ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

彼女が消えた浜辺

2010-09-05 19:00:25 | か行
最近、元気なイラン映画のなかでも
これは出色でした。

「彼女が消えた浜辺」80点★★★★


テヘラン近郊にある浜辺のリゾート地
週末を過ごすために集まった
大学時代の友人たち。

既婚者でグループの中心的存在のセピデーは
新顔の美女エリを連れてくる。

実はセピデーは
仲間のひとりで離婚したアーマドに
エリを引き合わせようとしていた。


仲間たちは楽しい夜を過ごすが
翌日、エリの姿が見えなくなり……?!



いままであまり見ることのなかった
イラン中流階級層の
楽しそうなバカンスシーンに興味を惹かれているうちに

一転して
非常に深みあるミステリーになる
見ごたえある作品です。


ある人物の不在から
物語が動き出すところや

実は誰もいなくなった人のことを
ちゃんと知らない、など
だんだん謎が浮かび上がってくるところ、


事件が起こったときの人それぞれの反応
(逃げようとする人、罪をなすりつける人などなど)

そして
善意が次第に歪んでいくさまなど

人間の心理がしっかり表現されたドラマで
松本清張か宮部みゆきかというほどの
クオリティだと感じましたハイ。


たとえば結婚における定義とか
男女の力加減など
あまり事情のわからない異文化の地だけに
様々な憶測や推理をしてしまうところが
また楽しくもあり。


発売中の週刊朝日「ツウの一見」(9/10号)に
掲載されておりますが

日本在住で(現在はドバイ在住)で
2度の芥川賞候補になった
イラン人作家シリン・ネザマフィさん(美女!)に
電話でこの映画について
インタビューをしたところ

イランでは都市部と田舎の格差が大きく
この映画に登場する人々は
テヘランのような都市部では
本当にごく普通の人々だそう。

若いエリがルイヴィトンのバッグ持ってたりするんですが
それもフツーらしい。


登場するリゾート地にも
いらっしゃったことがあるそうで
へえ~~と思いました。

詳しくは誌面にてぜひ★


ちなみにセピデー役の
ゴルシフテェ・フェラハニーは
「ワールド・オブ・ライズ」で
ディカプリオと競演したあの女性です。


この写真ちょっと老けてみえるけど
イランの女性ってキレイですよねえ。


★9/11からヒューマントラストシネマ有楽町で公開。ほか全国順次公開。

「彼女が消えた浜辺」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エクリプス/トワイライト・サーガ

2010-09-04 17:58:27 | あ行
いや~もたつく恋が
じれったいのお。


「エクリプス/トワイライト・サーガ」68点★★☆


吸血鬼エドワード(ロバート・パティンソン)と
人間の少女ベラ(クリステン・スチュワート)の
禁断の恋を描く第3弾。

エドワードへの愛を確信し
自分もヴァンパイアになることを
決意したベラ。

だがベラに恋する
オオカミ族のジェイコブ(テイラー・ロートナー)は

体温も失い、永遠に生きねばらならない吸血鬼になるよりも
人間のままで愛し合える
自分を選んだほうがいいと迫る。

しかし、そのころ
ベラの命を狙う謎の「ヴァンパイヤ軍団」が
動きはじめていた……。


とりあえずは1本の映画として
完結してくれてホッ。

最近、いきなり「つづく」となる
拍子抜けが多かったからなあ。

「エアベンダー」とか「ソルト」とかね。


しっかしまあ
焦らしてくれますわ、このシリーズは。


吸血鬼になる、
ジェイコブよりエドワードを選ぶ、と
結論は出てるはずなのに、

ジェイコブは全然諦めないし(苦笑)
なかなか敵は襲ってこないし
チューばっかりして遅々として話が進まない。

2時間半のうち2時間10分は
堂々巡りだった気がします。


ただそれも
切ない恋心や、人生の選択の逡巡を
丹念に描いた結果なんですけどね。
ティーンにとってはこんな時間経過
当たり前なのかもしれん。

しかし
そうやってもたついてるうちに
どんどんジェイコブ株が上昇。


特に今回は
ジェイコブのキレイに割れた腹筋とか
体温の温かさとか
狼に変身したときのフワフワ感とかが強調されてて
吸血鬼には分が悪い。


映画のあと
「ぜ~ったい狼くんのほうがいいわよ!」と
力説する女性が多かった。

がんばれ!主役!


まあとりあえず
今回で問題はすべて片付いた……はず。

次こそ最終章?クライマックスに期待!

でもなんかベラ、
吸血鬼にならない気がしてきた……
あ、原作読んでる人、結末言わないでね!!

★11/13から全国で公開。

「エクリプス/トワイライト・サーガ」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミック・マック

2010-09-01 02:26:13 | ま行
「アメリ」の監督最新作です。

「ミックマック」64点★★☆


ミックマックとはイタズラの意味。

ある発砲事件に巻き込まれた
バジル(ダニー・ブーン)は
頭に流れ弾を埋めたまま生きることに。

職を失い、ホームレスになったバジルは
廃品回収をする男と
ちょっと変わったその仲間たちに出会い
一緒に暮らし始める。

やがてバジルは
自分の頭に埋まってる銃弾の製造会社に
復讐のイタズラを考えるが……


この監督が繰り返し描くのは
ある物事が巡り巡って、次の事象を起こす
“因果のおかしみ”。


それをうまく絵で表現するところが
キモであり

今回も「アメリ」同様、絵にもストーリーにも
その楽しさがありました。

とにかくグラフィックセンスは抜群で
特徴ある色調の絵に加え
ガラクタで作ったからくりオモチャなども出てきて
見た目におもしろい。


ただね残念なことに
話がちょっと物足りないというか
はっきりいっちゃうと
つまらないんですよ。


後半ちょっと寝ちゃいました……


さらにテーマに
戦争反対、的な主張が絡まることもあって

主人公がするイタズラと
シリアスの境界がビミョー。
「え……それしちゃっていいの?」的な躊躇があった。

これは
単に主人公がおっさんなので
アメリと違って
イタズラにかわいげがないってことかもしれましぇん。


あ、でもイタズラ仲間たちのなかに
「セラフィーヌの庭」
ヨランド・モローが出てるざんす。

いい味出してるざんす。


★9/4から恵比寿ガーデンシネマで先行上映、9/18から全国で公開。

「ミックマック」公式サイト

今週から
急逝された今野雄二さんのピンチヒッターとして
「週刊朝日」星取りで
末席を汚しております。

今週のお題はミックマック。
こちらも合わせてご覧くださいませ~。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする