ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ピラミッド 5000年の嘘

2012-02-19 23:50:58 | は行

ん?なんか、どっかで聞いたことある
話なんすけど……。気のせい?

「ピラミッド 5000年の嘘」26点★☆

ギザのビラミッドについて
考古学者だけでなく、建築家、物理学者、天文学者など
あらゆる専門家たちの検証と証言をまとめた
ドキュメンタリーです。


冒頭、「根底から覆される人類史!」
「あなたは目撃する!」と、煽る煽る。

それでも学者たちによる
マジメな検証もので

「キワモノ」的ではなく「学術誌」ふうであり
別段、あやしさはない。

まずは
今までの定説「ピラミッドは墓である」を否定するための
疑問点を提議してゆき、

石積みの方法が高度すぎるとか、
現代テクノロジーでも不可能なほどの精度で
ピッタリ北を向いているとか。

さらにナスカの地上絵や、モアイなど
世界の七不思議との関連に言及し、

導き出された答えは……
ピラミッドは墓ではなく○○だった――?!


んー。でもこの説、やっぱり昔からあるよね?
何を示した○○か、は新しいのか。


ま、そうだよね。
とてつもない新発見があれば
速報ニュースになってるだろうし。


「新発見!」というよりも
「ピラミッドとは何か」についての研究の集大成、と
考えればいいかと。


看板が大きすぎたのと
あと、抑揚に欠ける構成も減点。

淡々としたナレーションが
とにかく眠気を誘って困りました。


★2/18から新宿バルト9ほか全国公開。

「ピラミッド 5000年の嘘」公式サイト
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生きてるものはいないのか

2012-02-19 23:26:06 | あ行

「ヒミズ」より、ワシはこっちのほうが好き。


「生きているものはいないのか」60点★★★

石井聰亙改め石井岳龍監督、
10年ぶりの長編映画です。


ある日の午後。

大学キャンパスで
学生たちはそれぞれの午後を過ごしている。

三角関係でゴタゴタしている男女の会話を
うっすら聞いているカフェの店員(染谷将太)。

都市伝説について話している
女学生(高橋真唯)……

だが突然、女学生が胸を押さえて苦しみ出す。
驚く仲間たちもひとり、またひとり倒れていく。


まさか、これが
この世の終末なのか――?!


とにかくなぜか
世の中の人がどんどん死んでいく、同名の戯曲が基で
これもある種の“終末映画”ですね。


血なまぐささは全くなく、

白っぽいキレイな絵のなかで、
みんながバタバタと倒れていくというシュール劇。


染谷将太ほか若手俳優を配した若々しさがあり、
教え子なのでしょうか、
神戸芸術工科大の学生も出演している(これがいい味!笑)


なにより面白かったのは
若者たちのアホな会話(笑)。

ゆるゆると、脱力系な会話の抑揚が実にリアルで
これは現役大学教授の監督ならではの技かも。

そのゆるさと「死」のギャップが
ほの可笑しい。


さらに死にかたは
おそらく、役者一人一人に任せたんだろうな。

「うっ」とさして工夫もなく、
コロンコロンと倒れていく
学芸会っぽさが

意外と印象に残るのでした(笑)


★2/18(土)からユーロスペースほかで公開。ほか全国順次公開。

「生きてるものはいないのか」公式サイト
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昼下がり、ローマの恋

2012-02-17 22:04:11 | は行

ちょっとした“イイ恋の話”が
3本分。

「昼下がり、ローマの恋」69点★★★


イタリアのステキな景色をバックに
「青年の恋」「中年の恋」「熟年の恋」の3つを描く
オムニバス形式の恋物語です。


1話目はトスカーナの田舎町にやってきた
弁護士ロベルト(リッカルド・スカマルチョ)の恋。

2話目は中年ファビオ(カルロ・ヴェルドーネ)の恋と受難。

3話目は教授(ロバート・デ・ニーロ))と
友人の娘(モニカ・ベルッチ)が主人公です。


1エピソードがほぼ40分×3=126分の
明朗会計。

各話しっかり描かれており、見応えは十分。

反面、かなりボリュームがあって、
デ・ニーロ登場までに
かなりお腹いっぱいになってしまった。

1話目の
田舎町にやってきた都会の青年弁護士が、
村人たちに温かくからかわれる話も、

3話目の「熟年の恋」も味があるけど、

恐らく誰もの印象に一番残るのは
2話目の「中年の恋」だろうな。


ある女性の誘惑から始まる中年男の悲劇は、
一番ユーモラスでドタバタで、
イタリアン・ロマコメの真骨頂。

このキャラを主役に1本作れそうだ。

なにより
「ハゲ」をここまで気前よく笑えるのは
ハゲ=セクシー&カッコいいな気風のある
イタリアこそでしょうな。

まあかなりネタにされ、笑われてるので
一概に「カッコイイ」とも言えないみたいだけど……(笑)


★2/18(土)からシネスイッチ銀座ほか、全国順次公開。

「昼下がり、ローマの恋」公式サイト
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TIME/タイム

2012-02-16 23:44:18 | た行

アイデアはおもしろいんですけどねー。

映画「TIME/タイム」37点★★


「時は金なり」が現実になっている
未来を舞台にしたアクションサスペンスです。


ときは近未来。

この世界では
人の成長は25歳でストップし、寿命はあと1年のみと決まってる。

それより長く生きたければ
時間をお金で買わないといけない。

そんなある日、
貧しい「スラムゾーン」の青年ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は
「富裕ゾーン」から来た男に、
ものすごいプレゼントをもらう。

そしてウィルは富裕ゾーンに潜入し、
大富豪の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)と出会うのだが――?!


貧乏人は日々寿命に怯える人生を生き、
富裕層は100年、1000年だって生き続けられる……という


冨の価値が
金から時間になっているという設定。

お金よりもさらにシビアな
格差社会を描いていて

アイデアは実に面白い!なんですが
そこまでで「ハイ、時間切れ~」なのが残念。

いや、もしかして予算切れなのか?(苦笑)

こういう話は
「なぜ、そういうことになったのか?」や
「システム全部をぶち壊す!」くらいのビジョンがないと
スカッとしないのに、

途中から
アマンダ・セイフライド
(あれ?サイフリッドに統一じゃなかったっけ?)と
ジャスティン・ティンバーレイクの
恋愛話にシフトしていって

「え~?」という感じ。


いくらでも壮大になりそうな展開が
逆に映画という媒体によって、
足かせをされてしまった感じでした。

SF小説だったらもっと羽ばたけたかもしれない。


貴重な時間を返せ!……とまでは言わないけどさ(笑)


★2/17(金)から全国で公開。

「TIME/タイム」公式サイト
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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2012-02-15 23:31:13 | ま行

う~ん
難しいなアこれ。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」68点★★★☆

9.11をものすごく個人的な感覚で
表現した異色作です。


11歳の少年オスカー(トーマス・ホーン)は
ちょっと風変わりな少年。

聡明でナイーブで、人との関わりが苦手な彼にとって
父トーマス(トム・ハンクス)は
最大のよき理解者だった。

が、そんな父が
「あのサイアクの日」からいなくなってしまう。

その悲劇から1年。
オスカーは父のクローゼットで、1本の鍵を見つける。

そして彼は
父の遺した「宿題」を解く冒険を始めるのだが――?!


オスカーはおそらく
自閉症かアスペルガー症候群か、という
なかなかに複雑で魅力的な少年。

すごく知能は高いんだけど
人とのコミュニケートがうまくはない。

そんな息子を世界と少しずつ交わらせるため、
父親は常におもしろそうなゲームを彼に仕掛けてた。

父亡き後、
少年は父の遺したメッセージを受けとるべく行動をはじめ、
いろんな人々に出会う。

そして現代の「星の王子さま」の如く、
相手にも何かを与え、また与えられ
成長していく……という話。


9.11の喪失、そして再生を描く手段としては新しく
惹き付けられるものは確かにあって、
2時間9分を飽きずに見ました。

ただ、演出が素直すぎるのか、
セリフが文学的に過ぎるのか

ワシにはちょっとセンチメンタル過ぎて
ピンとこなかった。

こんなにロマンチストなのにな~ワシ(笑)


よくできた話なんだと思うんですが、
ふと
すべては「あのとき」を描くための道具に過ぎないのか?とか
思ってしまうと乗り切れない。


ただ、これはもしかしたら
ある種の性差のせいかもしれない。

男の子と父親の間にある独特の感覚は
女には理解しにくいというのは、悲しいかなありますからね。

息子を持つお父さんとか
もしかしたら爆泣なのかも。
響き方、全然違うかもしれません。


ただ父親との思い出を
「太陽の爆発からの時差」に例えた感覚は
すごくうまいと感じました。


★2/18(土)から丸の内ピカデリーほか全国公開。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」公式サイト
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