一方、病院は24時間体制が当たり前です。その病院で働く勤務医の過酷な労働実態は広く世間に知れ渡っていますが、これが改善されないことから、辞めていく勤務医が後を絶ちません。この現象に歯止めをかけるには、病院が勤務医の待遇改善や人数を増やさない限り、乗り切ることはできません。
こんかい、これを解消することの一手段として、厚生労働省が開業医の再診料金を引き下げて、その浮いた財源を基に、これを病院の勤務医対策に振り向け、待遇改善の一助に役立ててもらう構想を描いていましたが、日本医師会の反対で、ついえたことは残念というしかありません。
これで病院は当分の間、診療報酬増による経営改善効果は絶望的となり、相変わらずの医師不足で救急患者等を受け入れることもできず、たらい回しされ、貴重な人命を損ねる異常状態が今後も続くことにやりきれなさを覚えます。同時に、地域医療の中核を担う病院が倒産の危機に直面している現実も垣間見えてきます。
厚労省が開業医の再診料引き下げ構想を簡単に引っ込めたのは、医師会が自民党に圧力をかけたからです。今年中に衆院の解散・総選挙が予測される中、福田自民党政権は医師会が反発することによる票田を失うことを計算。選挙戦が不利になることを恐れて、簡単に医師会に屈伏して撤回してしまったのです。
医療制度改革も福田自民党政権が、次の選挙を意識しているために問題がどんどん先送りされ、ちっとも改革が進んでいないのが実情です。24時間体制を取らずに時間から時間で、しかも休日や夜間の診療もしない開業医の再診料が710円で、病院の再診料が570円であることを是正しない限り、病院経営そのものが立ちいかなくなることは明らかです。
医師会が開業医の再診料引き下げに反対している理由は、「地域医療に貢献しているから再診料引き下げを認めれば地域医療は崩壊する」ともっともらしい言い訳していますが本末転倒というべきでしょう。もちろん休日・夜間の診療を厭わず、本来の職分に忠実な開業医にまで、引き下げを適用することはできませんが周りを見ても、そのような開業医を見つけ出すことはむずかしいことです。
このような現状を考えれば、政府自民党は必然的に24時間体制で経費がかかる病院に対しては、開業医の再診料を下げてその財源を利用して、一刻も早く病院経営が軌道に乗るように健全な形にしなければなりませんが、あっさりと導入を見送りしました。
無責任な福田自民党政権下では、ますます医療制度崩壊に拍車がかかり、安心した生活が保障されることはありません。ここでも支持率が下がり続ける理由がよく分かります。