ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アルゲリッチ 私こそ、音楽!

2014-09-23 23:16:21 | あ行

サラ・ポーリーの
「物語る私たち」じゃないけど
これも“内輪”ならでこそのおもしろさ。


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「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」72点★★★★


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「別府アルゲリッチ音楽祭」でも知られる
偉大なピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。

もう何年も取材を受けていない彼女の日常や過去を
三女ステファニー・アルゲリッチが追った
とても貴重なドキュメンタリーです。


実の娘だからこそ撮れるものであり、
逆に映画作家としては禁じ手とも言えるけど、やはりおもしろい。

姉妹全員父親が違うとか、家庭の複雑な事情など
スキャンダラスな面にも
アルゲリッチは一生懸命答えようとしているし

なにより撮っているステファニー自身が
母親と自分の父親を理解しようと
手探りしてる感じ。

姉妹や母親が映る
撮りためた昔のビデオ映像の力も強くて、

「非凡な人の娘であることとは、どういうことなのか」という
ステファニーの模索に関心がありました。


しかし
マルタ・アルゲリッチという人は
本当に天才肌なんですなあ。

インタビュー中も「言葉では表せない」と非常に感覚的で、
こういうタイプの人は
実に取材者泣かせではあり(お目にかかったことないけど。苦笑)。

だからこそ、そこに向かい合うのが
娘であることに大きな意味がある。

娘の問いかけに懸命に答えようとする
彼女の真摯さは本物で
それを記録できることの意味は大きいですからね。

なかでも彼女ほどの天才でも感じる
「不安」や「肉体の衰え」についての言葉も
ずん、と感じました。

★9/27(土)からBunkamuraル・シネマほかで公開。

「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」公式サイト


劇場パンフレット用に
ステファニー・アルゲリッチ監督と作家・平野啓一郎さんの
対談記事を不肖ワタクシがまとめました。
「ほお~」な話も満載。
映画と合わせてぜひ、ご覧くだされ~。
コメント
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