旧五箇荘郵便局

2009-12-24 07:06:51 |  滋賀県



 五箇荘の旧道沿いで見つけたこの建物は大正14(1925)年築の旧郵便局舎でした。 見つけた時は知らない建物だった事もあり、妙に直線的でカクカクしたデザインから金融機関等のカタい商売の建物だろうと予想していましたが見事にハズレ。 良く見れば傍らに真っ赤な郵便ポストが暗示的に据え置かれていたのですが、旧郵便局舎というと下見板の建物のイメージが強かったので完全に見落としていました。 建物は木造ですが外壁に川崎鉄網を用いて耐火性を飛躍的に向上させているとの事。 備品まで含めて工費は約8100円(当時)という記録が残っています。  滋賀県東近江市五箇荘竜田町 08年05月下旬

 ※現在は個人邸ですので見学の際はご配慮願います。


進徳海運

2009-12-23 09:34:42 | 岡山・広島・山口




 豊田銀行の支店として大正4(1915)年に建設。 業績不振により豊田銀行は広島銀行と合併し大正5年に解散、この建物は広島銀行の支店として用いられ、昭和49(1974)年に銀行が新築移転すると現在の所有者に昭和51(1976)年に売却されました。 平成8(1996)年の改修により内部は一新されているようですが外観は比較的に旧状を留めている様子。 さすがに1階左手のシャッター(ガレージ?)は改変でしょうが、玄関上の半円ペディメントと持ち送り、1・2階で様式の異なる柱頭飾りなどに銀行時代を彷彿とさせる華麗な装飾が残っています。  広島県東広島市安芸津町三津4143  08年05月上旬

 ※参考 『広島県の近代化遺産』 1998

 ※おまけ 安芸津駅の南側、国道185号線沿いで見つけた建物。 調べてみたら昭和9(1934)年築の旧前田化学工業事務所(現・三協化成安芸津工場事務所)のようです。

上垣医院

2009-12-22 07:09:07 | 京都・兵庫





 病院建設にあたり最新の医療機器を備えると共に地元の大工を東京まで下見に行かせて建てたと伝わる洋風医院(昭和5年築 1930)。 1階は全て洋室、2階には11の和室が設けられ、そのほとんどの部屋に床の間があるそうです。 個人医院としては大きい建物で維持していくのは大変そうですが、玄関前に飾られたお花などを見れば愛情を持って大切に使用してきた事は容易に想像できます。 板張りの平屋建ての建物はこの医院の裏側にあったものですが、もしかしたら全然関係ない建物かもしれません。  兵庫県朝来市和田山町和田山47  08年10月中旬

法華経寺聖教殿

2009-12-21 07:11:06 | 埼玉・千葉






 法華経寺は日蓮の有力信者であった富木常忍(とき・つねのぶ 1216~1299)が邸内に建てた法華堂を始まりとする日蓮宗の中心寺院。 聖教殿は法華経寺に伝わる『立正安国論』や『観心本尊抄』(共に国宝)といった寺宝を収蔵する宝蔵として昭和6(1931)年に完成しました。 耐震耐火を考えたRC造(SRC造とも)の建物は伊藤忠太の設計、構造設計は東大本郷キャンパスの建造物群で有名な内田祥三が行っています。 モザイクタイルの貼られた丸屋根に配された様々な霊獣が如何にも伊藤忠太・・といった印象で、馬・牛二頭立ての柱頭飾り(?)は非常にユニークです。 一年に一度、11月3日の文化の日に行われる「お風入れ」で内部公開を行っているそうです。  千葉県市川市中山2-10-1  09年02月上旬



明石小学校

2009-12-19 15:00:00 |  東京都


 大正15(1926)年築。 関東大震災(大正12年)後の復興事業により建てられた117の「復興小学校」のうちの一つ。 復興小学校の中でも早い時期に建設されたものの一つで、柱型や庇の角を落とした柔らかな丸みが子供達への優しい気遣いを感じさせます。 今も現役の小学校として立派に機能していますが、同じ復興小学校である中央・明正小学校と共に中央区による改築計画が進められているようです。 名のある建築家の作品ではありませんし(東京市臨時建築局学校建設課による設計)、築後80年を超えてコンクリートの劣化や教室の狭さなどが問題となっているようですが、町単位の共同体意識の低下が叫ばれる都市部においては、地域住民の多くが通って様々な時代の記憶が堆積した古き小学校の存在はかけがえのないものだと思います。 近くには聖路加国際病院旧棟やカトリック築地教会といった歴史的建造物が残り、明石小と一体となった景観は地域の誇りとして胸を張れるべき存在。 安易な形での決着はして欲しくありません。  東京都中央区明石町1-15  09年11月中旬

 ※現存せず。





































滋賀中央信用金庫 銀座支店

2009-12-18 07:08:05 |  滋賀県




 旧明治銀行彦根支店(大正7年築 1918)。 昭和7(1932)年に明治銀行が破綻した後は様々な用途に転用され、戦後は病院としても使用されていました。 昭和33(1958)年に彦根信用金庫が購入し、平成16(2004)年の近江八幡信用金庫との合併で現在の滋賀中央信用金庫に至っています。 小屋組みに改造の跡が無い事から、3つの破風が特徴的な屋根形状は建設当初からのものと考えられているそうです。  滋賀県彦根市河原3-1-26  09年10月上旬

土浦第一高等学校旧本館

2009-12-17 07:06:16 | 北関東3県 (茨城・栃木・群馬)













 旧土浦中学校本館(明治37年築 1904)。 青年建築家・駒杵勤治の現存作品のひとつ。 平面は両翼を後方に突き出したコの字型、左右の塔屋の間に3連のアーチを架けて入り口とし、花弁とも四つ葉ともとれる可憐なデザインで各所を飾っています。 内部は片廊下式で天井が高く、比例して窓も大きく解放感があって古い建物にありがちな湿った暗さは微塵も感じさせないものでした。 建物の内部公開は毎月第2土曜日のみ。  茨城県土浦市眞鍋4-4-2  09年07月中旬他

清水カトリック教会

2009-12-16 07:05:43 |  静岡県






 昭和10(1935)年築の教会。 青空に起立する二つの塔と尖頭アーチ窓・丸窓のコンビネーションが印象的に映ります。 道路側から見ると一段高い位置にあるので大きな建物に思えましたが、実物は意外にこぢんまりとしていました。  静岡県静岡市清水区岡町1-34  09年02月下旬

 ※現役の教会です。 見学の際はご配慮願います。

今庄公民館

2009-12-14 07:14:57 | 富山・福井





 旧昭和会館(昭和8年築もしくは昭和5年築、1933もしくは1930)。 荒物商の息子から身を起こして財を成し、木炭業や各種会社経営、県会議員や村長を務めた田中和吉の寄付によって建設。 彼は「50歳以上は社会に恩返しする」という決意のもと、財産のほとんどを社会教育に費やしました。
 建物はRC造の3階建て、1階部分は半地下のようになっているのでボリューム感のある2階建てのようにも見えます。 後年の改装により装飾的要素の多くは取り除かれてしまったようですが、玄関ポーチのねじり柱や簡略化された柱頭、時計の両側に飾られた付け柱などにその名残を見つける事が出来ます。  福井県南越前町(旧今庄町)今庄75-6  08年07月中旬


 ※おまけ  公民館のすぐ近くにある旧沢崎医院(昭和3年築 1928)。 誰も住んでいらっしゃらないようで玄関に外から板が打ちつけてあります。 今後が心配な状況です。


旧日高郵便局

2009-12-13 15:20:09 | 埼玉・千葉




 国道407号沿いで見つけた建物。 図書館で調べた埼玉県の近代化遺産リストには旧日高郵便局という名前は無く、住所的に旧高萩郵便局(戦前築)というのが該当するのではないかと思われます(確証はありません)。 玄関の張り出し部分のみ外装の仕上げが違うのは後補だから?  埼玉県日高市高萩  08年03月下旬

鷲尾外科

2009-12-11 07:09:18 | 京都・兵庫




 阪神高速神戸線の橋脚と向き合うように建っているこの個人医院は、大正15(1926)年に完成したかつての西尻池公会堂。 縦長の三角出窓や塔屋状に聳えるパラボラアーチが印象的で、同じ清水栄二設計の旧高嶋平介邸(1930)や御影公会堂(1933)と細部の意匠に近似性を発見できるのも面白いと思います。  兵庫県神戸市長田区西尻池町  08年12月下旬

 ※参考 こちらが東灘区にある旧高嶋平介邸(現・甲南漬資料館)。

横浜の小さな西洋館

2009-12-10 07:03:15 |  神奈川県




 起伏に富んだ住宅地をすり抜け、緑あふれるお庭の先に佇んでいたのは小さな小さな西洋館。 大正元(1912)年頃にスワンソンというスウェーデン人(あるいは英国人)の邸宅として建てられたもので、風見を載せたトンガリ屋根が何にも増してメルヘンチックな情景を作り出しています。 スワンソン氏は船乗りだったようで当時の外国人としては中流以下の暮らしぶりだったとも伝わりますが、親子3代に渡ってこの建物で約しい生活を続けていたそうです。 山手の洋館群からも少し外れ、この極東の果ての小さな住まいを拠り所に一体何を想いながら日々の生活を送っていたのだろうか・・・そんな過去への想像ばかりが強く掻き立てられてしまいます。  神奈川県横浜市中区  09年12月上旬他

 ※非公開の個人邸です。 見学の際はご配慮願います。
  
  参考 『残照 神奈川の近代建築』 1982
     『都市の記憶 横浜の近代建築Ⅱ』 1996 

滝乃川学園本館

2009-12-09 07:16:10 |  東京都





 滝乃川学園は明治24(1891)年に石井亮一(1867~1937)により創設された「聖三一孤女学院」を起源とする日本で最初の知的障害者教育・福祉施設。 昭和3(1928)年に建てられた本館は今年修復工事が完了し、 「石井亮一・筆子記念館」としてリニューアルされました。 純白に塗り替えられた建物が創立精神の揺るぎない気高さを表しているように感じます。  東京都国立市谷保6234  09年11月中旬他

 ※竣工年を訂正しました。

織田歯科医院

2009-12-08 19:41:15 | 徳島・高知




 先の大戦による空襲により大きな被害を受けた高知市内中心部に古い建物はあまり残っていません。 高知城近くにあるこの医院の敷地内にも30発ほどの焼夷弾が落ち、そのうち5発が燃え上がったのを懸命に消火してこの建物は焼け残ったとものだといわれます。 建物はRC造2階建て、柱型を浮き立たせ縦方向の直線を強調したものになっていますが、破風のデザインや小さな装飾で直線を崩しファサードは単調さを感じさせないものになっています。 屋上にある小部屋(?)は何の為のものなのか気になりますね。  高知県高知市升形  07年01月元旦

 ※現役の医院ですので見学の際はご配慮願います。

長谷川医院

2009-12-07 18:55:17 | 富山・福井




 明治42(1909)年築という事で、今からちょうど100年前の建物。 元々は当地より西にあった新横江村(現・鯖江市)に建てられていた越前電気の事務所でしたが、昭和9(1934)年に競売に出されたものを競争入札により落札し移築してきたそうです。 病院に転用するにあたって、当初は2棟の平屋建てだった建物を2階建てに改修。 手の込んだ透かし彫りの入った玄関ポーチも建設当初からのものですが、平屋建てよりも2階建てになって却ってバランス的に良くなったそうです。 写真が切れている後方部分にも平屋建ての棟が連なっており、個人病院の規模としてはかなり大きな部類ですが、現役で使用されているだけにメンテナンスも良好で好感が持てました。  福井県越前市(旧今立町)野岡町  08年07月中旬

 ※現役の医院です。 見学の際はご配慮願います。
  参考 『福井県の近代化遺産』  1999