あの陣川警部補(原田龍二)が、ついに登場。
惚れた女性・由香利(松本莉緒)がドキュメンタリー番組の取材を受けており、その担当ディレクターの女性の自 殺に不審な点があるので調べて欲しいと。
由香利は、彼女の母が失火で他人を巻き込んで死に至らしめたという罪を背負い、「自分は幸せになってはいけない」という思いを抱いて生きていた。
ディレクターの死はやはり殺人だったが、その動機と犯人が意外なもので、その動機となった事柄には驚くべき事実(ディレクター・麻紀の思い)があったという点が、今回の見どころであった。(由香利に「由香利を許す」という火事の被害者遺族の手紙を麻紀が捏造したと思ったのが、犯行の動機。ところが、麻紀こそがその遺族だったと)
その驚愕の事実が今回のミソであったが、そこだけに固執したため、その他が矛盾だらけになってしまった。
①麻紀の死を、警察が自 殺と判断するのは無理があり過ぎる。
毒の入手ルートも判明しない、遺書もない、自殺する理由も弱い(由香利の言うように制作中のドラマ完成前に自 殺するのはおかしい)
決定的な判断材料がないのに、自 殺と判断して、遺留品や麻紀の行動を調べた形跡がない。そのくせ、防犯ビデオに不審な人物が映っていた事が分かり、俄然張り切る捜査一課トリオも不自然。
②ドキュメンタリーが完成していたというのが真相だったとしているが、「母の罪で苦しむ女性が、母になる」というテーマなら、出産まで取材して完成させるはず。
③陣川が残された映像をずっと見て、由香利の元彼の存在を知っただけで、あとの行動はその彼の存在を気にかけて、事件の真相は二の次になっていた。まあ、陣川君らしいと言えばそうなのだが。
④麻紀が退職願を出した理由も良く分からない。
彼女が不退転の決意だったとしても、辞める理由には至らない。もっといい条件の制作会社の当てがあるわけでもなく、ドキュメンタリーの制作を止める理由もない。
彼女の死を、自 殺と判断させるための、脚本家の都合にしか思えない。
⑤犯人の行動も不可解。
犯人が、手紙を捏造したと思い込んだのがいつだったのか。完成作(仮編集)を観た瞬間だと思われるが、そうだとすると、突発的に殺人を犯したことになるが、彼女はいつも毒薬を持ち歩いているのだろうか。
殺人の動機も弱い。捏造ドキュメンタリーを許さない、それを作った麻紀が許せなかったとしても、殺意にまで至るのだろうか?特に、衝動的に毒殺はあり得ない。
右京が「あなたに川野さん(麻紀)を殺す理由などどこにもありませんよ」と糾弾するが、ドラマとしても「麻紀を殺す理由などどこにもありませんよ」と脚本家に言いたい。
せっかくの陣川君の登場だが、「アンテナ」の時の相原刑事(萩原聖人)が強烈だったせいか、大人しく感じた。
【ストーリー】(番組サイトより)
あの陣川警部補(原田龍二)が、特命係の右京(水谷豊)と尊(及川光博)のもとへとやってきたかと思えば、なんと「父親になります」と言い出した。相手はすでに妊娠中で、今回も美人の由香利(松本莉緒)。美人にめっぽう弱い陣川はそんな彼女からある相談を受けていた。
由香利は数ヶ月に亘ってテレビのドキュメンタリー番組の密着取材を受けており、その番組の担当ディレクター麻紀が自 殺した。が、由香利には麻紀が自殺するとは思えないという。右京と尊は陣川とともに由香利を訪ねる。
由香利によると生前、麻紀は「最高傑作になるから」と言っていたという。そんな彼女がオンエア前に自殺というのも確かに不自然だ。
鑑識・米沢(六角精児)の調べでは、麻紀は映像編集中に毒物を混入したコーヒーを飲み自殺。仕事に悩み、自殺する数日前には退職願を上司に提出していたのだが…。
些細なことが気になり、右京たちは独自の捜査を開始する!
陣川の今回の片思いは成就するのか!?
ゲスト:原田龍二 松本莉緒
脚本:守口悠介 監督:近藤俊明
惚れた女性・由香利(松本莉緒)がドキュメンタリー番組の取材を受けており、その担当ディレクターの女性の自 殺に不審な点があるので調べて欲しいと。
由香利は、彼女の母が失火で他人を巻き込んで死に至らしめたという罪を背負い、「自分は幸せになってはいけない」という思いを抱いて生きていた。
ディレクターの死はやはり殺人だったが、その動機と犯人が意外なもので、その動機となった事柄には驚くべき事実(ディレクター・麻紀の思い)があったという点が、今回の見どころであった。(由香利に「由香利を許す」という火事の被害者遺族の手紙を麻紀が捏造したと思ったのが、犯行の動機。ところが、麻紀こそがその遺族だったと)
その驚愕の事実が今回のミソであったが、そこだけに固執したため、その他が矛盾だらけになってしまった。
①麻紀の死を、警察が自 殺と判断するのは無理があり過ぎる。
毒の入手ルートも判明しない、遺書もない、自殺する理由も弱い(由香利の言うように制作中のドラマ完成前に自 殺するのはおかしい)
決定的な判断材料がないのに、自 殺と判断して、遺留品や麻紀の行動を調べた形跡がない。そのくせ、防犯ビデオに不審な人物が映っていた事が分かり、俄然張り切る捜査一課トリオも不自然。
②ドキュメンタリーが完成していたというのが真相だったとしているが、「母の罪で苦しむ女性が、母になる」というテーマなら、出産まで取材して完成させるはず。
③陣川が残された映像をずっと見て、由香利の元彼の存在を知っただけで、あとの行動はその彼の存在を気にかけて、事件の真相は二の次になっていた。まあ、陣川君らしいと言えばそうなのだが。
④麻紀が退職願を出した理由も良く分からない。
彼女が不退転の決意だったとしても、辞める理由には至らない。もっといい条件の制作会社の当てがあるわけでもなく、ドキュメンタリーの制作を止める理由もない。
彼女の死を、自 殺と判断させるための、脚本家の都合にしか思えない。
⑤犯人の行動も不可解。
犯人が、手紙を捏造したと思い込んだのがいつだったのか。完成作(仮編集)を観た瞬間だと思われるが、そうだとすると、突発的に殺人を犯したことになるが、彼女はいつも毒薬を持ち歩いているのだろうか。
殺人の動機も弱い。捏造ドキュメンタリーを許さない、それを作った麻紀が許せなかったとしても、殺意にまで至るのだろうか?特に、衝動的に毒殺はあり得ない。
右京が「あなたに川野さん(麻紀)を殺す理由などどこにもありませんよ」と糾弾するが、ドラマとしても「麻紀を殺す理由などどこにもありませんよ」と脚本家に言いたい。
せっかくの陣川君の登場だが、「アンテナ」の時の相原刑事(萩原聖人)が強烈だったせいか、大人しく感じた。
【ストーリー】(番組サイトより)
あの陣川警部補(原田龍二)が、特命係の右京(水谷豊)と尊(及川光博)のもとへとやってきたかと思えば、なんと「父親になります」と言い出した。相手はすでに妊娠中で、今回も美人の由香利(松本莉緒)。美人にめっぽう弱い陣川はそんな彼女からある相談を受けていた。
由香利は数ヶ月に亘ってテレビのドキュメンタリー番組の密着取材を受けており、その番組の担当ディレクター麻紀が自 殺した。が、由香利には麻紀が自殺するとは思えないという。右京と尊は陣川とともに由香利を訪ねる。
由香利によると生前、麻紀は「最高傑作になるから」と言っていたという。そんな彼女がオンエア前に自殺というのも確かに不自然だ。
鑑識・米沢(六角精児)の調べでは、麻紀は映像編集中に毒物を混入したコーヒーを飲み自殺。仕事に悩み、自殺する数日前には退職願を上司に提出していたのだが…。
些細なことが気になり、右京たちは独自の捜査を開始する!
陣川の今回の片思いは成就するのか!?
ゲスト:原田龍二 松本莉緒
脚本:守口悠介 監督:近藤俊明
最高級の食材が手に入ったのに、逸り過ぎて調理を失敗したという。
1 これは、最近多いと感じています。今回は特に顕著でしたが。
2 「母の罪で苦しむ女性が、母になる」ここはですね、母はおまけで「罪からの開放」「罪を許すこと」をテーマとしている筈です。恐らく光市事件の判決へのアンチテーゼ。旬に間に合わせる為にかなり急いだのかもしれません。
4 ん~・・・ここは、やはり火事の件を切っ掛けにこの道に入った、という設定があった、と考えたいですね。火事の件を赦すことで、同時に彼女自身も開放された、ということで。
5 録画してあれば、毒殺する以前に読んだことがセリフで(セリフだけ)説明されています。そう、説明されていますよ~。
将棋に置き換えて考えてみましょう。
羽生善治に憧れてプロになった棋士が初めて公式戦で羽生と闘えることとなり、八百長を持ちかけられた、というような・・・。
ちょっと殺意には気持ちが向かないですね・・・受けるダメージが大きすぎて他人を攻撃する方向には向かない感じです。
結果殺人になるにしても、冷静さを欠いた行動による不慮の事故にするか(ただ今回のテーマだとこれは向かない)、全く別の、極めて功利的な理由での殺人者を容易した方がいい。今回だと、例えば編集済みデータの入ったHDDを質に改心を迫り、揉み合いの末脳震盪を起こした麻紀を、殺したと勘違いして逃走。すぐには自首できなかったが出頭するという形で、事件が解決したことにする。
勿論、真犯人として偶然その場面を見ていた(脳震盪なので麻紀はすぐに回復する。後頭部を殴りつけて気絶とかドラマだけのルールを用いてもいい)極めて功利的な理由での殺人者を用意することになり、その時は大抵あの男性ディレクター(だったかな?)がその役割をすることになると誰でも思うので、一工夫要する。
まあ、ここまですると普通に二時間ものになるけども・・・。
ラストのアイデアが良かっただけに残念。
いつも、詳細なフォロー、ありがとうございます。
>策におぼれる
>最高級の食材が手に入ったのに、逸り過ぎて調理を失敗したという
なるほど、ピッタリの表現ですね。
1、2、4については、さすがの見識で、参考になります。
5についてですが、彼女(犯人)が手紙を読んだというのは、私も認識していました。ただ、普通は中身まで読まないと思いました。なので、あの仮編集を観た時に、思い当って驚愕した。あの驚愕の表情はそういう感情・気持ち・思索だと感じました。
手紙の中味を読んで知っていたなら、あの場面では、もっと冷静に「あの手紙を送ったんですね」とかトーンを下げて迫ると思うのです。そして、彼女の反応を観て、あらかじめ用意していた毒を混入するというのなら、ある程度は納得できますが、あの激情と毒殺は似合わないです。
将棋に置き換えての話も、非常に興味深く読みました。面白いです。
おっしゃる通り、面白いテーマだったと思います。一番の失敗は、陣川君を登場させたこと。陣川君を出すために、犯行周辺がイビツなものになったしまいました。
陣川君はもっと違う軽い事件の方が、彼の個性が生きると思います。
あの場面なのですが、殺意の切っ掛けをその場で「セリフだけで説明」させてしまっている時点で、多分ライターも自覚している反則的に強引な収束なんですよね。
何が反則か、なんですけど、登場人物の心理が視聴者に納得できない、ことが物語だと一番の反則です。この納得とは視聴者もそう思う、では無論なく、この登場人物ならこうするだろう、こうしてもおかしくない、ということで、これができていないと、ストーリーにあわせて登場人物が動いている、と見えてしまう。
確かにルールを厳格にまもる融通の利かない一面を見せていたのでショックが大きいのはわかるのですが、なら人間に於ける最大の禁忌である殺人をそんなあっさりするなよ、と見ていて思う。この、本来あり得ないことをしてしまう心情を描いてこその物語で、ここができていれば推理が多少破綻してようが強引だろうが、そんなには気にならないのです。
そう、であの場面、普通は中身までは読まないのですが、読んでいないと、それこそ普段から毒を持ち歩くという、更に普通ではない人物になってしまう。
陣川君、滑稽だけど見ている方も和むキャラの筈ですが、今回とても痛々しかった。
もし羽生さんに八百長を持ちかけられたらもう何も信じないというか信じたくないというか世界が終わってしまえばいいくらいに落ち込むので寧ろ自殺しましょう。
>右京が「あなたに川野さん(麻紀)を殺す理由などどこにもありませんよ」と糾弾するが、ドラマとしても「麻紀を殺す理由などどこにもありませんよ」と脚本家に言いたい。
右京がこのパターンで終わらせるには、基本完全無欠の悪人(変な言葉だども)に対する復讐劇で、心情的にはリベンジャーに寄り添いつつも「信念を表明」させないと白々しくなりますね。
>人間に於ける最大の禁忌である殺人をそんなあっさりするなよ
そうそう、まさにそうです!。
それに、捏造より遥かに殺人の方がダメでしょう。しかも、衝動ではなく、毒殺(計画殺人)は。
>もし羽生さんに八百長を持ちかけられたらもう何も信じないというか信じたくない
ええ、私が持ちかけられたら、「そんなことを言わないでくれ」と訂正するまで、首を絞めるでしょうね。
>右京がこのパターンで終わらせるには、基本完全無欠の悪人(変な言葉だども)に対する復讐劇で、心情的にはリベンジャーに寄り添いつつも「信念を表明」させないと白々しくなりますね
ええ、あの場面、絶対、犯人をああいう風に糾弾すると思いました。