夕暮れとともに寒気が増していた。ただ見ると止まっているようにみえるオホーツクは、その実いっときとして止まっている時がないらしい。
「今夜は紋別に泊まるのですか」
氷原の中程まで来た時、紙谷がきいた。
(美砂曰く)「駅前の小山旅館というところに、泊ることにしました」
(中略)
昨夜、寝る前には、朝早く起きて、流氷の日の出を見るつもりだった。白く輝く氷原の先から朝日が昇ってくる。その時、蒼い海はどのように輝き、氷原に浅く積もった雪はどのように染まるのか。美砂は、昨夜、それを想像しながら眠った。
(中略)
昨日、流氷研究所を教えてくれた丸顔の女中が入ってきた。
「流氷研究所はいかがでしたか?」
「とても楽しかったわ」
一瞬、女中は不思議そうに美砂を見た。流氷研究所を見て、楽しいというのは、わからないと言った表情である。たしかに、研究所は楽しいというより、素晴らしいとか、感心した、とでもいうべきところなのかもしれない。
ただ、美砂は本当に楽しかったのだから仕方がない。
(渡辺淳一『流氷への旅』より)
既に紋別駅はなく、現在は、道の駅になっています。駅周辺で小山旅館を探してみましたが、残念ながら見つからず。道の駅近くの「あんどう」と言うレストランに入り、その旅館の所在地をマスターに訊ねてみました。旅館はレストランから歩いて数分のところにあるとのこと。
早速、その地を訪れてみました。しかし、すでに建物は取り壊され、空き地になっていました。まさに、この場所で美砂は泊っていたのです!
美砂が見た日の出は、どんなだったのでしょうか?
それにしても、低温研はいつまでも楽しく、そして、活気溢れる、若々しい研究所でありたいですね。
こちらにたどり着きました。
10代後半に 知人からこの本を教えていただき
紋別が 大好きになりました。
ずっと 流氷を見たいと思い続け
20年経って 初めて紋別に行き、
流氷を見てきました。
その時に(今から6~7年前)
小山旅館を写真に撮りました。
今はもうないのですね・・・
ビックリしました。
あの時 撮っておいてよかったです。
そして、先日 再度紋別に行く事が出来、
今度は 流氷研究所の跡地に行ってみました。
もう、更地になってしまっているかと思ったのですが
幸い 建物が残っていたので
そこでも 写真を撮ってきました。
とても嬉しかったです。
小説が こんなにも人の生き方や思想など
影響を与えるなんて
すごいですよね。
こちらのブログの主旨とは
ちょっと違う内容でのコメントですので
不適当な際は 削除してくださいね。
でも、小説から紋別の話が書かれていて
とても嬉しかったです。
コメント、ありがとうございます。とても嬉しい限りです。
このエントリーをアップした頃、ちょうど紋別の流氷研究所の整理が行われました。建物は老朽化が進んでいます。
流氷研究所の近くに、北海道立オホーツク流氷科学センターがあり、低温室には流氷が保存されており、一見する価値があります。
道の駅近くの洋食レストラン「あんどう」へは、かつて美砂と紙谷がデートしたのかのもしれません。
そう言えば、オホーツク紋別ホワイトカレー。紋別を訪ねられた時に食べましたでしょうか?ガリンコ号や浮かんでいるホワイトカレーも、一興だと思います。
お返事、とても嬉しいです。
オホーツク流氷科学センターへは、
流氷を見に行った時と、今回、
行きましたよ。
そして、オホーツク紋別ホワイトカレーも
いただきました。
美味しかったです。
『あんどう』さんへは 残念ですが
行かれませんでした。
また 小説を読み直してみようと 思いました(^^)
ありがとうございました。
また コメントさせてくださいね。