旧引田郵便局

2010-11-21 19:48:04 | 愛媛・香川






 大正初期に東京の「あめりか屋」から高松にやってきた松末某により昭和7(1932)年に建てられたという旧郵便局舎。 2階建てのように見えますが平屋の建物で、採光用と思しき八角形窓が独創的でモダンな表情を作りだしています。 構造は木造かと思ったらコンクリート造、それも木筋コンクリートという他では殆んど聞いた事が無いような構造形式。 知る限りでは岩国徴古館(山口県 昭和20年)が竹筋コンクリート造だったと思いますが、木筋というのは竹筋のひとつ前段階の施工技術だったのでしょうか? そういえば半円ペディメントにあしらわれた郵便マークの〒部分だけが木片ぽいのも何だか不思議に思えてきます。  香川県東かがわ市引田2253  10年08月中旬


 説明看板。 こちらでは東京の松末組の設計・施工と記載されています。

旧京都電燈 高浜営業店

2010-11-16 07:12:12 | 富山・福井


 若狭高浜駅から真っすぐ北に向かって歩いて行くと左手に見えてくるこの建物は、昭和6(1931)年に京都電燈の高浜営業店として建てられたもの。 昭和51(1976)年までは関西電力の営業店として使用され、その後は高浜町の観光協会事務所(?)になっているようです。 道路に面した1階部分を少し前に張り出して上部にバルコニーを構築、その正面部分には左官による見事なモルタル装飾を施して洋風建築である事を強調していました。  福井県高浜町宮崎73-5-2  08年07月中旬







 個人的に苦手な真正面からのショット。 やっぱり建物が傾く。。。




 この通用口や庇を見る限り当初から左右に建物は無かったみたい。 意図的に正面部分のみを飾っているようです。


 2階のアーチ窓がひとつ埋められている理由は不明です。

旧殖産銀行

2010-11-15 07:13:59 | きた東北 (青森・秋田・岩手)








 煉瓦の建物があると知って訪れた旧東和町土沢。 目的の建物は花巻市役所の東和総合支所に向き合う形で建っていました。 いくつかの資料をあたりましたがこの建物に関する情報は見つけられず、外観デザインなどから大正末から昭和初期頃に建てられたものではないかと思います。 折りしも「アート&クラフト フリーマーケット土澤」というイベントが商店街で開催されており、そのイベント会場のひとつにもなっていた建物の内部を見学する事が出来ました。 中はガランとしていてパイプ椅子が置かれるだけでしたが、左の奥の方の大きな味噌樽の後ろに「篠原金庫株式会社製造」とエンブレムの入った金庫を発見。 こぢんまりとした建物とはいえ銀行の金庫としてはちょっと小さ過ぎるような気もしますが、果たしてこれは昔から使われてきたものなのでしょうか。  岩手県花巻市東和町土沢  10年10月上旬

 ※現存せず。


旧名手郵便局

2010-11-11 18:54:00 | 奈良・和歌山



 大和街道の宿場町・名手(なて)市場は明治から昭和にかけては近辺で銅山が経営され、そこで働く鉱夫達で町は賑わいました。 この旧郵便局は昭和3(1928)年の建築、2階は電信電話業務に使用され往時には50人程の職員が机を並べて仕事に勤しむ姿があったそうです。  和歌山県紀の川市(旧那賀町)名手市場  07年08月中旬

 ※参考 『和歌山県の近代化遺産』 2007 

大社高校 いなさ会館

2010-11-10 19:29:27 | 島根・鳥取





 入母屋屋根の和風建築に巨大な玄関ポーチや上げ下げ窓を組み込んだこの建物は、旧制島根県立第三中学校講堂として明治34(1901)年に建設されたもの。 内部は腰板張りで上部は漆喰仕上げ、天井は格天井で奥には奉安庫も設置されているそうです。 昭和55(1980)年の校舎移転によりこの建物も移築され、その際に解体された旧校舎の玄関ポーチを正面に合体し窓ひとつ分だけ建物の長さを寸詰めされました。 県内で唯一、体育科がある高校らしく、休日でも部活動に汗を流す生徒が多くて皆非常に礼儀正しかったです。  島根県出雲市(旧大社町)北荒木1473 大社高校内  05年09月下旬他

 ※参考 『島根県の近代化遺産』 2002

日本基督教団 郡山細沼教会礼拝堂

2010-11-09 07:11:24 | 南とうほく (宮城・山形・福島)




 クリストファ・ノッス宣教師を工事主として昭和4(1929)年に建てられた礼拝堂。 昭和31(1956)年に2階からの出火で半焼し内外とも復旧工事を受けています。 現在の建物の外壁は白色で平滑なものになっていますが、古写真を見てみると濃淡のある立体的な壁面で大変趣深い建物であった事が見てとれました(白黒写真なので色までは判別出来ず)。 設計者は不明ですが同一教区内の建物設計は同一人物に任せるのが慣例で、県内の日本基督教団の教会を担当したのがヴォーリズであった事からこの建物も彼の設計である可能性があるそうです。  福島県郡山市細沼町8-12  07年11月上旬

 ※現役の教会です。 見学の際はご配慮願います。
  参考 『福島県の近代化遺産』  2010

旧長崎警察署

2010-11-08 07:10:10 | 福岡・長崎・佐賀






 小雨まじりの長崎の空、宿泊したホテルの向かいにあったこの建物はかつての長崎警察署、現在は長崎県庁第3別館として使用されている大正12(1923)年築の建物です。 平面プランはL字型で角地の部分に玄関を設けて上部を塔屋状に建ち上げたスタイル、一つ目の怪人のようにも見える丸窓が一際異彩を放っています。 長崎の被爆建造物にも指定(Dランク)されてる建物ですが、隣接する長崎県庁の建て替え(新築移転?)計画を見てみると敷地は史跡として将来的には刷新されてしまいそうなニュアンスが伝わってきて、この建物も同時にお払い箱にされてしまいそうな予感もあります。  長崎県長崎市江戸町2-1  09年12月下旬

旧豊田喜一郎邸

2010-11-01 20:30:42 | 愛知・岐阜


 発明王・豊田佐吉の長男であり、現在のトヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎(1894~1952)の別荘として昭和8(1933)年に名古屋市南山町の丘陵地に建設されたもの。 3階建てのように見える半地下部分とガラス張りの大きな温室が特徴的です。 昭和8年というのは喜一郎が佐吉の創業した豊田自動織機製作所内に自動車部(トヨタ自動車の起源)を設置し、車造りに本格的に取り組んだ時期と重なります。 研究開発に日夜没頭する傍ら、休日にはこの別荘でくつろぎ温室で草花を愛でるといったような姿が想像出来る暖かな建物に思えました。  愛知県豊田市池田町南250  07年09月下旬他


 現在はトヨタ鞍ヶ池記念館の敷地内に移築。 移築の様子は館内でビデオ放送されていますが物凄く大変そう。


 設計者は前回も紹介した鈴木禎次です。


 手作り感が伝わってきます。


 玄関ポーチも適度な包まれ感が心地良い。






 ポーチの上部をレリーフが飾る。




 温室内。 緑溢れる場所に建っているのが分かるでしょうか。






 青と白の日除けテントが可愛らしい。 小粋なフレンチやイタリアンレストランみたい。


 半地下部分の壁には自然石(?)が所々に埋め込まれています。






 宮崎アニメとかにも出てきそうな建物。 定期的に一般公開もしてますが内部撮影不可というのが残念でした。


 ※参考 名古屋市東区・文化のみちエリアにある旧豊田佐助邸(大正12年)。 佐助は佐吉の実弟です。


 鈴木禎次設計の旧中埜家住宅(明治44年)。 愛知県半田市。


 同じく鈴木禎次設計(実地設計・星野則保)の旧諸戸精太郎邸洋室(大正6年頃)。 三重県桑名市。