9月1日付、朝日新聞のコラム「経済気象台」に日本企業が、アジア企業に追い越される一因は高すぎる法人税率にあり、これを下げれば企業が潤い、雇用が増え、社会も豊かになるとの記事が掲載されていた。記者は「トリクルダウン」の崇拝者らしいが、現実はそれほど単純ではない。
昨年秋の金融危機発生までの長い間、大手製造業は「いざなぎ越え」といわれたように、決算で最高益を更新し続けていた。当然のように生産性も限りなく上昇した。
これだけの利益に貢献したのは従業員たちだ。ところが経営者たちは、自らのフトコロを潤し、株主には気前よく高額の配当をした。肝心の従業員のフトコロは温まるどころか所得が増えないため、節約を余儀なくされた。
このことから消費者の財布のひもは一段と引き締まり、却って国内の景気冷え込みを加速させてしまった。
輸出産業だけが絶好調でも、内需中心産業は不振を極めた。これでは片手落ちである。しかも自動車・電機に代表される絶好調産業は社会貢献しなかった。派遣や請負の非正規社員たちを容赦なくリストラしたからだ。企業の体力が十分ありながらだった。
こんな身勝手で誠意のない企業に税率を下げる必要はない。景気がいっそう冷え込んで、法人税収入が減少しているところに、法人税率下げどうするつもりか。財源はどこにも書かれていない。断っておくが自公政権が考えていた、消費増税で補填することには断固反対する。
そして、この記事が財界の「回し者」が書いたような内容であることに辟易する思いだ。国民感情を理解しない、思いつきの記事が読者を迷わせないかも心配だ。