1980年生まれの若い監督が描く
「家族」の姿。



「家族X」58点★★★



第20回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)
スカラシップ作品です。
東京郊外の新興住宅地に住む
主婦・路子(南果歩)は

夫(田口トモロヲ)と
フリーターの息子(郭智博)の3人家族。


毎朝、彼女は食卓をキチンと整え、
食器を洗い、部屋を磨き上げる。
しかし家族は食卓を囲むこともなく
会話もない。



路子は日々、空虚な思いを募らせていく。

そしてついに、彼女が壊れるときがやってくる――。

均一で小綺麗な家が並ぶ住宅地の一軒で起こる
ある現代家族の
ディスコミニュケーションな姿を描く作品。

「おっくう」以外の何者でもないように、
無表情に家事をする南果歩を
手持ちカメラで追い、


会社でパソコンと格闘する
田口トモロヲをカメラで延々と追う。



いい役者にたっぷり寄り添った、
ある意味贅沢な映画です。


いかにもありそうなのが
この家族、
夫にも息子にも特に大きな問題があるわけでもないところ。


息子とだって、しようとすれば普通に会話もできる。
そこがミソで
大きなきっかけがないのに
生じる“ひずみ”というのが
現代的なんでしょうね。

また
会社の同僚も、近所の主婦も
口を開けば「大変ね」「厳しいよな」ばかりという
このリアルな閉塞感(苦笑)。

そして相手にかける「大変ね」の言葉は、
実は「うちはまだまし」という
比較や蔑みでもあるという
ひんやりする事実。

こうした現実を寒々と映し出す、
描写力に優れていると思います。


ただ、あまりにも提示される問題が
映される絵そのまま、というのがもう一歩。

うつや過食症、というパーツも、
パターンどおりかなと感じるし、
ラストが尻切れトンボなのも残念。
問題の先に、何を見るか、何を映すか。
次の一歩に期待したいです。


★9/24から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
「家族X」公式サイト