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Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

  京都暮らし233. 冬の小さな旅4.

2010年02月19日 | field work
 名古屋からJR東海道線に乗り、米原で乗り換えて北陸線で近江塩津へ向かった。琵琶湖を反時計回りに訪ねようというわけだ。近江塩津の駅で湖西線の列車が来るまでは、1時間程間がある。そこで私は、駅の側の塩津の集落へ出向いた。
 古い民家が建ち並ぶ人の気配が全く感じられない静で小さな集落である。私が集落の中に入り込むと、突然軽自動車が私の前に現れ走り去る。そしてレンズを向けている方向に駐車する。人気のない民家からは、犬をつれたお爺さんが現れて民家の前を往復している。次第に集落の人が現れ、寡黙に私の前を横切ってゆく。
 そんな状況に遭遇したとき、私は「アッヤバイ!、彼らのテリトリーの中に入ってしまったんだ」と気づいた。人気のない集落では、ちゃんと物陰から見知らぬ人間である私をしっかりと観察していたのだ。そしてその情報は、すぐさま集落全体に伝わる。「誰だろう?」、そんな疑問がわくと集落の人間達が行動を開始する。集落は彼らの生活の場であり、よそ者がみだりに立ち入る場所ではない。そんな無言の強い意志を感じさせられた。
 だから私は、集落に入ると、最初に出会った人に必ず挨拶をして雑談をしながら、「大学で建築を教えていて、講義用の資料を集めています」といった具合に、コミュニケーションをしつつ身分を明かすことにしている。そんな雑談が集落を訪れた時には大変重要なのである。集落の誰か一人に話せば、直ちに集落全体に情報が届き人々は安心し、いつもの静かな集落に戻るのである。そして晩には集落の人達の茶飲み話になるのだろう。
 隣の人がどうなっているかわからない都会のマンションに比べれは、日本の集落は、それよりはるかに濃密なコミュニケーションが存在する地域共同体なのである。コミュニケーションが長い年月、集落を支えそして守ってきたのである。この地域ではそうした精神は、今も変わらない。

滋賀県,近江塩津,撮影日2008年2月2日
FUJI S5pro,AF-Nikkor F2.8/80-200mmED
シャッター:1/125,絞りf22,焦点距離70mm,ISO1600.
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