昼間のせいで、地下鉄は空いていた。美砂はそれに乗って、南一条まで出ると、来るときに寄った不動産屋に行ってみた。
手頃だという物件を二つほど用意してあった。一つは大学の近くの北二十条で、もう一つは明峯家に近い円山(まるやま)だった。北大のほうは六畳と四畳半で三万円、円山のほうは同じ大きさで三万五千円である。
どうせ家を出るときは、喧嘩同然になるのだから、仕送りはあまり期待できない。考えた末、美砂は北大近くのアパートに決めた。
(中略)
五月の札幌は花の季節だった。
まず梅が咲き、桜が咲く。札幌ではこの二つの花の間にほとんどずれがない。心もち梅が早いというだけで実際には二つの花が同時に咲く。
美砂のアパートは駅から陸橋を渡って、北へ二キロほど上がったところにある。正確には北二十条西七丁目である。
このあたりは戦後開かれた住宅地だが、この数年の宅地ブームですっかり家が密集してしまった。今ではここより先に、大麻(おおあさ)とか、新琴似(しんことに)という団地ができて、このあたりまで都心部に入ってしまった。
(渡辺淳一・「流氷への旅」より)
この写真は現在の北二十条西七丁目です。学生用のアパートも多いようです。小説でも表現されているように、家が密集していますが、東京に比べればとても広々としています。
北二十条西七丁目から徒歩数分で「憩いのお店」(北21条西8丁目3-5)があります。
店内からは北大キャンパスが眺望できます。創成棟がない頃は、手稲山も見ることができたそうです。
このお店の良さは、コーヒーが無料であることです。気に入ったお菓子を買って、店内でコーヒーを飲みながら食べることができます。お菓子は季節によって変わり、秋のおすすめは、なんと行っても「栗きんとん」や「おはぎ」です。もちろん定番もおいています。
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