ファティ・アキン監督、超・重量作。
「消えた声が、その名を呼ぶ」71点★★★★
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1915年、オスマン・トルコ。
アルメニア人の鍛冶職人ナザレット(タハール・ラヒム)は
美しい双子の娘と妻と幸せに暮らしていた。
だが、街では
政府によってアルメニア人が姿を消している、という噂があった。
そしてある夜
ナザレットは突然現れた憲兵によって連行される。
家族と生き別れ、
奴隷のように働かされる彼に
待っていた運命とは――?!
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昨今の不穏なご時世ゆえ
いまの話なのかと思って観たんですが
1915年の話で、ちょっと驚いた。
100年前にオスマン・トルコで起こった
アルメニア人虐殺事件を語る映画で
ヒトラーが虐殺の手本にしたと言われているほどの
大きな出来事だけど
トルコではタブーとされ
あまり知られていない話だという。
それを
トルコに出自を持つ監督が描くことは
かなりニュースな出来事のようです。
アルメニア人の主人公ナザレットが
(演じるのは「預言者」のタハール・ラヒム)
ある夜、突然に妻と娘と引き離され、連行される。
死しかありえない状況を
辛くも生き延びた彼は
砂漠をさまよい、さらに海を渡り、
生き別れた娘たちを見つけようと旅をする。
「そして、私たちは愛に帰る」(07年)
「ソウル・キッチン」(11年)など
過去作の根底にはあっても、
もっと軽やかさや現代的要素で覆われていたものに
ドシン!と体当たりしたような重厚さで
138分の
それはそれは壮大な旅なのです。
ナザレットの行く手に次々に現れる人々、
次に出会う人は、敵か、味方かと
ハラハラさせる。
そんな彼のサバイバルは
アルメニア人の悲劇の歴史をなぞる旅でもあって
ワシにとっては
知らなかった歴史を知る、映画ならではの旅でもあった。
そんな状況において
彼に助けを差し伸べてくれる人の
ありがたさが、心に染みました。
あと
音楽が重量な要素になるところは
ファティ・アキン監督らしくて
なんかホッとしたなー。
★12/26(土)から角川シネマ有楽町、YEBIS GARDEN CINEMA ほか全国順次公開。
「消えた声が、その名を呼ぶ」公式サイト