ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

悪人

2010-09-07 17:33:03 | あ行
祝・モントリオール世界映画祭、最優秀主演女優賞!
おめでとう、深っちゃん!


「悪人」75点★★★☆


舞台は九州。

長崎の土木作業員・祐一(妻夫木聡)は
車だけが趣味の孤独な青年。

彼は出会い系サイトで会った
福岡のOL佳乃(満島ひかり)と関係を持つ。

その日も長崎から福岡まで
車を飛ばして佳乃に会いに行った祐一は
あるものを目撃する。

数日後、
佳乃が他殺体で見つかった――。

同じころ
佐賀で店員をする光代(深津絵里)は
やはり出会い系サイトで祐一と出会う。

この二人の出会いが
思わぬ展開へとつながっていく……


ミステリというより
ぶっとい人間ドラマです。


いかにもワイドショーネタになりそうな
殺人事件の裏に“あるかもしれない”事情を描き、

「なぜ彼女は殺されたのか?」
「事件を生んだものはなにか?」
「誰が本当の“悪人”なのか?」

を、まなこ開いて見て
しっかり考えよと問うてくる。


舞台となる長崎、佐賀、福岡の
そこに染みついた土地の匂いや

車で片道2時間、なんて距離を
こともなげに往復しちゃうような

田舎という地理的事情がもたらす
一種独特な麻痺感など

事件の背景にある生理的、感覚的な部分が
しっかり描かれているのが
一番の魅力だと思いました。


それに
深っちゃんもいいけど
やっぱり殺されるOL役の満島ひかりが光るねえ。


でもね、つくづく思ったんです。
主人公は本当にどこにでもいる若者たちで
孤独だったり、退屈だったり
ただ田舎でくすぶっているだけなわけですよ。

こんなに平和な日本にいて
フツーに暮らしているのに

まるで捨て猫や捨て犬みたいに
こんなにも惨めで傷だらけなこの有様はいったいなんなのかと。

その様子がリアルなのが
痛いったらない。

結局、
自分が檻だと感じれば
どんな環境でも檻になるってこと。


その閉塞が一番怖ろしいと
身に染みて感じました。


★9/11から全国で公開。

「悪人」公式サイト
コメント (2)
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