ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

世紀の光

2016-01-06 15:13:28 | さ行

今年はアピチャッポン・イヤーですよ。


「世紀の光」70点★★★★


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タイの豊かな森のなかにある病院。

女医のターイ(ナンタラット・サワッディクン)が
青年医師ノーン(ジャールチャイ・イアムアラーム)の面談をしている。

その後、
ターイはある青年に求婚され、
自分のかつての恋愛話を彼に話す。

ターイはある青年に思いを寄せていたが
彼は足の悪いジェン(ジェンジラー・ボンパット)のことを想っていた――。


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「ブンミおじさんの森」(10年)
アピチャッポン・ウィーラセクタン監督が
06年に撮った未公開作品です。

ワシ「ブンミおじさん」は
よくわかんなかった人の筆頭で(笑)
でも魅力はわかる、という感じ。

で、本作はブンミ~より好きでした。

単にワシの波長が
作品に合ってきたのかもしれんのですが

初期作品ということもあり、
彼の作家性の萌芽はありつつも、ストレートで瑞々しい。

わからないところあっても
いやではないのです(笑)

優しく、穏やかで、ユーモアもある。
でも何かヘンだし、やっぱり不思議だ。

前半はタイの森のなかにある
ちょっと古い病院が舞台。

これは両親が医者だったという
アピチャッポン監督の原体験を映してもいるらしい。

そして後半の舞台は
都会の無機質な近代的病院になる。


そしてどちらの空間にも
「別の見えない何か」がやはりいる。

登場人物によって
生まれ変わりのエピソードや、昔の伝説が語られるんですが
その場でサラッと流れていく空気のなかに
何かがいるんだよなあ(笑)。

全然怖くはないんですけどね。
それが、自然というか。
それを感じるのが楽しい映画でした。


前半と後半で
同じ会話が繰り返されたりするシーンを見ながら
ああ、なんかゴダール?とか
そういう感覚なのかなと思ったりもして。

わかんなくても、感じればいいのだなあと。
それにしても、あのラストは何なのだ?(笑)


今年は本作に続いて3月に新作「光りの墓」が公開され、
さらに
福岡や青森、横浜でアートエキジビションがあったり
「さいたまトリエンナーレ」に参加したり
その後は「東京都写真美術館」で個展もあるそうで

まさに
アピチャッポン・イヤー!ということです。


★1/9(土)からシアターイメージフォーラムほか全国順次公開。

「世紀の光」公式サイト
コメント
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