ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ANPO

2010-09-19 14:40:41 | あ行

試写で見逃してしまい
すごく見たかった映画に
行ってまいりました~。


「ANPO」73点★★★

日米安保条約が結ばれた1960年を主軸に
その時代をアーティストがどう表現したかを
作品と本人の証言で綴った
ドキュメンタリーです。

これが期待以上におもしろくて
引き込まれました。


横尾忠則、串田和美、朝倉摂、東松照明などなど
早々たるメンバーのインタビューを

ダラダラ流さず
小気味よく刻んでつないであって
非常に見やすい。


なにより政治家や評論家でなく
「アート」にフォーカスしたのが慧眼ですね。


絵や写真は本当に純粋で雄弁だから
「反戦」や「国への怒り」などの主張も
ぜんぜん説教臭くなく
スッと素直に心に入ってきます。


それにしても
安保反対運動に
こんなにも日本人が
エネルギーを持って決起したという事実に
改めて驚きました。


それなのに民意はまったく反映されず
学生たちは「デモが終わったら就職だ」となって

当時の政府によってそのエネルギーが
うまいこと高度経済成長へと誘導されたんだと

映画のなかで半藤一利さんが
おっしゃってましたが


へえ~~へええ。

いまのこの閉塞感や「あきらめ世代」は
戦後、というより
安保闘争を出発点にしてたのか、と

無知だった近代日本の成り立ちが
立ち上がってきた感じがして

すごーく勉強になりました。
見るべき映画と思います。


上映後に監督と朝倉摂さん、富沢幸男さん夫妻との
トークショーがありまして
これも非常に貴重でした。

監督のリンダ・ホークランドさんは
日本で生まれ育ったアメリカ人で
日本語ペラッペラの
粋でいなせなおねいさんという感じ。


海外でも知られてない
戦争や基地問題と向き合った「アート」を
広く紹介したい、というのが映画のきっかけだとか。

成功してると思います。


日米を知る彼女から
「アメリカ人は悲しいかな、その99%がいまだに
“自分たちがもっとも優れており間違っていない”的思想で生きている」
と断言されると
めちゃくちゃ説得力があった。

残り1%のマイノリティには
やっぱりアーティストが多いですよねえ。

ほかに朝倉摂さんが当時
生まれたばかりの赤ん坊をほっぽって
学生運動にのめり込んでたという話にも
ウケましたハイ。

ボーダーシャツに赤ふちメガネ
摂さん、カッコよかったなぁ。


★9/18から渋谷アップリンクで公開中。ほか全国順次公開。

「ANPO」公式サイト
コメント (2)
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