第15図の△8七角では△6九銀と捨てて玉を下段に落としたほうが、より確実だったらしいが、本譜の王手龍取りでも後手の勝ちには変わりはなさそうだ。第15図より▲6七玉△6五角成▲同金△6九飛▲5六玉(第16図)と進む。
第16図は先手玉の上部が厚くて開けているように見える。しかし、図で△7六銀と詰めろを掛けられると、適当な受けがない。6五の金取りを受けながら2二への打ち込みを見る▲6六角が利けばいいが、△6七飛成▲5五玉△6五銀以下打った角を取られてしまう。△7六銀に受けるとしたら▲6六銀だが、これでは勝ち味がない。
しかし、第16図で渡辺竜王は△6四歩。この手は退路封鎖の手筋で、成銀で取っても金で取っても先手玉は詰んでしまう。なので先手玉はしびれているように見える。銀を打つより歩で済ませたほうが確実(攻めが切れない)なので、より△6四歩のほうがよいように見える。
ところが、今度は▲6六角(第17図)が成立した。
今度は△6七飛成がないのと、△6五歩と金を取っても王手にならない。先手としては△6五飛成を防ぐだけでよいので、▲6六角がそれを防ぎながら2二の打ち込みを見せた攻防の一手となってしまったのだ。
もちろん、渡辺竜王も▲6六角は見えていたはずで、▲6六角には△5五歩があって大丈夫という読んでいたのではないだろうか。△5五歩に▲同角は△6五龍があるので、▲同玉と取るしかない。手順に角道を遮断できたので、金を取ってさらに角取りの△6五歩(参考図)が気持ちよい。△6四歩、そして△5五歩と手筋の歩が連発するので、これは「もらった」と思うのは無理はない。
しかし、参考図の△6五歩にはひらりと▲4八角と金を取る手があった。
▲6六角と打たれこの筋に気がついた渡辺竜王は眩暈がしたにちがいない。第17図の▲6六角に予定変更の△5九飛成は、竜王の心境と同じようによろめいているように思えた。
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