ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

イラン式料理本

2012-09-10 21:28:35 | あ行

これはね~、オチも素晴らしい!(笑)

「イラン式料理本」74点★★★★


1973年、イラン・テヘラン生まれのモハマド・シルワーニ監督が
イランの家庭の台所で
母や義母、妹や妻に料理をしてもらい
その様子を映す・・・というドキュメンタリー。

な~んの仕掛けもないのに、
これがえらくおもしろい!

さすが人の「素(もと)」を作り出す台所、
人間のかもし出す「素(す)」のおかしみに溢れているんですねえ。


カメラはほぼ定点観測状態で
台所で立ち働く彼女たちを写すのみ。

分量をしっかり図る人もいれば、テキトーな人もいるし、
手も動くけど、口も動く人もいる(笑)

そうした何気なさに
世代の差や個性がハッキリ現れ、

さらに夫婦関係や、嫁と姑の関係、
イランの男女の力関係や問題までが、
そこはかとなくたち現れてくるのがおもしろいんですねえ。


例えば義母(監督の妻のお母さん)は
ものすごく時間をかけて
伝統的な料理を作る“昔の女性”なんだけど

娘のころに嫁入りし、
姑に散々いじめられたらしいんですね。

そして自身が貫禄たっぷりになったいま
隣に座るちんまりした姑に
「義母さん、なんであんなに私をいじめたんです?」なんて
チクリチクリとジャブするんです。

完全に形勢逆転(笑)。


で、その娘である監督の妻は
美人なんだけど、かなり気の強い現代女性で

ダンナがお客を連れて帰ったことにチクリチクリと文句を言い、
さらにごはんはチンで済ます、みたいな(笑)

難しいこと抜きで、その国の状況が
台所、そして“食”でわかるという
シンプルさがいい。


日本でも「サラメシ」が人気だったりしますからね。


イランは特にドキュメンタリー映画に検閲が厳しく、
この作品も国内では上映されていないそう。

しかしそんな状況のなかでも
モハマド・シルワーニ監督は、
イランの現状をさまざまな形であぶり出す術に長け、
よき作品を発表し続けているそうです。


まあなにはともあれ、お腹が空いてきましたよ(笑)


★9/15(土)から岩波ホールほか、全国順次公開。

「イラン式料理本」公式サイト
コメント
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