ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

朱花(はねづ)の月

2011-09-03 20:51:09 | は行

河瀬直美監督、最新作です。

「朱花の月」59点★★★


奈良、飛鳥地方を舞台に
万葉集の時代から変わらぬ「男女の業」を描く作品です。


神々の宿る地とされている
“香具山”などを有する飛鳥地方。

染色家の加夜子(大島葉子)は
哲也(ドリアン助川こと、明川哲也)と
夫婦同然に暮らしている。

だが加夜子は哲也の知らぬ間に
幼なじみの木工作家・拓未(こみずとうた)と
愛し合うようになっていた。

あるとき、加夜子が妊娠し、
平和な日常に変化が訪れる--。


河瀬監督、
「萌の朱雀」はすごく好きだったんですが、
それ以降、あまりちゃんと向き合ってません。


男性がどう受け取るかわかんないんですけど、
女から見ると
どんどん業深く、
「よがってる」感じがしてしまって。


で、久々にスクリーンでちゃんと観たのが
この映画。


思ったよりダメじゃなかったんですが(生理的に、ね)、
やっぱり監督独特の感覚が全開。

とらえどころのない、浮遊の作品ではありました。


奈良の山里を舞台に
古(いにしえ)か、黄泉からなのか、
いつの時代も変わらぬ
「男二人がひとりの女を争う」図式の話で


画面からこぼれるような緑の風景、
月夜、棚田……と
神秘的な風景映像はカチッと美しく撮り、

人物が登場するシーンでは
カメラはラフに、と使い分けている。

万葉集の言葉にのせた
“人の営み”の永続性は
描けていると思うけど、

イメージ重視で、話がなおざり、とまでは言わないけど
まあ正直、好みではないんですわ(笑)


特に一見、淡泊そうで
ナチュラルっぽい佇まいで

淡々と血のような赤き布を染め、

どうにも妙な
性的匂いを漂わせる主人公がどうもねー。
(決して悪い意味じゃなく、
なんとなく角田光代氏に似てる(笑))

まあ
映画ってどんな形をとっても
結局、
作り手の「よがり」なのかもとは思うんですよ。


ただ、そうでありつつ
観る人もよがらせるのが、映画ってやつで。


そのためには
どこかにやはり自分の性、生理をも引いて見る、
視線があったほうが、と番長は思う。

ということで、
監督独特の生理が
苦手な人はダメと思います。


★9/3から渋谷ユーロスペース、TOHOシネマズ橿原で公開。ほか全国順次公開。

「朱花の月」公式サイト
コメント (2)
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