この話を書いた人と、その状況を思うと
複雑な意味が見えてくる、という。
「フランス組曲」69点★★★★
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1940年。
フランス中部の小さな町に暮らすリシェル(ミシェル・ウィリアムズ)は
義母(クリスティン・スコット・トーマス)と
戦地に行った夫を待っていた。
こんな時代にも
小作人たちから容赦なく取り立てをする義母に
リシェルは戸惑いを隠せない。
そしてついにフランスはドイツの支配下に置かれ
リシェルたちは屋敷をドイツ軍の将校に
宿として提供することになる。
やってきた中尉(マティアス・スーナールツ)は
礼儀正しい青年だったが――。
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第二次大戦中、ドイツに占領されたフランスで
主人公の家にドイツ軍の中尉が滞在することになる。
これって2010年にリバイバル上映された
ジャン=ピエール・メルヴィル監督の
「海の沈黙」(47年)を思わせるシチュエーション。
そういえばあの原作も戦時中に書かれたのだった。
で、本作では屋敷に暮らす
若き人妻(ミシェル・ウィリアムズ)と
音楽を愛するドイツ軍の中尉(マティアス・スーナールツ)とが
密かに心を通わせる――というお話。
メロドラマだったら
それはそれで「なーんだ」と思いそうなんですが
そう簡単ではなく
いや実際、
いっそメロメロドラマにしてくれたほうがよかったのに~というくらい
後半のスリルはつらい(涙)
そもそも
敵としてやってきた男と、占領された側として出会った女が
心を通じ合わせたり、愛せるものなのか?と
一瞬立ち止まってしまいそうになるんですが
しかし、この話を書いたのは
ユダヤ人女性作家のイレーヌ・ネミロフスキー。
1942年にアウシュヴィッツに送られ、
39歳の若さで亡くなってしまった彼女の
形見のトランクから娘が見つけた作品なのだそうです。
エンドロールにその遺稿が映るのですが
小さな紙に小さな文字で
びっしりと書かれていて
本当にギリギリのなかで
書かれたものなのだということがわかる。
そんな状況を考えると
相当に複雑な気持ちがこみ上げ、
映画にそれが転移するんですねえ。
作家は
決しておとぎ話ではなく
人間にある“心”や”愛”を信じていたのだろうかと。
物語がさらに沁みてくる体験でした。
★1/8(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
「フランス組曲」公式サイト