旧八幡郵便局

2013-06-22 16:15:37 |  滋賀県


 明治42(1909)年に当地の素封家・小西家によって建設され、大正10(1921)年に既存の町屋の前面を増改築する形で完成した郵便局舎。 設計は近江八幡を拠点に活躍した米国人建築家(後に帰化)W・M・ヴォーリズによるもので、昭和36(1961)年に郵便局が移転した後は一時的に別の用途に使用され、その後は長い間放置され玄関部分が取り壊されるなど建物は荒れていました。 しかしその状況を危惧する有志達6名によって始められた保存運動によって少しづつ整備・再生工事が行われ、現在は広く一般に開放されるまでの状態に戻っています。  滋賀県近江八幡市仲屋町中8  07年11月下旬他

 ※参考『ヴォーリズ建築の100年』 2008
    『湖国のモダン建築』 2009



 正面外観。 スパニッシュに和風を加味した折衷様式になるそう。


 平成16(2004)年に復元された玄関(庇)部分。 他の部分と見比べるとまだ少し新しい感じが残っていました。


 ここにも円弧状の庇。


 軒の一部が途切れ、その部分を破風状に立ち上げる。 中央の装飾は…


 関西学院の本部棟(昭和4年・1929)などに似たものでした。


 こちらは経済学部。


 旧八幡郵便局に戻って室内の木製カウンター。


 内部も自由に見学出来ます。


 天窓があって奥の方も明るい。






 この部屋は無料の休憩所になっていました。




 郵便局時代の窓口。


 

 ドアノブは紫色のクリスタル。




 室内にはアンティークショップがあって絵葉書なども売られています。


 室内を通り抜けて建物裏手へ。


 2階への階段。




 上っていく。


 クランクを抜けて。




 天窓部分。


 2階は主に電話の交換室で、現役当時は10人余りの若い女性がここで働いていたそうです。


 今は各種資料展示室。




 

 活気に満ちた華やかな仕事場だったんでしょうね。
 

 ヴォーリズの結婚式の写真が飾られていました。 大正8(1919)年、夫・メレル38歳、妻・満喜子35歳。 東京の明治学院チャペルでの幸せの一コマ。




 局長の小西氏は、建築家になる前の英語教師時代のヴォーリズの教え子でした。
 

 ヴォーリズ建築を愛する人たちの手により、これからも守られていきます。

旧柳原学校

2012-12-07 19:29:48 |  滋賀県


 日本初の近代的学校制度を定めた学制の発布(明治5年・1872)から4年、明治9(1876)年12月に新儀村(現在の高島市新旭町)の太田神社境内に建てられた小学校。 明治39(1906)年に近くに尋常高等小学校が設立された事から学校としての役目を終え、以降は地区の区長事務所として使用されました。 昭和34(1959)年に擬洋風建築としての価値が認めら県文化財の指定を受け、同45(1970)年に近江風土記の丘の建設に伴い現在地に移築されました。   滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6678(近江風土記の丘)  07年11月下旬

 ※参考『街角ルネサンス 湖国に息づく西洋建築』 1986
    『明治初期の擬洋風建築の研究』 1999
    『湖国のモダン建築』 2009



 建物右手に入母屋屋根の玄関を持つ和風部分があるのは、校舎建築に際して太田神社社務所の古材を使用したため。


 学校建設にあたっては地域住民の教育に対する熱心な要望が結実したものとみられる。 明治7(1874)年3月25日から建築費用の募金が始められ、翌8年5月には255円14銭集まり建設に至った事が当時の資料から窺い知れます。 


 棟札から工人(棟梁)は清水吉平という事が判明。




 昭和35(1960)年に内外の修理が行われ、移築時にも当初の姿へ復原がなされています。


 2階へ上がる階段はハシゴの様な急角度、しかも微妙に湾曲していて子供たちの昇降には向きません。 2階は戸長などが詰めていたものと推測されるようです。




 和風部分は畳敷き。




 2階にはベランダが廻り屋根には太鼓楼。 昭和3(1928)年鋳造の鐘も太鼓と共に吊るしてあったそうです。




 文化財に指定されなければ残らなかったといわれるほど修理前は老朽破損が酷いものでした。


 棟梁の清水吉平は恐らく京都へ洋風学校・役場の視察へ赴き、見聞してきた事を自分なりに解釈してこの学校建設に携わったと見られています。 教育へとかける地域の思いが一つになってこの建物に込められているのを感じました。

彦根地方気象台

2012-06-10 16:21:03 |  滋賀県


 明治26(1893)年に開設された彦根測候所の2代目庁舎として昭和7(1932)年に建設。 設立時は県立の測候所でしたが昭和15(1940)年に国に寄付され、同・32(1957)年に地方気象台に昇格して現在に至っています。  滋賀県彦根市城町2-5-25  09年10月上旬





 表札は「氣象台」の文字が入っているので昭和32年以降の物と思われます。


 戦前築の気象台(測候所)の建物は横浜・水戸・広島などに現存。 前橋も戦前築のようですが文献ではまだ未確認です。 


 昭和42(1967)年に改修され現在の外観になっていますが、建設当初はタイル張りだったそう。


 良く見ると単なるアーチではなく放物線アーチ。 鹿児島地方気象台などと同じく表現主義の手法が用いられています。


 背面側。 中央は1階から塔屋までをつなぐ階段室。


 放物線アーチの下、2階の中央の窓は改修前は2連の縦長窓になっていました。

旧東櫻谷村役場

2010-10-01 19:09:17 |  滋賀県


 明治27(1894)年から昭和30(1955)年まで蒲生郡に存在していた東桜谷村の村役場として昭和11(1936)年に建設されたもの。 竣工年以外の建物データが無いので詳しい事は分かりませんが、近隣5村と共に日野町と合併してからは役場の支所か、それに準ずる公的な施設として使われていたのではないかと思います。 訪問時は扉には鍵が掛かり人の気配は無し、半ば放置された建物のようにも見えました。  滋賀県日野町中之郷  10年09月中旬

 ※11年06月追記  訪問直後に内部の一般公開がありその後解体されたようです(未確認)。



 北東側から。 塀の一部が崩され敷地内に放置されている様は、さながら廃墟物件の匂い。


 この塀や玄関扉の窓の桟など、細部に洒落たデザインを施していて設計レベルは低くなさそう。


 「蒲生郡東櫻谷村役場」のプレートが鈍く光る。 対になる側は「東櫻谷村各種團体事務所」と刻まれています。


 窓の上のマークは村章でしょうか。


 腰部分などに貼られたタイルはスクラッチタイルではなくて焼き豆腐の表面のような風合いのもの。


 持ち送りにサクラの花びら・・・




 滋賀県内の役場や公民館など、公共施設の屋根にはこのようなサイレン(?)が載っているのを良く見ます。


 横の窓から。 腰板が高い位置まで貼られた部屋。


 隣りの部屋は雑然とした様子。




 後ろに平屋の建物が接続。


 裏手から敷地全体を望む。 同じ屋根瓦が並び、建物に一体感を生んでいます。


 さようなら。 もうこの建物に会いに行く事はないでしょう。

鳥居本駅

2010-09-29 21:43:50 |  滋賀県






 昭和6(1931)年開通の近江鉄道・米原~彦根間に設置された駅で、何度も補修を続けながら開業当初より使用されているという小さな駅舎です。 赤い洋瓦を葺いた腰折屋根と、かつて使われていたというストーブ用の煙突が建物を山小屋のようにも見せ個性を演出しています。 ガラスの欄間(?)のアーチをくぐってみれば内部は小屋裏を見せた高い天井空間。 縦方向にとられた窓によって窮屈さを感じさせず、小さな建物を明るい空間に仕上げていました。  滋賀県彦根市鳥居本町647  09年10月中旬


 ※おまけ  こちらは駅を出てほんの少し歩いた所にあるT邸。 案内書きによるとT家は代々、鳥居本宿の本陣を務めたそうで、この建物は昭和10(1935)年頃にヴォーリズの設計により建てられたと記してあります。


 煙突がヴォーリズっぽい?


 こちらはT邸から少し南に行った所で見つけた建物。 現在は個人邸のようですが元は何かの事務所建築だったのではないかと思われます。 正面側に貼られた茶系のタイルと歯型の装飾が特徴的。


 写真が一部大きくなります。

旧船木郵便局

2010-09-26 19:49:57 |  滋賀県





 現局の東隣り、琵琶湖を廻る湖周道路から一本入った通りに面して建つかつての郵便局舎(昭和14年築 1939)。 この時代の局舎としては標準的な下見板張りの建物ですが、窓は引き違い窓、玄関ポーチと寄棟の屋根には和瓦を載せて洋風の要素はかなり薄めたものとしています。 今回の探訪で高島市内には高島(山の方で駅から遠い 詳細不明)と新儀(新旭 昭和4年)の旧局舎の現存を確認出来ました。  滋賀県高島市安曇川町南船木  10年09月中旬

山之上公民館

2010-09-21 19:36:39 |  滋賀県




 
 アウトレットモールの開業で激熱な(?)滋賀県竜王町にあるこの下見板は、大正14(1925)年完成の㈶米久報徳会事務所だった建物。 門構えも中々に立派で白色に仄(ほの)かなブルーの色使いが街並みに一服の清涼感を与えるような存在です。 このレベルの建物が去年刊行の『湖国のモダン建築』にも掲載されていなかったのは少し不思議なくらいに思えました。  滋賀県竜王町山之上3408  10年09月中旬





 ※12年02月追記。 米久とは苗村の竹中久次が明治にいち早く近江牛の販売を開始した時の牛肉店の屋号だそうです。

旧御園村役場

2010-04-10 07:00:00 |  滋賀県





 旧御園郵便局を探していて見つけた建物。 これがそうだと思って近づいたら玄関脇に「かきみその役場」と看板が掛かっていて違う事に気付きました。 帰宅して調べてみたら明治41(1908)年築の旧村役場という事が分かり、まちづくりの活動拠点としてごく最近に改修され活用されるようになった事も知りました。 建物は和洋折衷で玄関ポーチは入母屋屋根の重厚感ある造り、1階の窓の上にはペディメント風の装飾もあって外壁はペンキも塗られていない素朴な風合いが特徴になっています。  滋賀県東近江市林田町1223-15  10年03月下旬

 
 ※おまけ こちらが本来の目的だった旧御園郵便局(昭和9年築 1934)と思われる建物。 旧村役場の斜向かいの辺り、現在は個人邸となっています。

明治の学舎と太鼓堂

2010-04-03 21:09:30 |  滋賀県


 偶然入り込んだ江頭の街角で見つけた建物。 見つけた時は昔の役場の建物かと思いましたが、説明看板には明治10(1877)年築の旧至誠学校と説明されていました。 初めて聞く名前で全く知らなかったのと、こんなに古い学校が残っていたのに少々驚きです。 まだまだ知らない建物はあるものですね。  滋賀県近江八幡市江頭町  10年03月下旬



 むくりの付いた玄関ポーチ。 


 2階のベランダの処理の仕方は手慣れていない感じ。


 向かいにある太鼓堂。  ※訂正しました。


 


 今回は時間が本当に無くて細部写真まで撮っていません。 資料も何も無いので説明看板をそのまま公開。。。

日本基督教団 朝日教会

2010-03-12 07:13:54 |  滋賀県




 琵琶湖の北東、旧湖北町に建つ教会(昭和27年頃築 1952頃)。 大変に質素な建物で建築的には上質なものではないかも知れませんが、時代背景や教会が建設されるまでの経緯を考えると決して無視出来ない建物です。 設計はヴォーリズ建築事務所、施工は地元の北川某といわれ、内部にある木製の折りたたみ椅子はヴォーリズ建築事務所を介して進駐軍より購入したものという事です。  滋賀県長浜市湖北町海老江248  09年10月中旬


 ※おまけ 湖北町山本にある個人邸(?)。 近くにある朝日郵便局の旧局舎と思われます(詳細は不明)。


 旧湖北町農協尾上支店(ガレージ)。

旧醒井郵便局

2010-03-11 07:06:54 |  滋賀県













 大正4(1915)年に建てられたヴォーリズ建築の局舎を昭和9(1934)年に改装。 下見板張りの外観をモルタル塗りにするなどの改変を受けているようです。 また、完成時には郵政省に模範局舎として紹介された為、建て替え時の参考にと全国から郵便局長さんが見学に訪れたとのエピソードも伝わっています。 局舎裏の建物(局長の自宅)も純和風のヴォーリズ建築という情報がありますがそちらは確認し忘れました。。。 現在この建物は醒井宿資料館として公開中です(2階のみ有料)。  滋賀県米原市醒井592  09年10月中旬
 
 ※参考 『街角ルネサンス ―湖国に息づく西洋建築―』 1986 

旧五箇荘郵便局

2009-12-24 07:06:51 |  滋賀県



 五箇荘の旧道沿いで見つけたこの建物は大正14(1925)年築の旧郵便局舎でした。 見つけた時は知らない建物だった事もあり、妙に直線的でカクカクしたデザインから金融機関等のカタい商売の建物だろうと予想していましたが見事にハズレ。 良く見れば傍らに真っ赤な郵便ポストが暗示的に据え置かれていたのですが、旧郵便局舎というと下見板の建物のイメージが強かったので完全に見落としていました。 建物は木造ですが外壁に川崎鉄網を用いて耐火性を飛躍的に向上させているとの事。 備品まで含めて工費は約8100円(当時)という記録が残っています。  滋賀県東近江市五箇荘竜田町 08年05月下旬

 ※現在は個人邸ですので見学の際はご配慮願います。


滋賀中央信用金庫 銀座支店

2009-12-18 07:08:05 |  滋賀県




 旧明治銀行彦根支店(大正7年築 1918)。 昭和7(1932)年に明治銀行が破綻した後は様々な用途に転用され、戦後は病院としても使用されていました。 昭和33(1958)年に彦根信用金庫が購入し、平成16(2004)年の近江八幡信用金庫との合併で現在の滋賀中央信用金庫に至っています。 小屋組みに改造の跡が無い事から、3つの破風が特徴的な屋根形状は建設当初からのものと考えられているそうです。  滋賀県彦根市河原3-1-26  09年10月上旬

旧淡海銀行石部支店

2009-10-14 07:10:19 |  滋賀県



 昭和2(1927)年築の小さな旧銀行支店。 柱の部分に百合の花のような模様がデザインされています。 伝・ヴォーリズ建築ですが、同事務所の作品リストには記載が無く、作風などからも少々疑わしい点があるようです。  滋賀県湖南市(旧石部町)石部中央  08年05月下旬

 ※現在は個人邸ですので見学の際はご配慮願います。
  参考 『滋賀県の近代化遺産』 2000 

 ※おまけ  同じ並びで見つけた山元楽器店石部会場。 詳細不明ですが旧郵便局のようにも感じました。


江北図書館

2009-06-22 07:05:19 |  滋賀県




 寄棟屋根・4連アーチ窓の旧伊香郡農会庁舎の建物(昭和12年築 1937)。 今は財団法人が運営する現役の図書館だそうです。 写真をぼんやり眺めていたら、フッと、旧東川手村役場を思い出してしまいました。  滋賀県木之本町木之本1362  08年07月下旬

 ※参考 『湖国のモダン建築』  2009