ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

闇の列車、光の旅

2010-04-06 14:36:22 | や行
心にビビッときましたねえ。

「闇の列車、光の旅」75点★★★

荒廃したメキシコの裏路地で
ギャングとして生きる少年カスベル。

悪に染まりきらず人の心を残す彼は
ある少女を助けたことで
仲間たちに命を狙われることになる。

国境を越えてアメリカに逃げようとする
彼と彼女の

つかの間の邂逅を
実にビビッドに描いた秀作です。


若者しか持ち得ない
「別に、いつ死んでもいいし」的な
独特の厭世観。

それに矛盾するかのように
彼らが持っている
「どうにかなるさ」という楽観的な未来観。

そして極限で現れる
「生きたい」という本能。

それらが鮮明に刻まれた
うまい映画でした。

監督のキャリー・ジョージ・フクナガは
日系3世のアメリカ人。
2009年のサンダンス映画祭で
監督賞を受賞してます。

ギャング少年を描いた映画といえば
ブラジルの
「シティ・オブ・ゴッド」が有名だけど
あそこまで残虐でなく(そういうシーンもあるけど)

登場人物の心理描写がたおやか。


国境超え、仲間との決別など
よく見る題材ではあるんですが

心につっかかってくる
確かな手ごたえがあります。

命を狙われる少年に少女が
「(死ぬことが)怖くないの?」と問うシーンがある。

「まあ生きるあてもないしね」と彼は答え、
こう続ける。

「でも“それ”=(死ぬこと)が
いつなのかわからないのが困る」

実にリアルで
心に残るセリフでした。


★6月からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

「闇の列車、光の旅」公式サイト
コメント (2)
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