(1)気分が楽しくなる
(2)落ち着いてて、センス良さそうな映画が見たい
そういう思いを、ほぼ叶えてくれる逸品。
「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」80点★★★★
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ブルックリンの景色を一望できる
アパートメントの最上階に暮らす
夫アレックス(モーガン・フリーマン)と
妻ルース(ダイアン・キートン)。
二人にとってここは、理想的な家だったが
古い物件なためエレベーターがなく
夫と愛犬ドロシーも最近はヘトヘトだ。
夫を心配したルースは
エレベーター付きの物件に引っ越すことを決めるのだが――?!
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階段が辛くなった子ナシの初老夫婦。
さらに愛犬の病気や、家を売ることにまつわる騒動うんぬん……と
起こる出来事は決して明るくない。
でもこういう問題は、どこでも誰にでも起こること。
それをこんなにも軽やかに描いてくれるなんて
嬉しいじゃありませんか。
単純に
物件拝見ムービーとしても楽しいしね。
それにこの映画、
夫婦ドラマとしてかなりイイ。
モーガン・フリーマン演じる夫は
ちょっとネガティブで
「先のことを考え、最低を想定し、最善を尽くす」現実的タイプ。
ダイアン・キートン演じる妻は
楽観的でもっとエモーショナル。
二人の性格の違いは
例えば愛犬の治療についてのスタンスなどにも現れて、
すごくリアルだった。
でも意見の違いからケンカになっても
お互い、収まりどころを知っている感があって
そこが
長年の連れ合いの機微、という感じで美しい。
さらに
二人は真にまっとうな人間なんだけど
あらゆる意味で異端児でもあるんですねえ。
1970年代に黒人と白人のカップルだったということを筆頭に
妻は教職につきながら
子どもに恵まれなかったりもしている。
そうした二人の40年の歩みを伝える
回想シーンも効果的に挟まっている。
それに姪っ子役の
「セックス・アンド・ザ・シティ」のシンシア・ニクソンをはじめ、
物件を見に来る人のなかの
「悪い人じゃないんだけど、ちょっとイヤ」な人の描写も
的確すぎて笑っちゃうんです。
そのなかで
夫婦のアパートを「私たちに売って!」とお願いする
レズビアンカップルの手紙に
ホロリとくるのも無理はないわな(笑)
しかし、これも戦術かもしれないんだけどね。
とまあ、すごくいい映画なんですが
個人的に、この映画にハマった理由は
「いまこの歳で観た」ということが大きいのかもしれない。
歳を取ると
例えば駅の人混みのなかで
すれ違う一人一人の行動や、本当に些細なことが
ストップモーションのように
見渡せるようになってくるんですよ。
若いころには、そんなことなかったんだけど。
この映画には、まさにそんな
大勢の人の行動が、見えすぎてしまうような感じがあって
共感できる映画だったんですねえ。
さらに
驚くことに、この二人にはモデルとなった夫妻がいるそうですよ。
いいですねえ。
おすすめです。
★1/30(土)からシネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国で公開。
「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」公式サイト