ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

その夜の侍

2012-11-13 12:04:16 | さ行

力作と思う。
好きだ。

「その夜の侍」77点★★★★


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東京のはずれ。

誰も見ていない田舎道で、
ひき逃げ事件が起こる。

運転していた木島(山田孝之)は
倒れた女性(坂井真紀)を助け起こすでもなく
その場をさっさと離れる。

女性は、
小さな鉄工所を営む中村(堺雅人)の妻だった・・・。

5年後。

最愛の妻を失った中村は、
犯人に復讐を誓う・・・。

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冒頭、ギラギラと照りつける白昼に、
ただならぬ形相をして現れる堺雅人からしてすごいんですわ。

いやな汗に、レジ袋からは包丁。
「夜の」なのに、炎天下から始まっているのもトリッキー。

そして説明なしで時間軸を遡り、
事件の発端を見せる。


妻をひき逃げされた夫(堺雅人)
みじんの反省もないひき逃げ犯(山田孝之)

被害者の復讐心と、
加害者の無軌道な残虐性が、

それぞれ逆ベクトルの負と狂気へと突き進んでいく様子が、
日常の延長線上に描かれる。

登場人物の行動も、起こる出来事も
日常のなかでは劇的なのに、全てがあり得ることだと思わせる
手の込んだ造型がいい。

特に山田孝之演じる加害者男の振る舞いと性質は、
完全に“いじめ首謀者”そのもので
そら恐ろしいす。

そこはかとないシュールとユーモアを交え、
単なる復讐劇にもしない。

登場する全員が、市井の一員であり、
成長しきれない子どもであり、
他者との関係につまずいている現代人なんだ、と
ワシには感じられました。

ラストへの「え。」という展開もよかった。
なんだけど、真のラストはちょっと惜しかったな。


★11/17(土)から全国で公開。

「その夜の侍」公式サイト
コメント (2)
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