ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

TOMORROW パーマネントライフを探して

2016-12-18 22:04:23 | た行

ナチュラルライフ系ドキュメンタリー、最近多いけど
なかでもけっこう、出色。


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「TOMORROW パーマネントライフを探して」72点★★★★


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「このままのライフスタイルを続けていくと
人類は絶望する恐れがある」――

2012年に21人の科学者グループが「ネイチャー」誌に発表した論文を
ジャーナリストのシリル・ディオンから聞かされた
女優メラニー・ロランが

仲間たちと解決策を求めて
世界のあちこちで「新しい暮らしかた」を始めている人たちを訪ねる――という
ドキュメンタリー。



いまの地球の状況って
止まらない人間の欲望、環境破壊、絶滅する動物たち――
もううんざりするほど聞かされているほど絶望的。

でもこの映画は
「こういう方向に未来があるんだ!」という希望や未来が
説得力とセンスを伴って
ちゃんと明るく感じられるのがとてもいいんですね。


小難しくなく、勉強になるし、試したくなるし、勇気がもらえる。


まず専門家に
「6歳にわかるように話して」と頼み(素晴らしいことだ!)
ちょこちょこと編集を刻んだりもせず
テーマごとに取材をまとめている。

そうやって
食、農業、経済、動物の生態など
分野ごとに取材をしていくと
実は全部「つながっている」ってわかるんですね。

例えば経済学者が話す
「通過は単一でなく、多様性がないと潰れやすい」は、
多様な品種を植える小規模農家の方策に通じるし

「地域の通貨は地域に回さないとダメ。溜め込んでも利益はない」は
動物界の専門家が語る
「ライオンは空腹の時にしか狩らない。
貯め込んで『これ、幾らで買う?』なんて言わないよ」に通じる。


観る人=教わる人が自分で
「そうか!」と気づく。

これこそが良質な教育ではないか、と思うんですねえ。


ラストを「いい教育」で締めくくっているのもニクい。

フィンランドの校長先生が語る
「子どもたちに一番教えたいこと」には
ジーンと来ました。

1年を締めくくり、新たな2017年に備えるいまこそ
ちょっとの変革、はじめてみたくなるかも。


★12/23(金・祝)から渋谷シアターイメージフォーラムほか全国順次公開。


「TOMORROW パーマネントライフを探して」公式サイト
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