ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ナイト&デイ

2010-09-20 14:21:53 | な行
なんかパーッとした映画を
紹介したくなりました。

「ナイト&デイ」84点★★★★

豪華競演が目玉なこの手の映画って
失敗することも多いんですが

これはですねえ、おもしろかった!


妹の結婚式に出席するため
空港にやってきたジューン(キャメロン・ディアス)
偶然、ロイ(トム・クルーズ)とぶつかる。

さらに機内でも席が近くになり
「あら、ちょっと笑顔がステキ」なんて
一瞬ときめいたジューンだったが

しかし彼女が化粧室から戻ってみると
なにやら様子がおかしい。

乗客は全員ぐったりしてるし
コクピットのドアが開いている。

次の瞬間、ロイはこう言うのだった。
「この飛行機のパイロットは死んだ。ボクが殺したんだ」

ん?この人なんか……変?


善人だか悪人だかわからない
トム・クルーズの逃亡劇
わけのわからないまま巻き込まれる
キャメロン・ディアスという構図。


「チャーリーズ・エンジェル」的
元気でキュートなキャメロン・ディアス

さわやか好青年に見せかけて
なーんかヘンであやしいトム・クルーズという
(いや実際、好青年だと思いますけどね。笑)
我々一般人が二人に対して抱き
かつ期待しているイメージを

うまく利用して役柄をはめたのが大正解!

トム・クルーズ
気張った役より断然こっちがいいよ!(笑)


噛み合わない二人のやりとりもウケるし
アクロバティックなアクションも楽しい。

しかも「寝落ち」(スーッと意識がなくなってフェードアウト
目覚めれば次の展開、ってヤツです)
ストーリーがポンポン進むのも気持ちよくて

「ホラ、こういう映画ですから」と
気が利いてるというか、センスいい(笑)


トム・クルーズを追う謎の男に
「17歳の肖像」のとっちゃん坊や顔
ピーター・サースガードを当てたり

「リトル・ミス・サンシャイン」の
引きこもり青年
ポール・ダノが出てくるなど

脇の配役にも気配りがありました。


ガハハと爆笑し
スカッとできること請け合いです。オススメ!


★10/6(トムの日)(笑)先行上映決定。10/9から全国で公開。

「ナイト&デイ」公式サイト


そうそう9月下旬に二人揃って来日するらしいですよ。
ここで大ウケのやりとりが見られれば
トム・クルーズ株、さらに上昇間違いなし!
期待しましょう。
コメント (2)
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ANPO

2010-09-19 14:40:41 | あ行

試写で見逃してしまい
すごく見たかった映画に
行ってまいりました~。


「ANPO」73点★★★

日米安保条約が結ばれた1960年を主軸に
その時代をアーティストがどう表現したかを
作品と本人の証言で綴った
ドキュメンタリーです。

これが期待以上におもしろくて
引き込まれました。


横尾忠則、串田和美、朝倉摂、東松照明などなど
早々たるメンバーのインタビューを

ダラダラ流さず
小気味よく刻んでつないであって
非常に見やすい。


なにより政治家や評論家でなく
「アート」にフォーカスしたのが慧眼ですね。


絵や写真は本当に純粋で雄弁だから
「反戦」や「国への怒り」などの主張も
ぜんぜん説教臭くなく
スッと素直に心に入ってきます。


それにしても
安保反対運動に
こんなにも日本人が
エネルギーを持って決起したという事実に
改めて驚きました。


それなのに民意はまったく反映されず
学生たちは「デモが終わったら就職だ」となって

当時の政府によってそのエネルギーが
うまいこと高度経済成長へと誘導されたんだと

映画のなかで半藤一利さんが
おっしゃってましたが


へえ~~へええ。

いまのこの閉塞感や「あきらめ世代」は
戦後、というより
安保闘争を出発点にしてたのか、と

無知だった近代日本の成り立ちが
立ち上がってきた感じがして

すごーく勉強になりました。
見るべき映画と思います。


上映後に監督と朝倉摂さん、富沢幸男さん夫妻との
トークショーがありまして
これも非常に貴重でした。

監督のリンダ・ホークランドさんは
日本で生まれ育ったアメリカ人で
日本語ペラッペラの
粋でいなせなおねいさんという感じ。


海外でも知られてない
戦争や基地問題と向き合った「アート」を
広く紹介したい、というのが映画のきっかけだとか。

成功してると思います。


日米を知る彼女から
「アメリカ人は悲しいかな、その99%がいまだに
“自分たちがもっとも優れており間違っていない”的思想で生きている」
と断言されると
めちゃくちゃ説得力があった。

残り1%のマイノリティには
やっぱりアーティストが多いですよねえ。

ほかに朝倉摂さんが当時
生まれたばかりの赤ん坊をほっぽって
学生運動にのめり込んでたという話にも
ウケましたハイ。

ボーダーシャツに赤ふちメガネ
摂さん、カッコよかったなぁ。


★9/18から渋谷アップリンクで公開中。ほか全国順次公開。

「ANPO」公式サイト
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TSUNAMI―ツナミ―

2010-09-16 17:13:14 | た行
メガ津波もすごいけど
ダメ~な感じのソル・ギョングがよかったなぁ。

「TSUNAMI―ツナミ―」68点★★☆


巨大津波=メガ津波に襲われる人々を描く
韓国発の災害パニック映画です。


「デイ・アフター・トゥモロー」「パーフェクトストーム」の
CGプロデューサーが
水のパートを担当したそうで
津波映像は確かにハリウッドに迫る迫力。


数組の人々のエピソードによる「嵐の前の静けさ」描写から
大災害へと流れる展開も
ディザスタームービーの定石に乗っ取った
それらしい作品でした。


キモである
メガ津波が始まるまでが長いんですが(笑)


まあそのなかで
災害映画であることを忘れてしまうような
カップルのドタバタ劇や
家族ドラマがあったり

災害中にも「クスッ」としてしまう
コミカルなシーンがあったり


やはりハリウッドではちょっと味わえない
韓国らしさがあっておかしい。


元漁師のマンソク(ソル・ギョング)と
幼なじみのヨニ(ハ・ジウォン)のエピソードは
ここだけ取り出してもいいんじゃない?ってな
けっこういい人間ドラマになってました。

ソル・ギョングって


モテキの島田役・新井浩文さんにちょっと似てて
いいよねえ。

発売中の「週刊朝日」(9/24号)ツウの一見で
津波研究者の今村文彦教授(東北大学)に

「メガ津波はあり得るのか?」という
お話聞いてます。

この映画、専門家から見てもむちゃくちゃ
リアルだったそうですよ。


★9/25から新宿バルト9ほか全国で公開。

「TSUNAMI―ツナミ―」公式サイト
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ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡

2010-09-08 20:12:35 | は行
音楽がいいので
まずは先入観ナシで見て欲しいと思います。

「ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡」81点★★★★


アフリカ、コンゴの首都キンシャサの路上で
生活する障害者バンドのドキュメンタリーです。


障害者バンドったって
暗いとこなんかまるでナシ!
とにかくメンバーは明るくタフで前向き。
で、音楽がサイコー!

彼らの音楽は
まさに「社会の底辺での体験」から生まれてくるもの。

ビートも歌詞の中身にも
誰の心にも響く豊かさがあってスゴイ。

「人生には運の回る日ってのがある」
とか


「昨日はトンカラ=段ボールで寝たオレが
今日はマットレスで寝てる。

これはお前にもあり得ることなんだ。
人生に遅すぎることは絶対ない

なんてね。

こういう歌を聴いて
暴力や貧困にまみれた路上の人々は
共感し、勇気をもらい

ストリートチルドレンたちは
「ああ、ギャングに入っちゃいかんのか」と
学んだりするんです。

まさに路上の父であり、教育者。


空き缶に一弦張っただけの楽器を自在に操る
天才少年などなど

ゴミためのような環境で輝く
ダイヤモンドな才能に感激します。
すごすぎる!


この映画を撮ったフランス人監督たちの尽力で
彼らの音楽は世界に知られ、
いまや世界30カ国をツアーしてまわる人気者に。

日本ツアーも始まるのでぜひ!
詳細はこちら
ワシも行く予定。


ちなみにバンド名の
ベンダ・ビリリとは「外側を剥ぎとれ」という意味。
中身を見ろ、というメッセージか。
センスいいね


★9/11からシアターイメージフォーラムほか全国順次公開。

「ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡」公式サイト


で、映画を見て興味をひかれたら
コンゴという国の状況についても
知りたくなると思います。

今週の「週刊朝日」(9/17号)ツウの一見に
JICA職員でキンシャサ事情に詳しい
飯村学さんのお話載せてます。


すごくためになると思います。

また発売中の「AERA」(9/13号)には
監督インタビュー記事も載ってます。


いかに現地がヤバいところか
わかると思います。
ぜひ合わせてどうぞ!
コメント (4)
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悪人

2010-09-07 17:33:03 | あ行
祝・モントリオール世界映画祭、最優秀主演女優賞!
おめでとう、深っちゃん!


「悪人」75点★★★☆


舞台は九州。

長崎の土木作業員・祐一(妻夫木聡)は
車だけが趣味の孤独な青年。

彼は出会い系サイトで会った
福岡のOL佳乃(満島ひかり)と関係を持つ。

その日も長崎から福岡まで
車を飛ばして佳乃に会いに行った祐一は
あるものを目撃する。

数日後、
佳乃が他殺体で見つかった――。

同じころ
佐賀で店員をする光代(深津絵里)は
やはり出会い系サイトで祐一と出会う。

この二人の出会いが
思わぬ展開へとつながっていく……


ミステリというより
ぶっとい人間ドラマです。


いかにもワイドショーネタになりそうな
殺人事件の裏に“あるかもしれない”事情を描き、

「なぜ彼女は殺されたのか?」
「事件を生んだものはなにか?」
「誰が本当の“悪人”なのか?」

を、まなこ開いて見て
しっかり考えよと問うてくる。


舞台となる長崎、佐賀、福岡の
そこに染みついた土地の匂いや

車で片道2時間、なんて距離を
こともなげに往復しちゃうような

田舎という地理的事情がもたらす
一種独特な麻痺感など

事件の背景にある生理的、感覚的な部分が
しっかり描かれているのが
一番の魅力だと思いました。


それに
深っちゃんもいいけど
やっぱり殺されるOL役の満島ひかりが光るねえ。


でもね、つくづく思ったんです。
主人公は本当にどこにでもいる若者たちで
孤独だったり、退屈だったり
ただ田舎でくすぶっているだけなわけですよ。

こんなに平和な日本にいて
フツーに暮らしているのに

まるで捨て猫や捨て犬みたいに
こんなにも惨めで傷だらけなこの有様はいったいなんなのかと。

その様子がリアルなのが
痛いったらない。

結局、
自分が檻だと感じれば
どんな環境でも檻になるってこと。


その閉塞が一番怖ろしいと
身に染みて感じました。


★9/11から全国で公開。

「悪人」公式サイト
コメント (2)
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