宅だったそうです。 昭和の初めには秩父宮の花巻行啓時の宿泊所になったともいわれ、こげ茶の下見板に薄いピンクの縁取り、主/副2つの玄関や2階の窓の手摺りなどが印象的な建物ですが、保存問題があるようで今後の状況が気になる建物の一つです。  岩手県花巻市御田屋町  08年08月中旬

 ※参考 『岩手県の近代和風建築』  2007

旧東櫻谷村役場

2010-10-01 19:09:17 |  滋賀県


 明治27(1894)年から昭和30(1955)年まで蒲生郡に存在していた東桜谷村の村役場として昭和11(1936)年に建設されたもの。 竣工年以外の建物データが無いので詳しい事は分かりませんが、近隣5村と共に日野町と合併してからは役場の支所か、それに準ずる公的な施設として使われていたのではないかと思います。 訪問時は扉には鍵が掛かり人の気配は無し、半ば放置された建物のようにも見えました。  滋賀県日野町中之郷  10年09月中旬

 ※11年06月追記  訪問直後に内部の一般公開がありその後解体されたようです(未確認)。



 北東側から。 塀の一部が崩され敷地内に放置されている様は、さながら廃墟物件の匂い。


 この塀や玄関扉の窓の桟など、細部に洒落たデザインを施していて設計レベルは低くなさそう。


 「蒲生郡東櫻谷村役場」のプレートが鈍く光る。 対になる側は「東櫻谷村各種團体事務所」と刻まれています。


 窓の上のマークは村章でしょうか。


 腰部分などに貼られたタイルはスクラッチタイルではなくて焼き豆腐の表面のような風合いのもの。


 持ち送りにサクラの花びら・・・




 滋賀県内の役場や公民館など、公共施設の屋根にはこのようなサイレン(?)が載っているのを良く見ます。


 横の窓から。 腰板が高い位置まで貼られた部屋。


 隣りの部屋は雑然とした様子。




 後ろに平屋の建物が接続。


 裏手から敷地全体を望む。 同じ屋根瓦が並び、建物に一体感を生んでいます。


 さようなら。 もうこの建物に会いに行く事はないでしょう。