ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

未来よ こんにちは

2017-03-23 21:35:40 | ま行

ワシ、これDVD買う(笑)


「未来よ こんにちは」77点★★★★


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パリの高校の哲学教師ナタリー(イザベル・ユペール)は
人生を折り返した50代。

二人の子どもたちは独立し
同じ哲学教師の夫(アンドレ・マルコン)とは
同士のような関係。

最近は夜中にかかってくる
一人暮らしの母(エディット・スコブ)から愚痴の電話に付き合っている。
母は少し、ボケてきているようだ。

そんな日々でも教師の仕事に情熱を持ち
前向きに日々を過ごしているナタリーだが

ある日、夫に突然
「離婚してほしい」と切り出されてしまう――!


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ミア・ハンセン=ラヴ監督。

またしても登場人物と同じ時間を過ごした気になる、
この監督の不思議なマジックにやられました。


取り立てて大事件も起こらないのに
するすると見て
「ああ、このままこの時間が、終わって欲しくない・・・!」と思うというパターン。

「EDEN/エデン」もそうだったし、
「グッバイ・ファーストラブ」もそうだった。

振り返ってみると
「あの夏の子供たち」からやられてるようだ(笑)

どれも自分とどこか引っかかるようで
実際はビミョーに違うのに、なんでこんなにシンクロ?

この監督の不思議さは、なんだろう?と
このところずっと考えている。


登場人物の心理描写が、とりたててすごーく掘り下げられてるわけでもない。
ただ、とにかく、映画時間が、自然。

シーンのつなぎがうまいのかなあとも思う。
時間の流れが中断されることがないんだよね。
(「3年後」とか、いともたやすく時間が飛ぶのだけど)

とにかく身を任せるのに気持ちいいんです。


プレス資料のインタビューで監督が
「映画というのは私にとって動いている肖像画」と語っていて
「うおぉ、それだ!」とちょっと開眼しましたよ(笑)
なるほど、そんな感じ。

まして、今回はその肖像がイザベル・ユペールだもの。
とにかく見飽きない。


ボケてきた母親の介護に、浮気をして出ていく夫。
ずっと付き合ってきた出版社からも
「もうあなたは古いのよね・・・(面と向かっては言えないケド)」と
見放されてしまう。

スリムな体型を保ちつつも、老いは確実に忍び寄り
確実に時間に追いつかれ、追い抜かれそうになっている50代のヒロイン。
(実際の本人は60過ぎというのがすごすぎるけど。笑)


すべてが「なんだかなあ!」な状況なのに、
でも、彼女は慌てず騒がず、淡々と前へ進むんです。

仲良くなった猫にさえ執着しない。甘えない。
このあっさり感は、達観の域。

そうやって
過ぎていくものを追わず、いまを受け入れ、どんどん身軽になっていく。
そんな彼女が素敵でたまらない。

でもちょっぴり泣いたりする夜もあって
ああ、なんて共感できるんだろう!って。

ずっとこのイザベル・ユペールを見てたい。
この映画時間、終わってほしくない!と思いました。


★3/25(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「未来よ こんにちは」公式サイト

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