ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

幸せパズル

2011-09-30 23:09:34 | さ行

アルゼンチン映画というと
昨年の「瞳の奥の秘密」を思い出しますねえ。
あれはよかったなア。

本作はまたガラリと違い
ホームメイドふうというか、あったかい映画です。

「幸せパズル」72点★★★★


アルゼンチン、ブエノスアイレス。

マリアは
夫と息子と暮らす専業主婦。

特に毎日に不満はないけれど、
夫は常に仕事に忙しく、息子にはカノジョができ、
なんとなく居場所のない感覚を持っていた。

そんなとき
マリアは50歳の誕生日に
ジグゾーパズルをプレゼントされる。

試しにやってみたところ、
これがハマってしまった!

マリアはパズルを通じて
独身の裕福な男性ロベルトと知り合う。

ロベルトはマリアに
驚くべきパズルの才能が
隠されていることに気づくが――?!


ある専業夫婦の目覚め、という仕立て自体は
よくありますが、

本作は39歳・女性監督の筆致が、
おおらかながら実に細部まで見事で
魅了されました。


特に“息子のカノジョ”に対する
母親のなんともいえない感情の表現がうまい!

カノジョに感化され、
息子の食の好みが変わっていくとか

ささやかなエピソードにも
母親の虚無感や寂しさが端的に表れていたり。

ジグソーパズルという題材も面白いですしね。

マリアが家事の最中に
割れたお皿を継ぎ合わせる小さなシーンが、
後にパズルへつながっていくなど、
巧く作っています。


男女の関係がちょっと匂ってきても、
ヘンにドロドロ系でなく
終始サッパリしてるのもいい。


映画は初見では、まず素直に受け取るのがいいと
番長は思っていますが


ひとつだけ
これを知っておくと、印象が変わるよ、
というコトをお教えしちゃいましょう。

と言っても、
私も取材で聞いたんですが(笑)


冒頭に
誕生日パーティーのシーンがあり、
主人公のマリアがメイドさながらに
忙しく立ち働いていて、

「ダンナの誕生日なのか?」と思いきや、
実は自分の誕生日だった
というくだりがあって、

マリアの立場を表すうまいシーンだなあと
悦にいっていたんですが、

『週刊朝日』来週発売号、ツウの一見で
アルゼンチン大使館・文化部の
志和雅恵さんにお話を伺ったところ、

アルゼンチンではもともと
自分の誕生日に自分で客をもてなす、という
習慣があるんですって。

だからマリアの状況は
特別に「悲惨」ってわけではないそうです。

そうかー。
すっかり演出だと思ってました。
詳しくは来週発売の『週刊朝日』で!


何はともあれ、良作なのでぜひ。

特に熟年カップルにおすすめかなア。


★10/1からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

「幸せパズル」公式サイト
コメント (2)
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