ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ソハの地下水道

2012-09-21 21:31:59 | あ行

本年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作。
ずっしりきますぜ。

「ソハの地下水道」71点★★★★

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1943年のポーランド。

ナチスによるホロコースト(ユダヤ人狩り)が行われるなか、
貧しい下水処理工のソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は

連行されたユダヤ人たちの家で金目のものをいただき、
妻と幼い娘を養っていた。

あるときソハは、地下水道に脱出口を掘ろうとする
ユダヤ人たちに出会う。

誰よりも地下水道を知り尽くしているソハは
彼らに隠れ場所を提供し、
その見返りに金を受け取ることにする。

しかしそのことがソハの運命を
大きく変えることとなり――。

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145分、長い!疲れた!(苦笑)
でも、この疲労感こそ狙いだろう。

暗く冷たく、臭い地下道に
隠れ続けたユダヤ人たちの苦労は
こんなものではないんだから。

実話をもとにした物語で、
決して完全なる善人ではないソハが
成り行きからユダヤ人らをかくまうことになる。

映画はソハの善意を美化することもなく進むので、
「いつナチスに見つかるか?」「いつソハが裏切るか?」など
予測不能で
常に緊迫感が絶えない。

さらにホロコーストたちの
セックスも含めて生々しい生が描かれているのが本作の特徴かな。


ソハの行動は宗教や信念に基づくわけではなく、
あくまでも「反射神経」なのだと思う。


損得抜きで「ほっとけない」とか
自分でも思ってもいないような
ピュアな動機に突き動かされることがあったり、

反転して、いきなり見放したりとか。

そして、それが
意外に人間の真理なのではないかなと。


そんなソハとユダヤ人とつなぐのは、
今にも切れそうな一本の細い糸なのだ。

それは良心なのか、それとも・・・。

映画なのにすさまじい臭気が漂ってくる気がする
気概に満ちた作品です。


★9/22(土・祝)からTOHOシネマズシャンテほかで公開。

「ソハの地下水道」公式サイト
コメント (2)
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