福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

泥の居住者Sulfuricaulis limicola: 春採湖(はるとりこ)から新属の硫黄酸化細菌を発見

2015-10-27 00:48:33 | 研究
♫ ごろー⤴ ごろー⤴ ごろー⤴ は•る•と•り•こ ♫


中年独身男性•井之頭五郎があちこちの街でディープなグルメ三昧をする『孤独のグルメ』。松重豊演じる井之頭五郎は、いわゆる「結婚しない都市生活者」(an unmarried city dweller)の典型なのかもしれないが、孤独の中にも人生哲学がある。

その番組エンディングテーマ曲(『五郎の12PM』)は、なぜか記憶の中にいつまでも残ってしまう。たとえば、北大病院で治療を受けた後、ちょっとくたびれながら北12条の和食屋へ。店のカウンターで席に着けば、条件反射のように「あのメロディー」が蘇る。

冗談はさておき、小島久弥さんが春採湖(北海道釧路市)から、またまた新属の硫黄酸化細菌を発見し、単離に成功。その名は、Sulfuricaulis limicolaで、無機硫黄化合物の酸化によってエネルギーを獲得して増殖することのできるバクテリアだ。種名limicolaは「泥の居住者」(mud-dweller)、属名Sulfuricaulisは「硫黄を酸化する柄」(sulfur-oxidizing stalk)の意。正式な学名を付けるまでは、「春採五郎(はるとりごろう)」と呼ばれていた(もちろん小島さんによる命名)。

「泥の居住者」。我が身を数ミクロンにサイズダウンして、春採湖の泥の中に住み着いて探検してみれば、未知の微生物や微生物間相互作用をさらに発見できるのかもしれない。

Hisaya Kojima, Tomohiro Watanabe and Manabu Fukui. Sulfuricaulis limicola gen. nov., sp. nov., a novel sulfur oxidizer from a lake. International Journal of Systematics and Evolutionary Microbiology. In press.