ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

クリード チャンプを継ぐ男

2015-12-21 18:41:49 | あ行

「フルートベール駅で」(13年)監督を
信じてよかった~~。


「クリード チャンプを継ぐ男」73点★★★★


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アドニス(マイケル・B・ジョーダン)は
ボクシングへの情熱を持つ青年。

彼の父親は
ボクシングヘビー級チャンピオンだった
アポロ・クリードなのだ。

が、アドニスは父を知らず
自己流でトレーニングをし
メキシコの場末のリングに立っていた。

しかしプロには通用しないと思い知ったアドニスは
かつて父と闘ったロッキー(シルベスター・スタローン)を訪ね、
コーチを頼もうとするのだが――?

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あの「ロッキー」(1976年)シリーズの新章です。

でも
シリーズに詳しくなくても、全然大丈夫。

新しいお話として作られているし
逆にこれを観ると、過去作をみたくなると思う。

「フルートベール駅で」の
ライアン・クーグラー監督×主演マイケル・B・ジョーダンのコンビを
信じてよかったあ!とつくづく思いました。

伝説のボクサーを父に持ち
しかし
自身の生い立ちや父親への不満や怒りを
拳に込めて、吐き出していた若者アドニスが

ロッキーと出会い、指導を受け、
次第に自分で自分を超えていく。

その様子、特に内面のメンタル描写を
押し付けがましくなく描いていて
そこが逆に、グッとくるんですね。

師匠ロッキーとのやりとりにも、
今どきの若者らしいライトさがあったり。

まさか殴り合い(試合だけどね)の最中に
ウルッと泣けてくるとは思いませんでした。


「血のにじむような努力と練習をした」
羽生選手じゃないけれど
人の努力を見ることで
こっちが元気をもらうって、本当にあるんだなあと。

ワシも泣き事言わずにがんばります。
ガッツもらいました。


★12/23(水・祝)から新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国で公開。

「クリード チャンプを継ぐ男」公式サイト
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ひつじ村の兄弟

2015-12-18 20:38:16 | は行

牧歌的なハートウォーミングを期待すると
へし折られます(笑)


「ひつじ村の兄弟」67点★★★☆


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アイスランドの辺境の村に暮らす
羊飼いの老兄弟。

お隣同士な二人だが
弟のグミー(シグルヅル・シグルヨンソン)と
兄のキディー(テオドル・ユーリウソン)は
40年も口をきかないほどに仲が悪い。

そんなある日、グミーは
兄の羊が疫病にかかっているかもしれないと気づき――?


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アイスランド映画といえば
「馬々と人間たち」(14年)
珍ドキュメンタリー
「最後の1本」(15年)

どこか、違う。キテる・・・・・・という印象ですが
本作もやはり予想を裏切ってきます。


自然と動物と人が共存する
アイスランドらしいリアリズムに溢れ、
最後まで目が離せない展開なんですが

いかんせん
ワシには題材が辛すぎた。


主役となる兄弟の仲は想像以上に悪く、
根深くこじれているし、なかなか救いがない。

そのなかで特に弟グミーの“ひつじ愛”
詳細に描かれるだけに、
彼らを襲う運命の容赦のなさ、重苦しさがこたえる。

そして
常に重く暗く立ち込めた空、悲しげな音楽。

そんななかで
賢い牧羊犬を伝書鳩代わりに使うシーンなど、
ちょっとしたユーモアにすがりつく思いでした。

でも、すっごく印象には残ってるんですけどね。


★12/19(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「ひつじ村の兄弟」公式サイト
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ストレイト・アウタ・コンプトン

2015-12-17 23:49:56 | さ行

コンプトン、はカリフォルニア州の街の名前です。


「ストレイト・アウタ・コンプトン」71点★★★★


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1986年。麻薬売買が横行するキケンな街
カリフォルニア州・コンプトン。

黒人というだけで警察から
制裁を加えられるような状況のなか

現状を変えようと立ち上がった
若者たちがいた。

DJのドクター・ドレー(コーリー・ホーキンス)と
作詞の才能に溢れた
アイス・キューブ(オシェイ・ジャクソン・Jr)。

彼らはカリスマ性ある
イージー・E(ジェイソン・ミッチェル)のもと
ストリート発のラップ・グループN・W・Aを結成するのだが――?

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全米で大ヒットした作品。

ヒップホップの世界、全然詳しく知らないのだけど
いままで
ドキュメンタリー映画「アート・オブ・ラップ」(13年)やらで積み重ねてきた話が

「ああ、なるほど!」と
この映画で繋がりました。

1986年の暴力上等!な時代
ギャングや麻薬が絡み
背景にバイオレンスはあるんですが

が、そこばかりを過剰にせず
「才能ある者が、きちんと仕事し努力し、光っていく」という
まっとうな人間の根っこが描かれていて、
想像より、とても感じがいい。

特に素人のワシでも才能の片鱗がわかる
アイス・キューブ役をアイス・キューブを父に持つ
オシェイ・ジャクソン・Jrが演じているというのも
「ほお!」と思いました。


ライブシーンは盛り上がるし
彼らの友情や断絶、
それでも切れない絆、などが青くていい。

黒人VS黒人のギャング世界より、
黒人VS白人の対立のほうがえげつなく、詳細に描かれ

ヒップホップ(ギャングスタ・ラップ)創作の原動力や怒りを
つまびらかにている。

単なる音楽シーンの流行を描くだけじゃない
その部分に
この映画の、大きな意味があると感じました。


★12/19(土)から渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国順次公開。

「ストレイト・アウタ・コンプトン」公式サイト
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マイ・ファニー・レディ

2015-12-16 23:53:02 | ま行

ウェス・アンダーソン×「フランシス・ハ」のノア・バームバックがプロデュース。
これで選んだアナタ、間違いないです!(笑)


「マイ・ファニー・レディ」72点★★★★


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新進のハリウッド女優
イジー(イモージェン・プーツ)は
無名時代の自分についての
インタビューに答えている。

彼女は
ある男性(オーウェン・ウィルソン)との出会いが
自分をシンデレラ・ガールにしたという。

彼女の体験は
一見あり得なさそうで
でも「人生によくある偶然」に溢れていて――?!

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1939年、ニューヨーク生まれの76歳、
「ペーパー・ムーン」(73年)で知られる
ピーター・ボグダノヴィッチ監督が
13年ぶりに撮った作品です。

ニューヨークを舞台に
「え?この人とあの人が同一人物だったの?」とか
「え?ここで会っちゃうの?」とか

まあ
「人生によくある“おかしな偶然”」の見本市のような
大人たちのドタバタ劇で
ウディ・アレン映画みたいで、ファニーでキュート。

「ミッドナイト・イン・パリ」(11年)

オーウェン・ウィルソンが出ているせいも
あるのかもしれません。

クラシカルなホテルを始め
美術センスもグーで

食事をする、というシチュエーションになっても
実際には食事シーンがないというのはこだわりなんだろうか。
なんだか上品だなあと感じました。

主演のイモージェン・プーツは
ブランド「クロエ」や「ミュウミュウ」の広告モデルとしても
活躍する女優。

これまたちょっと昔のスカヨハに
雰囲気が似てるんですよ。

なにかと忙しいこの時期
ちょっとブレイク、ホッと一息、におすすめします。


★12/19(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開。

「マイ・ファニー・レディ」公式サイト
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あの頃エッフェル塔の下で

2015-12-15 23:25:26 | あ行

これは男性には
絶対「あるある」でしょ。


「あの頃、エッフェル塔の下で」69点★★★☆


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外交官で人類学者のポール(マチュー・アマルリック)は
長かった外国暮らしを終え、
フランスに帰国する。

しかし、空港で
「パスポートに問題がある」と止められてしまう。

その理由を探るうちに
ポールは過去を振り返り、
パリでの忘れられない恋を思い出していく――。

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最近だと
「クリスマス・ストーリー」(08年。これは好きだった)
「ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して」(13年)
作品によって、若干振れ幅大きいな、という
アルノー・デプレシャン監督の新作です。


40代の主人公(マチュー・アマルリック)が
空港で止められ
「あなたと同姓同名、おなじ場所で生まれた人間がいる」と告げられる――と
始まるストーリー。


「すわ、ミステリーか?スパイものか?!」という展開に引き込まれるんですが
そうではなく
内容の8割は、19歳で出会った運命の女性エステルのお話。

誰にも甘酸っぱいラブストーリーという
変わった映画です。

特に男性って誰もがこういう
「忘れられない女性」「忘れられない恋話」を
(強力に美化されていても
持っているんじゃないのかなあと思うほど

熱く、ほろ苦く甘く
センチメンタル。

大人が、昔を振り返る、という体なので
アマルリックの大学時代を演じる
カンタン・ドルメールの出番が大半で

彼も初々しく瑞々しくていいんですが

彼が恋する
エステル役のルー・ロワ・=ルコリネとの
相性がとてもいい。

彼女は撮影当時リセに通っていた女の子だそうで
よく見つけたなあ!と思うほど
ファム・ファタル的な魅力がむんむん漂っていて
切なくさせます。

また愛のお話ながら
膨大なセリフと議論があり
「思考させる」要素が大きいところが
フランスらしいんでしょうかね。


★12/19(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「あの頃エッフェル塔の下で」公式サイト
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