ルイガノ旅日記

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ロシア 美術館めぐり② ~ エルミタージュ美術館(その1)

2019年03月16日 | 海外旅行
さて今回は、ロシア旅行最大の目的だったエルミタージュ美術館ですが、その構成はパリのルーヴル美術館以上に複雑です。ロマノフ王朝歴代皇帝の居城であった冬宮(冬宮殿)を中心に、エカテリーナ2世が建設を命じた小エルミタージュ、旧エルミタージュとエルミタージュ劇場、その後ニコライ1世による新エルミタージュを加え、更に1988年、エルミタージュに移譲された旧参謀本部の東翼部分からなります。所蔵する美術品は優に300万点を越え(ルーヴルは約38万点)、まさに世界第一級の美術館と言ってよいでしょう。(写真は、宮殿広場から見た冬宮)


いよいよエルミタージュ美術館の中に入ります。まず最初は、大使の階段(ヨルダン階段)から。このアングルからはやや頭上に余裕がない印象を受けますが、最初の階段を過ぎると吹き抜けとなって圧倒的な空間が広がり、更に階段が二手に分かれる二つめの踊り場から一気に視界が開けます。見る人を感動させずにはおかない豪奢で精緻な設計です。


サンクトペテルブルクは、ヨーロッパに開かれた窓のような存在で、ロシア帝国の外交の表舞台でした。着任挨拶に訪れる各国の大使・公使、外交使節は、冬宮に入るとすぐにこの階段を上り、控えの間、そして謁見の間へと通され皇帝に拝謁します。この階段は、ロシアの国力、文化レベルの高さ、皇帝の権威を諸外国に知らしめる役割も担っていたのでしょう。


ピョートル大帝に因んで作られた謁見のための部屋、「ピョートル大帝の間」。玉座は、第4代皇帝アンナ・ヨアノブナが使用したものだそうです。後ろに掲げられた絵は、アルコニーニの手になる『ピョートルとミネルヴァ』。ミネルヴァとは、ローマ神話の知恵と工芸の女神です。


冬宮2階から見る中庭。淡いグリーンで統一された宮殿の外壁は、さわやかさと落ち着きを兼ね備えた気品を感じさせます。


かつてはロシア戦士の彫像が置かれ、その手にロシア帝国各県の紋章が握られていた「紋章の間」。


ナポレオンとの戦いに勝利したことを記念して作られた「1812年祖国戦争の間」には、当時の将軍332名の肖像画が飾られています。右手の大きな肖像画は、このときのロシア軍総司令官クトゥーゾフ元帥。時のロシア皇帝アレクサンドル1世の騎馬像は、この部屋の最も奥まった場所に掲げられています。


ロシア陸軍中将であったパーヴェル・アレクサンドロヴィチ・ストロガノフ(1772-1817)の肖像画。政治家や学者を輩出したストロガノフ家は、ロシアの芸術・文化の保護・育成にも大きく貢献しました。ロシアを代表する料理のひとつとされるビーフストロガノフは、19世紀末にストロガノフ家お抱え料理人が考案したものだそうです。


歴代皇帝が謁見を受けた部屋、「ゲオルギーの間(大玉座の間)」。部屋の周囲を飾る白いカラリア大理石の柱はイタリアから輸入されたもの。ゲオルギーとは、キリスト教の聖人「ゲオルギオス」のロシア語表記です。


玉座にも後ろのタペストリーにも、ロマノフ家の紋章である双頭の鷲が銀糸で刺繍されています。


16種類もの木を使った寄せ木細工の床。豪華に装飾された天井や壁、調度品や美術品に目が行きがちですが、部屋ごとに異なる意匠で作られた床もまた美しいものでした。


レオナルド・ダヴィンチの弟子であり養子でもあるフランチェスコ・メルツィの『フローラ』


小エルミタージュ、パヴィリオンの間に置かれた『孔雀座のからくり時計』。イギリスで製作されたこの時計は、ポチョムキン公爵からエカテリーナ2世に贈られたプレゼントです。


同じくパヴィリオンの間の一角。ドーム型の天井の繊細な装飾、多色大理石の円柱など、洗練された雰囲気のあるコーナーです。歴代皇帝たちが、ここで優雅なお茶のひと時を過ごしたのかもしれませんね。


ナポレオンのロシア遠征(祖国戦争)を退けたアレクサンドル1世のメモリアルホール、「アレクサンドルの間」。金や銀の食器を主体に展示していました。


何気なく飾られている時計も豪華。床のモザイク模様も見事です。


「フランス美術の間」。ロココ様式の天井が優美な曲線を描いていました。


18世紀のフランスを代表する彫刻家、エティエンヌ・ファルコネ 『指を噛むキューピッド』


同じくファルコネ 『冬』


この写真はエルミタージュ美術館一帯を俯瞰したものですが、手前右側の壮大で華麗な建物が冬宮、その左の縦に細長いもの(正面は工事中なのか、幕がかけられています)が小エルミタージュ、写真には写っていませんが更にその左のネヴァ川沿いに旧エルミタージュ、その後に続く部分が新エルミタージュです。エルミタージュ劇場は旧エルミタージュの左側にあり、渡り廊下ですべての建物が繋がれています。宮殿広場を挟んで向かい側に建つのが旧参謀本部で、中央の門より左側(東翼)がエルミタージュ新館です。

(ミュージアムショップで買ったガイドブックより)

「エルミタージュ」とは、フランス語で「隠れ家」を意味します。エカテリーナ2世が、公務を離れた時間の安らぎと憩いを求めるとともに、ドイツの画商ゴツコフスキーから買い求めた225点の美術品などを飾るために建設したのが、最初の隠れ家である小エルミタージュ。その後もコレクションは増え続け、時を経ずして旧エルミタージュ、エルミタージュ劇場が建てられました。
長くなってしまいましたので、一旦ここで小休止しますが、この次も引き続きエルミタージュ美術館の記事をアップする予定です。

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コメント (5)
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