ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ミラル

2011-08-04 21:07:34 | ま行

個人的には
前作「潜水服は蝶の夢を見る」より上~

「ミラル」80点★★★★


画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督の新作。

1948年~94年のパレスチナを舞台に
それぞれの方法で運命と戦おうとする
4人の女性を

一人一人を「一章」として描き、
かつそれらがつながっている、という
実話をもとにした物語です。


一人目はヒンドゥ(ヒアム・アッバス)。

1948年、エルサレムの路上で
彼女はユダヤ民兵に親を殺された孤児たちに出会い
私財を投じて孤児院を作ることにする。

二人目は
美しいナディア(ヤスミーン・アル=マスリー)。

辛い過去を背負う彼女は
些細なことで投獄されてしまう。

三人目はファーティマ(ルバ・ビラール)。
勇気ある行動で投獄された彼女は、
刑務所でナディアと出会う。


そして四人目はナディアの娘ミラル(フリーダ・ピント)。

ヒンドゥの孤児院で育ち、
利発な少女に成長した
ミラルのたどる運命とは……。


イスラエルとパレスチナの紛争が背景にありますが、
特に政治事情やら説明はナシ。

「よほどのマヌケでなきゃ
背景くらい読み取れるわよね」つう、毅然さがイカしてる。


さらに
光と色、レンズを駆使した
シュナーベルらしい美的センスと素晴らしい音楽が

シリアスなストーリーを
しっかり目で楽しませ、魅せてくれます。

まさに絵と音楽、ストーリーで
“映画を奏でている”状態。

特にラスト、
トム・ウェイツの歌にしびれました。


また女優陣が、
映画好きなら「うひゃ!」というメンツ。

「シリアの花嫁」「扉をたたく人」の
ヒアム・アッバスに、

ミラル役のフリーダ・ピントは
「スラムドッグ$ミリオネア」のラティカだし、

ナディア演じるヤスミンは
「キャラメル」に出演。

さらに「ジュリエットからの手紙」も記憶に新しい
ヴァネッサ・レッドグレイヴも出演してます。


この話はミラル自身であり、
現在作家兼ジャーナリストとして活躍している
ルーラ・ジブリールの自伝に基づいているそう。
またこの人が、実際えらい美人なんですが(笑)


「いのちの子ども」で学びましたが、
イスラエル・パレスチナ問題は
半世紀以上も続き、
本当に血みどろで、出口がない。

でも、そのなかには
こういう崇高な意志を持った人がいて、それを継ぐ人がいる。

これが希望でなく
なんであろうか、と。

いい映画です。

★8/6からユーロスペースで公開。ほか全国順次公開。

「ミラル」公式サイト
コメント
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