ルイガノ旅日記

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ロシア 美術館めぐり④ ~ エルミタージュ美術館(その3)

2019年03月22日 | 海外旅行
今回は、最も新しくエルミタージュに仲間入りした新館(旧参謀本部)の記事です。
宮廷広場を挟んで冬宮の反対側にある旧参謀本部(1828年完成)は、両翼がゆるやかな曲線を描き、まるで鳥が翼を広げたような美しい建物です。ここにはかつて、財務省と外務省(向かって左、東側)、軍参謀本部(右側)が入っており、それらが中央の凱旋アーチで連結されています。2014年12月、この東翼部分が国立エルミタージュ美術館新館としてオープンしました。


入り口を入ると、まずはこの階段を上って展示場に向かいます。


現代彫刻が多数展示された吹き抜けのホール。ここを抜けるとロシアの現代美術の部屋が続きます。新館の広さもなかなかのもので、すべて観ようとすればかなり時間がかかると思いますが、私たちはエレベータで4階(近代西欧美術のフロア)に上がり、印象派の作品を主体に観て回りました。


なかでも、私たちが一番楽しみにしていたのは「モネの部屋」です。


『モンジュロンの庭の片隅』と『モンジュロンの池』
モンジュロンとはパリ近郊の町で、自宅の居間に飾る絵をモネに依頼したエルネスト・オシュデ(実業家でモネのパトロンの一人)の別荘があった場所です。


モネの初期の作品(1867年)『庭の女(Lady in a garden)』
庭をテーマにしたモネの絵は、構図や色彩にも惹かれるものがありますが、モネがもっとも描きたかったものは「光」や「風」であったと言われています。


一番右は『ボルディゲーラの庭(Garden at Bordighera, Morning)』
ボルディゲーラはイタリア西部、地中海沿岸の町です。モネは、ルノワールと一緒に出かけた共同制作の旅の最後にここを訪れました。シュロの木が生い茂るこの町の美しさに魅了されたモネは、改めて一人で訪れてこの絵を描いたそうです。


上の写真一番左は、『ジヴェルニーの牧草地(Meadows at Giverny)』
ジヴェルニーはパリ北東にあたるノルマンディー地方の静かな村で、モネが晩年の43年間をすごした場所。パリのオランジュリー美術館が所蔵する『睡蓮』などは、ジヴェルニーの自宅の庭を描いたものです。


『ル・アーブルの大きな波止場(The Grand Quai at Havre)』
ル・アーブルは、モネが少年期を過ごしたセーヌ川河口の町ですが、『印象:日の出』を描いた場所でもあることから、印象派発祥の地とされています。


フランス印象派の一人で、モネとも親交の深かったカミーユ・ピサロ 『マルケ河岸=晴れた日の午後』
マルケ河岸とは、パリの中心部、ルーヴル美術館にほど近いセーヌ河岸のことのようです。


同じくピサロ 『テアトル・フランセ広場』


ルノワールの部屋も人気がありました。


オーギュスト・ルノワール 『ジャンヌ・サマリの肖像』
モデルのジャンヌ・サマリはコメディ・フランセーズの女優で、ルノワールとは恋仲だったとの噂もあるようです。


ルノワール『女性の肖像』
ルノワールの描く女性像は、知的でエレガントな雰囲気がありますね。


新館ではあまり時間が取れなかったのですが、エルミタージュ本館よりも空いていた上に、近代西欧美術に焦点を絞ったおかげで、かなりゆっくり観賞できました。


「ゴーギャンの部屋」
これら3枚はすべてタヒチ2期に描かれたもので、右から『果実の収穫』、『母性Ⅰ』、『二匹の山羊のいる風景』


オーギュスト・ロダン 『永遠の春』


19世紀から20世紀にかけての近代絵画の部屋です。


キース・ヴァン・ドンゲン 『黒い帽子の女』


こちらの部屋には、マネやドガの絵が集められていました。


エドガー・ドガ 『裸婦』


19世紀のフランス印象派エドゥアール・マネ 『マドモアゼル イザベル・ルモニエの肖像』


こちらはアメリカ人画家、アルフレッド・ヘンリー・マウラー 『庭の中で(in the garden)』


「青の時代」を中心に初期の作品が30数点と、「ピカソの部屋」の充実ぶりもすごかったです。


ピカソの支援者だったらしい『Benet Solerの肖像』


『楽器(Musical Instruments)』


19世紀のフランス人画家、フランソワ・フラマン 『Bathing of Court Ladies in the 18th Century』


最後の絵は、ロシア出身の抽象画家ワシリー・カンディンスキーの『コンポジションⅥ』
じっと観ていても何が描かれているのかわかりませんが、それでいいのだそうです。現地ガイドのワシリーさん(たまたまですが、カンディンスキーと同じ名前でした)は、「20分見つめていると、音楽が聞こえてきます」と表現していました。長くなりますが、「Artpedia 近現代美術の百科事典」の解説の一部を引用します。
《カンディンスキーは作品を通じて、内面に直接働きかける色彩への意識を強め、現実の外形の代わりに色彩の「響き」によって精神的な内容を伝えることを思い描いていた。1910年から1913年までの間に描かれた「コンポジション」シリーズはカンディンスキーの代表的な精神的表現である。》


所蔵美術品は310万点に及ぶと言うエルミタージュ美術館。私たちは、新館部分を合わせて5~6時間かけて観て回りました。ガイドさんが要所要所で詳しい説明を交えながら効率よく案内してくれたおかげで、かなり密度の濃い見学ができたと思います。とはいえ、絵画のみならずロマノフ王朝の絢爛豪華な宮殿も一緒に観て回るわけですから、時間はたっぷりあるに越したことはありません。日程に余裕を持って出かけたいものですね。
エルミタージュ美術館の記事はこれで終わりますが、ロシア旅行記はまだ続きますので、もう少しおつきあいください (^-^)ゞ


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