大事なことを伝えている作品。
「母と暮らせば」69点★★★☆
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1945年8月9日、長崎。
助産婦として働く伸子(吉永小百合)は
その朝も変わらず、
医大に通う息子・浩二(二宮和也)を送り出した。
だが、午前11時を回ったとき原爆が投下され
医大は一瞬にして粉々になった。
そして3年後。
失意のどん底にいた伸子は
息子の恋人だった町子(黒木華)に支えられ
なんとか平穏な日々を取り戻していた。
そんな伸子の前に
亡くなったはずの浩二が現れて――?!
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終戦70年の節目に
山田洋次監督が撮った作品。
広島を舞台にした「父と暮らせば」の対として
井上ひさしさんが構想していた物語を
その遺志を汲むような形で
監督が作ったそう。
確かに、戦争の悲劇をいまに伝える
とても大切な物語です。
冒頭、長崎に原爆が落ちるまでがモノクロで描かれ、
けっこうドキドキする。
実際、この映画で一番印象に残っているのは
あの瞬間の閃光と
一瞬にして溶けていくインク壺かなとも思う。
で、
主人公である息子(二宮和也)が死んでしまってから
映像がカラーになる。
そこからの展開は
死者である息子と
自然に会話する母(吉永小百合)という
けっこう純然たるファンタジーで
セリフ回しも演劇ふうなところは
映画としてみると、好みが分かれるかもしれません。
でもやっぱり
こういう話は、いまこそ大事なんだよねえ。
そして、ことが舞台っぽくなってくると
「幕が上がる」ではないけれど
がぜん、黒木華さんの演技が際立ちますねえ。
さらに
死者と生者の入り交じった世界観、戦争という背景から
最近の大林宣彦監督作品に
通じるものも感じたり。
なにより
ワシが美しいと思う
“吉永小百合さん”を撮るのは
やっぱり山田洋次監督だなあと思いました。
無理せず、自然にあどけなく、
やっぱり“おかん”なんだよなあ。
★12/12(土)から全国で公開。
「母と暮らせば」公式サイト