「その1」、「その2」 の続きです。
(本記事の図面で対局者が「先手」「後手」と表示されていますが、先手は今井奨励会6級、後手は山根女流初段です)
2題目(2局目)
第6期リコー杯女流王座戦二次予選
★今井絢奨励会6級 対 山根ことみ女流初段
昭和の香りがする居飛車対振り飛車の図。
先手の今井奨励会6級が▲8七銀と銀冠に組み替えを図ったところ。
銀冠は強固な囲いだが、この銀を上がった瞬間が金銀3枚がバラバラになり、仕掛けられるのを警戒しなければならない(振飛車側の組み替えも同様)。
今井奨励会6級は手慣れた戦型なのか、直前の▲8六歩までは考えても2分で通計16分の考慮時間(チェスクロック使用)。そして、この▲8七銀も2分の考慮だった。
しかし、後手が4四銀型で先手は角が3七にいる状態なので、この瞬間、△3五歩と仕掛けられる危険が大きい。それを2分の考慮で指すとは、よほど経験がある戦型なのか、迂闊なのか……
山根女流初段は6分半の考慮で△3五歩と仕掛ける。
【以下、中継サイトの解説を引用】=======
6分半以上考えて、△3五歩と仕掛けた。
※局後の感想※
ここで△3五歩が機敏な仕掛けで、山根がペースを握った。対して本譜の▲3五同歩に代えて▲2六飛は、次に▲3五歩と取れるわけではなく後手ペース。山根はここで▲3八飛を本命視しており、以下△3二飛▲7八金△2二角▲2六角△3六歩▲2四歩△同歩▲2八飛△3四飛▲4六歩は、後手に不満はないものの、勝負としてはまだまだの戦いだった。
=========【引用終わり】
“機敏な仕掛け”と言うより“当然の仕掛け”
しかし、それで決定的に形勢が離れるという訳ではなく、引用した解説通り、“まだまだの戦い”が続くはずだった。
ただ、△3五歩に対して、取りあえず▲7八金と締まりたい。△3六歩と取りこまれるが▲2六角で意外と難しい。先手から次に▲3八飛として3六に歩を取り返す手段があり、これがすんなり実現できれば先手が良くなる。
△2四歩には▲同歩で大丈夫そう。△2二角と引いて△3二飛を用意する手や、△5五歩と戦線拡大する手が有力で、後手ペースになりそうだが、互角に近い戦いが望める。
ところが……
7分の考慮で▲3五同歩。
銀冠が完成していても▲3五同歩とは取りにくいはずだが、たった7分の考慮で戦える見通しを立てたのだろうか?
【引用】========
対して7分以上考えて▲3五同歩と応じる。代えて▲2六飛と浮いて銀を進出させない順も、考えられるところだった。
※局後の感想※
この▲3五同歩が躓きの始まり。このあと今井に大きな見落としがあった。
========【引用終わり】
見落としがあったというが、▲3五同歩と取って△3五銀と進出させる感覚に、大きな疑問を感じる。
さらに、1分の考慮で▲6五歩。
【引用】========
「この手を突いた瞬間に△6五同桂があることに気づきました」(今井)
期待の反撃だったが、△6五同桂と応じられ、傷口を広げる結果となった。
========【引用終わり】
ここまで通計で26分の考慮。持時間は3時間あり、少なくとも3度は腰を落ち着けて熟考すべき個所があったというのに。
成立の可能性はあるものの不用意な▲8七銀(2分)。
将棋の筋としてはあり得ない▲3五同歩(7分)。
完全な見落としの▲6五歩(1分)。
第6図以下▲6八飛(9分、悪手)△4六歩▲同歩△3六歩▲2八角△7七桂成▲同金△同角成▲同玉△6五桂(第7図)。
△6五桂は11時39分の着手。
このまま昼食休憩に入ったが、今井奨励会6級は食事はまずかっただろう。
以後は24手指し継がれたが、指してみただけの手順。
「その4」
(本記事の図面で対局者が「先手」「後手」と表示されていますが、先手は今井奨励会6級、後手は山根女流初段です)
2題目(2局目)
第6期リコー杯女流王座戦二次予選
★今井絢奨励会6級 対 山根ことみ女流初段
昭和の香りがする居飛車対振り飛車の図。
先手の今井奨励会6級が▲8七銀と銀冠に組み替えを図ったところ。
銀冠は強固な囲いだが、この銀を上がった瞬間が金銀3枚がバラバラになり、仕掛けられるのを警戒しなければならない(振飛車側の組み替えも同様)。
今井奨励会6級は手慣れた戦型なのか、直前の▲8六歩までは考えても2分で通計16分の考慮時間(チェスクロック使用)。そして、この▲8七銀も2分の考慮だった。
しかし、後手が4四銀型で先手は角が3七にいる状態なので、この瞬間、△3五歩と仕掛けられる危険が大きい。それを2分の考慮で指すとは、よほど経験がある戦型なのか、迂闊なのか……
山根女流初段は6分半の考慮で△3五歩と仕掛ける。
【以下、中継サイトの解説を引用】=======
6分半以上考えて、△3五歩と仕掛けた。
※局後の感想※
ここで△3五歩が機敏な仕掛けで、山根がペースを握った。対して本譜の▲3五同歩に代えて▲2六飛は、次に▲3五歩と取れるわけではなく後手ペース。山根はここで▲3八飛を本命視しており、以下△3二飛▲7八金△2二角▲2六角△3六歩▲2四歩△同歩▲2八飛△3四飛▲4六歩は、後手に不満はないものの、勝負としてはまだまだの戦いだった。
=========【引用終わり】
“機敏な仕掛け”と言うより“当然の仕掛け”
しかし、それで決定的に形勢が離れるという訳ではなく、引用した解説通り、“まだまだの戦い”が続くはずだった。
ただ、△3五歩に対して、取りあえず▲7八金と締まりたい。△3六歩と取りこまれるが▲2六角で意外と難しい。先手から次に▲3八飛として3六に歩を取り返す手段があり、これがすんなり実現できれば先手が良くなる。
△2四歩には▲同歩で大丈夫そう。△2二角と引いて△3二飛を用意する手や、△5五歩と戦線拡大する手が有力で、後手ペースになりそうだが、互角に近い戦いが望める。
ところが……
7分の考慮で▲3五同歩。
銀冠が完成していても▲3五同歩とは取りにくいはずだが、たった7分の考慮で戦える見通しを立てたのだろうか?
【引用】========
対して7分以上考えて▲3五同歩と応じる。代えて▲2六飛と浮いて銀を進出させない順も、考えられるところだった。
※局後の感想※
この▲3五同歩が躓きの始まり。このあと今井に大きな見落としがあった。
========【引用終わり】
見落としがあったというが、▲3五同歩と取って△3五銀と進出させる感覚に、大きな疑問を感じる。
さらに、1分の考慮で▲6五歩。
【引用】========
「この手を突いた瞬間に△6五同桂があることに気づきました」(今井)
期待の反撃だったが、△6五同桂と応じられ、傷口を広げる結果となった。
========【引用終わり】
ここまで通計で26分の考慮。持時間は3時間あり、少なくとも3度は腰を落ち着けて熟考すべき個所があったというのに。
成立の可能性はあるものの不用意な▲8七銀(2分)。
将棋の筋としてはあり得ない▲3五同歩(7分)。
完全な見落としの▲6五歩(1分)。
第6図以下▲6八飛(9分、悪手)△4六歩▲同歩△3六歩▲2八角△7七桂成▲同金△同角成▲同玉△6五桂(第7図)。
△6五桂は11時39分の着手。
このまま昼食休憩に入ったが、今井奨励会6級は食事はまずかっただろう。
以後は24手指し継がれたが、指してみただけの手順。
「その4」
>絶望的場面で長考ができるのが大名人の器
なるほど、そうですね。
河口氏の言葉で、「悪手を2度続けるな」の大山名人の言葉を思い出しました。
私は、将棋でも実生活でも、悪手を続けてしまいます。
すくなくとも観戦記者がめにはいってない棋譜になってしまってますねえ。
私も記事中で述べましたが、おっしゃる通り、時間の使い方や技術以前の心構えに問題がある気がします。
▲8七銀は危険な手ではありますが、それほどの悪手ではないように思います。ですが、その前後の時間の使い方を考えると、迂闊な手としか言えません。
技術的には▲3五同歩と▲6五歩は許容できない手です。
感想戦では
「作戦負けの将棋で、47手目に▲6五歩と突いてしまって不利になりました。△同桂と取られるのをうっかりしてしまって。やっちゃったなって感じです。力を出せないまま終わってしまいました。山根さんは強かったです」
この言葉にも、軽さを感じます。
中学3年生で、受験、奨励会、女流棋戦の兼ね合いが難しいようです。奨励会には6月からの参加で、4勝5敗の成績です。
それを考えると、本局は彼女の力が発揮できなかったようですが、心構えに問題があるように思います。
奨励会6級って、私の知っている限り最低でもアマ4~5段クラスだった筈ですが…87銀や65歩を見る限り、どうも自分の都合だけ考えて相手の手を全く真剣に読んでないような印象を受けます。時間の使い方も含め、将棋の技術以前の心構えの問題がある気がします。
少なくとも、この棋譜をお金払って見たい人は居ないでしょうね…