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気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Fallen (Amos Decker #4) by David Baldacci

2018-06-05 14:57:42 | 読書感想

Pennsylvania 州、Ohio州との州境に近い町Baronville

休暇でパートナーAlex Jamisonの姉Amber の家に滞在しているFBI捜査官Amos Deckerは雷鳴が轟く夜、隣の家の様子に不審な点を抱き様子を見に行く。そこで彼は不可思議な状態で放置されている2人の死体を発見する。

1人の死体は首を吊った状態で発見されるが、首を吊った男の周りには血だまりがあるが男には外傷がない!もう一人は、死因は不明の警官の服装をした死体、だが駆けつけた警官は男が警官であることを否定する。血だまりは何処から、そして誰の血か?一方の男は警官でないにもかかわらず、何故、警官の服装をしていたのか?警察は男2人の身元も特定できない。

事件の謎に興味を持ったDeckerは、Alexの姉のAmberからこの町でここ3週間の間に未解決の殺人事件が2件起きていることを教えられる。

殺害現場 自動車修理工場 被害者2名

Michael Swanson. 黒人、30代、麻薬売人 頭部を銃で撃たれて殺される

Bradley Costa 白人、35歳、銀行の副支店長、 銃殺、額にギリシャの死神が刻印されていた


殺害現場 銀行所有の空き邸宅。被害者2名 ショットガンによる射殺

Joyce Tanner. 白人53歳  失業中

Toby Babott. 白人、40歳 作業中の怪我による障害者

殺人犯は壁に聖書の一節を書き残していった

他の現場で殺された被害者はもちろん同じ現場で殺された被害者同士も顔見知りではない。彼らが何故一緒に殺されたのか、警察は突き止めることができずにいた。

Deckerは、この事件を担当する刑事に捜査への助力を申し出て、彼らの了解の下、一連の事件の捜査に着手する。彼は この小さな町で連続に起きている殺人事件は関連性があると考えて、一見繋がりがなさそうな犠牲者の繋がりを探っていく。

捜査を進める彼は、かって鉱山町として繁栄した町が鉱山の廃業と共に寂れていく様子、それに連れて人々も坂道を駆け下りるように、堕落へ一直線に落ちていく状況を目にする。そして、聞き込みをかけた人々全てが、彼に嘘をついているように彼は感じる。

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彼が発見した遺体の身元を突き止める方法や続けざまに起こった殺人事件の一見繋がりがなさそうに見える人々のつながりを探し出す手腕にはワクワクする。

しかし、犯罪の動機となりそうなものが複数あって焦点がなにか分かりづらい、また犯人も複雑に絡みあって、ちょっとプロットが凝りすぎでそこまではやりすぎではと思わせる。


E-book(Kindle版)★★★ 432ページ 2018年4月出版 997円(2018年3月購入)



The Wrong Side of Goodbye (Harry Bosch #19) by Michael Connelly

2018-04-22 10:39:45 | 読書感想

私立探偵のHarry BoschはLAPDの元副署長でセキュリティ会社を経営するCreightonから会いたいという電話を受け彼に会いに行く。そこでBoschは彼から大企業のオーナーであるWhitney Vanceが彼に仕事を依頼したい、内容は会った時に話すと伝えられ前金として1万ドルのチェックを渡される。

VanceはBoschに依頼内容を明かさないという誓約書にサインさせた後、自分に子供がいるかどうか調べて欲しいと告げる。彼は10代のころ父親の意に反して映画監督を目指していたが、メキシコ人の女性と恋に落ち、女性は妊娠する。しかし、それを知った父親が赤ちゃんを堕ろすよう女性を説得するが、彼女は何処ともなく姿を消す。以来、彼は彼女の消息を知ることはなかった。彼は父親の言いなりになって彼女を諦めたことを85歳になった今、深く後悔していた。

Bosch は彼の傷みを理解し、仕事を引き受けることを承諾する。彼はコールドケースを扱った時の経験を活かし、名前Vibiana Duarteと彼女がカソリック信者であることしか分からない状況から徐々に彼女の身元、そして子供を産んだかどうかの真相に迫っていく。

一方、彼がLAPDから半ば強制的に退職に追い込まれたことを知ったSan Fernand警察の署長は、無給という条件ながら彼に刑事の職を提供する。彼はその要請を受け、彼を除くと二人の刑事しかいない小さな警察署のパートタイムの刑事になる。彼は未解決事件の捜査ファイルを見直し、ここ4年間で4回のレイプ事件を起こしている犯人の存在に気づく。彼は、侵入手段が窓のスクリーンをナイフで切り裂いて侵入することから、レイプ犯をScreen Cutterと名付けて彼を逮捕することに全力をあげていた。彼は、Screen Cutterが次の犯行を計画していることを確信して、次なる犯行時にこの男を逮捕することを決意する。そして予測したように犯人が行動を起こし、Boschは直ちに現場に向かい、残された証拠品や現場の状況から犯人を特定すべく捜査を進めていく。

そんな中、Vanceに依頼された件で思いがけない出来事が起き、彼はレイプ犯と相続人探しの件、どちらを優先させるのかの選択を迫られることになる。

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一気に読みたいというほどの面白さはなかった。パートタイム無給の刑事という身分がイマイチわからなかった。ただ、パートタイムという身分が容疑者を取り調べるときの枷になって、Boschが自ら容疑者を尋問することができず、取り調べ室を追い出されて歯噛みするところにその身分の不安定さを感じさせる。私立探偵でもある彼は、情報を得るためにこっそり警察のデータベースを利用している。どちらの仕事を優先するかは彼が決めていいようで、その点で彼は大失敗をする。

貧しい暮らしをしている女性のところに黒塗りの車に乗った男がやってきて実はあなたは大金持ちのお父さんの娘さんです、というシンデレラストーリーを読むのは大好きで、父親と子供との感動的な出会いを期待したのだが…まあ作者はロマンス作家ではなくミステリー作家だから仕方ないのかもしれない。でも最後はしんみりする終わり方で良かった。

普通見落してしまうようなことから見事に犯人へと迫って行くBosch の推理はいつもながら見事で感心してしまう。たとえば、犯人が逃げる時の様子から手がかりを得る推理、我々も成る程なと思わせるほど論理的で素晴らしい。

余談だけれど、カリフォルニア州で刑事をやるにはスペイン語を話せることが必須になってきそうだ。


E-book(Kindle版)★★★ 448ページ 2016年11月出版 664円(2018年3月購入)



Beauty With A Bomb by M.C.Grant

2018-03-28 18:48:42 | 読書感想

2015年PWA BEST ORIGINAL PAPERBACK P.I. NOVEL候補作

SAN Francisco

ビルの屋上から飛び降りようとしている妊婦と思われる女性を説得しようとした刑事のFrank Furyは、彼女からレポーターのDixie Flynnと話したいと要求される。やがて、やって来たDixieに、彼女は自分はAnia Najak、ポーランド人だと名乗り、自分のことを調べて記事にしてほしいと頼み、 止めようとするDixieを振り切りビルから飛び降りる。そして落下する途中、彼女の体は爆発する。その爆発のショックで近くのビルの窓ガラスが割れ、ガラスの破片による負傷者が発生し、また近くに止められていた車の警報が鳴り響き、飛び降りる様子をスマホに映そうとしていた人々は彼女の血に染まる。Dixieは、彼女は帝王切開で赤子を取り出され、代わりに体内に爆発物を埋め込まれていたことを知り、そのような手術を施した人物に怒りを覚える。また、単なる飛び降り自殺と見ていた警察は自爆テロの可能性が出てきたことで騒然となる。Frankは事件を人々を恐怖に陥れようとするテロリストの警告だと主張するが、Dixieは、今までにポーランド人がテロを行ったことはないことから女性はテロリストではなく、人々を傷つけないように場所を選んで自爆したと考え、彼女のことを調べ記事にすることを決心する。彼女は同僚に最近6か月以内のポーランド人コミュニティに起こった暴力事件があるかどうか調べるよう頼む。そして自らは、裏社会に詳しい賭け屋の男に最近ポーランド人の間に何か変わったことがないか聞きに行く。彼女は男から情報を得ることはできなかったが彼のボディーガードのポーランド人Jakubという男から呼び止められる。彼は、記事に出さないことを条件に、Aniaのことに関して、彼の叔母Irenaに会ってほしいと告げる。

Irenaはポーランドからアメリカへ不法入国する女性達を悪質な密入国業者から守ろうとする組織に属していた。Irenaは、密入国した女性たちが行方不明になっている事件が頻発していると話し、Aniaも行方不明になっている女性の1人であったとDixieに告げる。

数日後、DixieはAniaの叔母に会わせるというIrenaの伝言で彼女達に会いに行く。彼女達は戦闘服を身に着け、これから売春組織に女性たちを売ろうとしている密入国業者を襲い、女性たちを救い出すとともに、密入国業者からAniaに爆発物を仕掛けた人物を聴きだすつもりだと言い、Dixieに参加することを求める。Dixieは直ちに承諾して彼女らから渡された武器を手に救出作戦に参加する。彼女たちは密入国業者の不意を襲い女性たちの救出に成功するが、Dixieが警察に通報してる間に密入国業者は逃走してしまう。Dixieは密入国業者からの報復を危惧して、彼女達の身が危険であることを警告する。だが、彼女の危惧が的中する事態が発生し、彼女は仲間の女性の身を守るために自ら敵地に乗り込んで行く。

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殺し屋から刑事まで多彩な交友関係を持つ女性の事件記者がその人脈を通じて誰よりも、警察よりも早く事件の核心に迫って行く…と思っていたらこのヒロインのタフなこと。悪人と対等に渡り合う、恐れ知らずに犯人のアジトに潜入する。隠し持った武器で容赦なく悪人を殴打する。仲間に加わった襲撃では、味方の女性達も彼女の凶暴さに怯える。捕まえた男達が逃げたことを知り、殺せば良かったと後悔する女性達に、殺すよりも警察に引き渡すことが大事だと言いながら、いざ自分がその場に立つと殺しを厭わない。痛快爽快な劇画調の物語。

ただ、妊娠した女性の胎内に爆弾を収納してテロ行為を行うという動機はユニークだったけどいまいち納得がいかない動機だった。

Kindle読み放題に入っている人は絶対のおすすめです。


E-book(Kindle版)★★★★ 266ページ 2014年9月出版 読み放題(または900円)





The Twelve Lives of Samuel Hawley by Hannah Tinti

2018-03-18 09:15:42 | 読書感想

2018年 MWA Best Novel 候補作品

10代の頃から全米を転々としながら窃盗、強盗、盗品の運び屋、金の取り立てなどを繰り返す無頼な生活を送るSamuel Hawleyは、自分がいるべき場所はここではないと感じ、何時か、この生活から抜け出すことができる何かが起きることを期待していた。

そして、ある日、Hawleyは、永年の犯罪仲間である男から彼が刑務所で知り合った犯罪ブローカーの男に金を届けてほしいと頼まれる。待ち合わせ場所の食堂で男を待っている時、Hawleyは、葬儀帰りだという若い女性Lilyに出会い、自由奔放に振る舞う彼女の魅力に引き付けられる。やがて、金を受け取りに男がやって来るが、男は彼女を見るなり、彼女の父親の知り合いだと名乗る。そして、彼女の父親に金を貸していると言い、立ち去ろうとする彼女の腕をつかみ、彼女から金を取り立てようとする。Hawleyは、彼女を守ろうとして男と格闘になり、男に金を渡すことなく彼女が乗ってきた車でその場を立ち去る。

やがて二人は結婚する。Hawleyは、Lilyのためまっとうな生活をしようとするが、過去のしがらみから逃れることができず、そのために愛する彼女を失う。彼は二人の間に生まれた一人娘Looのため完全に過去のしがらみを断ち切る決心をする。そして、Looが12歳の時、Lilyの母Mabel  Ridgeが住む町に娘と共に移り住み、漁師として生きる決心をする。Mabel は娘は犯罪者と結婚したために亡くなったと信じ、彼らと交流することを拒否する。また、町の人々も、幾つもの銃弾の傷跡を持つ彼の特異な容貌から彼と一定の距離を置いて接触しようとせず、その影響から娘のLooも学校でいじめなどに会う。しかし、Lilyの同級生だっという校長の支援を得て徐々に二人はこの町で生活の礎を築いていく。

だが、平穏な生活を送ることができると考えていたHawleyは、やがて、断ち切ったはずの過去のしがらみから逃れられないことを知ることになる。

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ミステリーというよりは家族愛を描いた小説。ミステリーとしては不満だが、家族がお互いを愛し合う姿は感動的だった。犯罪者だった男に愛する妻ができ、そして娘が生まれ、男は犯罪から足を洗い、まっとうな仕事についていこうとする。しかし、過去のしがらみから最愛の妻を失う。最愛の人を失った悲しみから、男は過去のしがらみを切り捨て、娘のために生きようと奮闘する。父娘の強い絆、お互いの愛情、うまく娘への愛を言い表せない父親の不器用さ。妻が死んだ後も、彼女の存在を忘れないよう、写真や遺品を飾り、妻の記憶がなくならないようにしている男の妻への思慕。そして娘の強さ、学校でいじめにあいながらも父親に話さず、自らの力で解決していく。乳児の時に亡くなった母親の手袋をこっそりはめて母親を想う姿。Lilyが娘のために命をかける姿。母親Mabel に自分の結婚を認めてもらおうと深夜遅くまで一生懸命にへやを掃除するLily。娘や孫を犯罪者である男から切り離そうとする祖母Mabel  Ridgeの娘、孫への愛情。

先へ先へと読ませてくれる面白さがあった。


E-book(Kindle版)★★★☆  496ページ 2017年3月出版 536円(2018年購入)



She Rides Shotgun by Jordan Harper

2018-02-25 10:21:54 | 読書感想

2018年 MWA 新人賞候補作

カリフォルニア州、 Aryan Steelとして知られる白人ギャングのボスCrazy Craig Hollington は弟をNate McCluskyという男に殺される。彼は報復として、Nateばかりでなく、彼の離婚した妻Avis、ふたりの間に生まれた娘Pollyの3人を殺すよう 傘下の組織に指令を出す。

11歳のPollyは放課後、校門で彼女を待ち受けていた父親に会う。彼女は、生まれて以来父親に会ったことがなかったが、男が父親であることを会った瞬間にわかる。彼女は母親から父親は犯罪者で刑務所に、後4年は収監されていると聞かされていた。彼女は父親は脱獄したと考えて、この事態にどう対応していいのか分からず、顔や腕に切り傷や入れ墨が散りばめられた父親の異様な姿を呆然と見つめていた。

NateはPollyに自分が父親であると言い、彼女についてくるよう話し、停めてあった盗難車に彼女を乗せる。Pollyは車の中で、何故父親が彼女を迎えに来たのか?母親はどうして娘との接触を拒否していた父親を迎えに来させたのか?父親は車を運転している時、何故、始終後ろを気にしているのか?疑問が頭を駆け巡っていた。

Nateはモーテルに部屋を取り、途中の店で買った子供用のバットを彼女に手渡し、自分は出かけるが誰も部屋に入れてはいけないと話し、青い稲妻の刺青をした男たちは悪人であると言い、彼らを見かけたらバットで殴るよう指示し、彼女をいっそう不安にさせる。そんな彼女の不安を彼女が片時も離さない熊のぬいぐるみが癒す。

Pollyをモーテルに残したNateは 離婚した妻でPollyの母親であるAvisの家に向かうが、彼女と夫が殺されているのを発見する。そして現場に残された吸い殻の様子から殺人者は、二人を殺した後も殺害現場に潜み、Pollyが帰ってくるのを待ち伏せていたことを知る。彼は自分のために元妻が殺され、娘の命が危機にさらされていることに強い後悔を感じる。

彼はこの事態を打開するまでPollyを従兄弟に預けようとするが、従兄弟は自分の身を守るためにAryan Steelに協力を誓い、彼は組織の一員の待ち伏せに遭遇する。彼は、ほかにPollyの命を守ってくれる人物を探し出すことができず、彼女を連れて行動することを決意する。

Pollyは父親から母親が殺されたことを告げられ、ショックを受け無力感に襲われる。そんな時、彼女は、テレビニュースが母親が殺された事件を流し、彼女が行方不明になっていると報じているのを見、さらに警察の情報提供を求める電話番号が表示されるのを見る。彼女は母親が殺され、自分の命も危ないという事態にどう対処して良いのか分からず、警察に助けを求めようとして、その電話番号に電話する。そのことが父親を再び刑務所に収監することになると気づいていたが・・・。しかし、担当刑事との電話中に父親が戻ってきたことを知った彼女は途中で電話を切る。そして、重傷を負った父親を見た彼女は、母親を失った彼女に残された者は父親しかいないことに気づき、彼とともに行動することを決意する。

やがて二人は、Nateが得意とする手段でCrazy Craigが発した殺害指令を撤回させるための行動を起こしていく。

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正義というものがない、犯罪者対犯罪者の戦い。巨大組織の配下になることを拒否したため組織のボスから命を狙われる札付きの犯罪者である男、その巻き添えに会ってしまった母親と娘。

何といっても印象に残ったのは戦士の目をもつPollyとその相棒(?)の縫いぐるみの熊。

巨大な犯罪組織から殺人指令を出され、彼らの目を逃れながら父親が殺人指令を取り消させるよう行動するのを見守る娘。暴力や拷問も辞さない父親の修羅場を目をそらさずに見ている彼女の様子を読むと、彼女も徐々に犯罪に染まっていくようで、子供は健全に育って欲しいと願うおじさんとしては、少女がどこまで父親の犯罪に深く関与していくのかヒヤヒヤしてしまう。

Pollyは、本で読んだ金星に惹かれる。金星は、表面は雲に覆われ穏やかな美しい星に見えるが、その表面の内側には酸性の雨風が強烈に吹いている。彼女も、外見は穏やかそうだが内には荒ぶる魂を持っていて、自らを金星人と信じている。それゆえ、彼女の表面を突き破って荒ぶる魂が現れると、他の人が止めることができない行動を起こす。たとえば、父親が助けることができないと思っている男の命を助けるために銃を持って飛び出していく。衝動の強さは驚嘆するほど気持ちがいい。

ストーリーの流れを見るとどうやってハッピーな終わり方にできるのか予測できなかったが、僕的にはホッとした終わり方だった。

E-book(Kindle版)★★★☆   277ページ 2017年5月出版 1200円(2018年2月購入)

 


The Dime by Kathleen Kent

2018-02-17 10:57:22 | 読書感想

The 2018 MWA Nominee for Best Novel

テキサス州ダラス、9月

人目を引き付ける燃えるような赤毛と長身の女性、Betty Rhyzyk(Riz)。祖父も父親も警察官という家庭に育った彼女は当然のように警官になる。そして恋人Jackieが母親の介護のためダラスに移りたいという要望を受け、生まれ育ったブルックリンからダラスに移る。そしてダラス警察の麻薬捜査課に2年、5人の捜査チームの責任者となった彼女は、初めて麻薬取引の現場の張込みの指揮を取る。しかし、そこで起きた予想外の出来事から麻薬組織に張り込みを気づかれ、麻薬密売人Bender、一般市民、警官の3人の死者を出す事態になり彼女は慄然とする。

上司から予想外の事態にも対処できるよう捜査体制を整えなければいけないと叱責されたRizは現場から逃げたメキシコの麻薬カルテルのボスRuizの逮捕に全力をあげる。彼女はRuizの居場所を探るため彼の恋人Lana Yuを訪ねるが、そこに隠れていたRuizを取り逃がしてしまう。彼女はRuizはメキシコに逃げず、このダラスに潜伏していると考え、各警察に彼が逃走した車の手配を依頼する。また彼が再び接触しようとする可能性を考えLanaの家を見張らせる。さらに密売人Benderの家の捜索が不完全だと感じた彼女は、隠し金庫などがないか徹底的に捜索させようと、Benderの家の捜索を部下の刑事に指示する。そして捜索に出向いた刑事から、Lanaの死体を発見したという報告を受ける。Lanaは 両耳を切り落とされ、首を鋭利なナイフで切り裂かれて殺されていた。Rizは尋常ではない殺しの手口からLanaの殺害は犯罪組織の仕業の可能性が高いと考え、メキシカンマフィアやチャイニーズマフィアなど犯罪組織に詳しい情報屋に殺人の手口に心当たりがないか当たっていく。そんな中 、彼女はRuizが逃走に使用した車を発見したという地元の警察の連絡を受ける。現地に向かった彼女は、Ruizの一味のメキシカンマフィアと遭遇、銃撃戦の上、Ruizが隠していた資金と大量の麻薬を近くの廃屋から発見し、押収する

Ruizを逮捕することはできなかったが、彼の資金とドラッグを押収したことからRuizの麻薬組織は壊滅したと思われた。麻薬取り締まりが仕事である彼女は、Lana殺害の捜査は殺人課に任せ、自分たちのRuiz関連の捜査は終了したと考え、次のドラッグ組織の摘発に捜査を移行しようとする。そんな時、彼女の自宅にLunaの殺人犯からの強力なメッセージが届き、彼女を恐怖に陥れる。殺人犯は鍵の掛かった彼女の家に音もなく侵入し、彼女の恋人が眠っている傍にメッセージを残していく。メッセージをの意味が警告なのか、それとも他のことを意味するのか?彼女は、言い知れぬ不安に襲われる。そして自分だけでなく、恋人の身にも危険が及ぶことを懸念した彼女は、Ruizの事件は殺人課に任せるよう命じた上司の命令を無視して、チームのメンバーに密かにこの殺人事件の捜査を行うよう命じる。

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テキサス州という保守的な州で、堂々とレスビアンであることを公言し、人々の冷たい視線にひるまない彼女。無残な死体を見てトイレに駆け込むことを予想している男の刑事達に反発して、じっと死体を観察する彼女。女性が上司であることに嫌悪感を持つ部下の刑事達をうまく操縦して(ゴマすり?)、捜査チームをまとめていこうと頑張る彼女。とても応援したくなる。その成果があがり(?)、最初、ギクシャクしていた捜査チームが徐々にまとまっていき、犯人に迫っていく。彼女の推理力よりもチーム一丸となった捜査力が印象に残った。ただ、後半はちょと読むのが辛くなるシーンが長く続いたのでしんどかった。


E-book(Kindle版)★★★ 352ページ 2017年2月 548円 2018年2月購入



Breaking Point ( Lucy Kincaid #13 ) by Allison Brennan

2018-02-08 13:32:58 | 読書感想

18年前、Bella Carusoは父親によって売春組織に売られ、売春を強要されていたが、それを知った兄JT Carusoに救出される。そうした自分の悲惨な経験から、彼女は大金持ちのSimon Eganが作った売春組織から少女たちを救うことを使命とする組織に賛同し、3年前に12年間勤めていた警官の職を辞し、その組織のもとで働いていた。

今、彼女は、少女の祖父の依頼を受けて、15か月前 義父によって売春組織に売られた13歳の少女Hope Andersonの行方を探していた。Bellaは、一年前、 Martin Hirschという男の組織が彼女を買ったことを突き止め、彼女の救出のためHirschの組織に医師と偽り加わる。HirschはLaからアリゾナ州のフェニックス、さらにテキサス州まで国道沿いに売春拠点を設け、人身売買で得た少女たちを拠点に供給していく巨大な売春組織網を構築しようとしていた。だが、一年に亘る潜入捜査にも関わらず、彼女はHopeの手掛かりを得ることができず、彼女はHopeの生存を疑い始めていた。しかし、Hopeの生死が確認できないまま潜入捜査を撤退することは、最後の望みとして彼女の組織を頼ってきたHopeの祖父を失望落胆させると思い、彼女は撤退を躊躇していた。そんな中、彼女は組織に囚われている二人の少女を彼女の組織に協力的な地元の警官の協力を得て逃がそうとする。だが、少女たちは逃走に成功するが警官は組織に捕まってしまい、彼女の目の前で拷問の上殺される。彼女は警官が自分の名を漏らさなかったことに安堵しながら、彼らが内通者を調べ始めることに危機感を感じ組織からの引き上げたいというメッセージをDeclan Crossに送る。Declan CrossはBellaの潜入捜査のバックアップを行っていたが、昨日から彼女の所在を掴めず、不安になり彼女の兄でかっての戦友仲間であるJTに協力を求める。彼女は撤退したいというメッセージを彼に残していた。さらに彼は彼女を支援していた警官が拷問されて殺されているのを発見して彼女の身の安全を心配していた。

JTはSimonを信用しておらず、Bellaが彼の組織に加わることに反対、以来、彼女との連絡は断っていたが、彼女と行動を共にしたDeclanに彼女の警護を頼んでいた。連絡を受けたJTは、Bellaが危険な潜入捜査に従事していることを知り、彼女に潜入捜査を指示したSimonに会いに行き,Bellaの居場所を突き止め、任務から外すよう要求する。Simonは彼女は安全だと言い張り、彼女の仕事の重要さを指摘し危険な状況にならない限り任務を続けてもらうと主張する。JTはSimonを頼ることをやめ、テキサスに拠点を置くRogan Caruso Kincaid Protective Services(RCK)のパートナーであるJackKaneに協力を依頼してRCKがBellaの捜索に乗り出し、彼女を無事連れ戻すことを決断する。彼らは Jackの妹でFBI捜査員Lucyの助けを求める。Lucyは過去に人身売買組織を壊滅させたことがあり、人身売買組織に精通している彼女の知識は捜査に不可欠だった。

テキサス州サンアントニオのFBI支部に所属するLucyは新任の上司Rachel  Vaughnと確執が生じていた。ここ2か月 彼女は現場の仕事には行かせてもらえず、迷宮入りの事件の捜査資料の整理を命じられていた。Rachelは彼女に、毎日、レポートの提出を要求し、事細かに彼女に資料の扱い方を注意していた。

そんな時、KaneがLucyを訪ねてきて、Bellaの危機的状況について話し、彼女にFBIのデータで Martin Hirsch.について調べて欲しいと頼む。Rachelとの軋轢に悩む彼女は、恰好の気分転換になるとしてFBIの犯罪記録のデータベースで彼を調べるが、そのことがRachelの知るところとなり、彼女はLucyがデータを私用の目的で使ったと叱責し、FBIのデーターを私的に使うことを禁止し、またRCKが行っている捜索に関与しないよう警告する。しかし、Lucyは彼女がピンチの時、いつもJTが助けてくれることを思い、彼の妹が窮地に陥っているのを見過ごすことはできないとして、仕事が終わった後の時間を利用してBellaの行方を探すことを決意する。

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潜入捜査の緊迫感,何時身元がバレルかも知れないという恐怖、緊張感、応急手当などの要領はあらかじめ教わったというが医師でないBellaが医師のふりをしていることが発覚するのではないか、潜入した売春組織のボスの残忍な性格を知るにつれ正体が分かってしまった場合、どんな残酷な仕打ちが行われるのか気が気でなく、Bellaが主体の章から他の章に代わるとホッと一息。また新任の上司の鋭い舌鋒に反論もしないまま窓際に追いやれたLucy,Bellaの捜査はどうなるんだとイライラさせられるが、まあっ、最後は捜査の主導権を握り、彼女の明晰な推理で売春組織にせまっていき、読む者を爽快な気分にさせてくれる。ただ僕的には、Hirschという男、あまりに残酷なやつなのでもっと徹底的に痛めつけて、読む側の鬱憤を晴らして欲しかったのだが・・・・、終わりはあっけなかったのであれっと拍子抜け。

Lucy Kincaidシリーズ、以前のシリーズも読みたいと思うと、前のシリーズの登場人物の名前が出てきて、ネタバレになっているところがある。僕としてはこのシリーズを読むきっかけになったDead Heatから読むのがおすすめです。


E-book(Kindle版)★★★★  418ページ 2018年1月出版 994円(2018年1月購入)



Love Me to Death (Lucy Kincaid #1) by Allison Brennan

2018-02-01 19:09:41 | 読書感想

Washington、DC。6年前にレイプ被害にあったLucy Kincaidは、自分のような犠牲者を出さないために性犯罪者を捕まえるFBI捜査官になることを決意し、FBIの採用試験を受ける。そして採用を有利にしようと考えて、上院議員の事務所、保安官事務所などを経て、現在は検死官事務所で研修を受けていた。また3年前から彼女は女性と子供を性犯罪者から守るボランティア組織WCF(Women and Children First)に属していて、保釈されたレイプ犯がネットの交流サイトなどでターゲットの女性を探し、犯行を行うことを防ぐ作業に従事していた。彼女は、偽名を使ってネットで彼らと接触し待ち合わせ場所と日時を決める。その情報をWCFと懇意にしている警官Cody Lorenzoに伝え、彼女の代わりに彼をその場所に向かわせ、レイプ目的でやってきた男を逮捕させ、刑務所に送り返す仕事を彼女は行っていた。ここ2週間、彼女はドラッグを使用して女性をレイプするBrad Prenterという男に注目していた。3か月前に保釈されたPrenterは、すぐに、ターゲットになる女性をオンラインの交流サイトで探し始めていて、Lucyは偽名を使って彼とメールのやり取りをし、今日、デートの約束をすることに成功する。すぐに彼女は待ち合わせ場所をCodyに連絡して、レイプ犯をひとり刑務所に送り返すことができると喜ぶ。

翌日、検視官事務所の研修から自宅に戻った彼女を二人のFBI捜査官が待ち構えていた。

Noah Armstrong捜査官は彼女に6年前彼女をレイプしたMortonが波止場で殺されたと話し、事情を聴きたいと話す。彼女はMortonが殺されたことより、わずか6年という短い刑期で彼が釈放されていたことに衝撃と怒りを感じる。そして、彼女以外の家族誰もがその刑期について知っていて彼女に秘密にしていたことにも。

Noah捜査官は殺されたMortonが睾丸を蹴りつぶされていたことや後頭部を銃で撃たれるという処刑スタイルで殺されたことから、殺害犯は彼にレイプされた被害者、もしくは親族と考えていて、彼にレイプされたLucyの犯行を疑っていた。しかし、彼はLucyの衝撃を受けた様子から彼女を容疑者の候補から外す。Mortonは釈放の条件としてColorado州、Denverの自宅からの移動を禁止されていた。DCに来た事実が発覚した場合、彼は刑務所に終生収監されることになる。そんな危険を冒してまでMortonがDCに来た目的は何か、Noahは彼の意図を探るべく、6年前の事件の捜査資料の検討と当時の事件関係者とMortonとの接点についての捜査に全力をあげる。

Mortonの事件に衝撃を受けているLucyは、何気なく目を通した新聞記事から、Prenterが射殺されたという記事を発見し、さらなる衝撃を受ける。Lucyは、彼が待合せ場所には現れなかったと張り込みしていたCodyから伝えられていた。だが彼は、他の酒場でLucyを待ち、その酒場の近くで殺されたことがわかる。そして、その待ち合わせ場所の変更のメールは彼女の名前で送られていたことが明らかになり、Lucyがレイプ犯を殺した過去があることを知っているCodyは彼女の犯行を疑い、彼女は窮地に陥る。彼女は兄の仕事のパートナーで彼女に一目惚れしてしまったSeanの支援を得て、窮地を脱すべき真相に迫っていく。

そんな彼女の一挙手一投足を見守る男の存在に気づかずに。

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Lucyは主役としてはあまり目立たない、捜査はFBI捜査官とSeanが主体となっているようで最近のシリーズを読んでいる者としてはちょっと期待外れ。ただSean,Noahとバラバラだった捜査の焦点が一点に集まってきた後半は緊迫感があって良かった。6年前の出来事から立ち直るかと思うと立ち直れないLucy、レイプ被害者の現状を著者は書きたかったのかもしれないが、彼女のひ弱さが目立ってしまい、Seanに寄りかかろうとする姿勢は不満だった。ただレイプ被害者の苦悩の実情、レイプ犯が軽い刑ですぐ保釈される実態、法の不備がこの本を通して伝わってくる。


E-book(Kindle版)★★★ 576ページ 2010年出版 399円 2018年1月購入





This Thing of Darkness (Fiona Griffiths #4) by Harry Bingham

2018-01-22 19:04:14 | 読書感想

3月、イギリス、ウェールズ、South Wales署の刑事Fiona Griffiths(Fi)は巡査部長の試験に備えて上司DCI Jacksonの計らいで現場から離れて迷宮入りとなった事件の書類整理を行っていた。与えられた事件のほとんどは退屈なものだったが、その中で2つの事件が彼女の興味をひいた。

ひとつは18か月前、酒に酔った電話架設工事会社の警備員Derek Moonが誤ってGowerの崖から落ちて死んだ事件、男はその道をよく知っており誤って崖を踏み外したとは考えづらい、致命傷となった頭部の打撲は落ちた時の岩で受けた傷というより、誰かが鉄棒で正確に狙って殴ったように見える。頭部の傷が崖から落ちた時に岩によって受けた傷とするなら、捜査資料ではその岩を特定できていなかった。

もう一つは4年前に起こった美術品窃盗事件。Plas Duと呼ばれる豪邸、ピカソやマチスの作品等40万ポンド相当の美術品が盗まれる。窃盗犯は2階の窓を割って侵入したと思われた。しかし、窓のある壁は真っ平で梯子などを使わない限り侵入することは不可能であり、窓の下の地面にはそのようなものを使った形跡はなかった。捜査担当した刑事は内部犯行を疑ったが犯人を特定することはできなかった。Fiは窓の下に落ちていた窓ガラスの破片の状況を鑑識課員に述べ彼の意見を求める。彼女は鑑識課員から窓ガラスは外から割られたと断言され、犯人は不可能と思われる窓から侵入したことを知る。また彼女は、屋敷の所有者Marianna Lockwoodが彼女が密かに捜査している犯罪シンジケートの一員Galton Evansの別居中の妻であることを知り、この事件に興味を惹かれる。

そんな中、Kirsty Emmettという女性が  Gabalfa地区で拉致されたあとレイプされ川の傍に放置される事件が発生する。証拠品担当の刑事Iforは、上司であるJackson を通して証拠品を整理分析する手助けをFiに求めて来る。以前彼らを手助けした経験からその仕事は退屈であることを知っている彼女は、迷宮入りとなった事件の再捜査をしたいと言って断ろうとするが、上司であるJackson が彼らを手助けするよう命令、しぶしぶその任につく。彼女は事件担当の刑事Owen Dunwoodyが無能なのも知っており、彼の下で働くことに苛立ちを感じる。

彼女はIforの許可を得ることなく仕事の合間を縫って、気になる2つの事件の現場に向かう。改めてMoonが事故に会ったと言われる崖を実況見分したFiは、崖の形状から下の岩の様子が見えないことを知り、Moonは誤って崖から落ちたのではなく、殴打されて殺されたと確信する。

また後日、侵入した手口が不可解と思われるPlas Duを訪れたFiは応対したMarianna  Lockwoodから絵は取り戻したから捜査の必要はないと告げられる。窃盗犯は、Mariannaが美術品の盗難保険をかけた会社、彼女の夫Galton Evansが経営する保険会社に盗んだ美術品を買い取るよう要求、彼女はGaltonに買い戻すよう頼み、会社が要求額を支払った数日後美術品は戻ってきたと、彼女はFiに話す。Fiは彼女を説得して捜査のために家への出入りの許可を得、表向きはレイプ事件の証拠品の整理が自分の仕事だと言い聞かせながら、未解決の不可解な事件の再捜査、そして彼女が投獄することを目標にしているGaltonが関与しているかもしれない事件の捜査に着手できることに興奮する。

Fiは窃盗犯についてある人物像を描いていて それはMoonの殺人事件とも関連性を持っていた。彼女はMoonが電話架設工事会社に勤めていたことから、殺害の動機を会社に関係したことではと考え、電話工事に関して他に何か犯罪か事故が起こってないか警察のデータベースで調べる。そして2か月前Ian Liveseyというアメリカ人の海洋技術者がBristolの自宅アパートで首を吊って死んでいる事件に注目する。玄関のドアには鍵がかかっており、部屋も荒らされたようすがないことから警察は自殺と断定していた。しかし、Fiは、死の直前、Liveseyと電話で話したという彼の恋人の証言から、彼は殺されたと確信する。たとえ、ドアがロックされていても部屋に侵入できる方法を彼女は捜査中の二つの事件と結びつけることによって知っていた。2つの殺人事件と不可解な窃盗事件とのつながりを発見した彼女は、事件の背後の巨大な陰謀に気づき始める。しかし、Galtonはこれらとどういう関係があるのかないのか?警察の捜査に限界を感じた彼女は元刑事のPenryを雇い、非合法な手段で情報を収集しようとする。そんな彼女を拉致しようと近づいてくるグループがあるとも知らずに・・・・

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長い!テンポが遅い、ちょっと読むのに疲れてしまう。もうちょっとコンパクトに物語をまとめて欲しかった。

レイプ事件、迷宮入りとなった事故死、自宅での首つり自殺、そして侵入不可能と思われる2階の窓から美術品の窃盗・・・事件を欲張りすぎている感じで名前や地名が出てきてもどの事件に関係しているのか戸惑ってしまう。

死者の写真を部屋に飾って心の安らぎを得たり、非合法なマリファナを吸ったり、相変わらずキャラクターはユニークで魅力的。推理力も抜群であるし、捜査の手法も警官という枠にはまらない翻弄さで痛快。

ただ、今回の犯罪の動機はスケールが大きすぎてどうもピンとこなかった。

E-book(Kindle版)★★★ 511ページ 2015年7月出版 551円(2017年購入)



The Good Daughter by Karin Slaughter

2018-01-15 19:21:59 | 読書感想

ジョージア州、Pikevilleという小さな町、刑事弁護士のRussell Quinn(Rusty)は凶悪犯の弁護を引き受けるため警察はもとより市民からも嫌われている。数週間前、彼を嫌悪する男によって、自宅を放火され家族は郊外の農家に引越す。そして今日、Rustyは担当したレイプ事件で無罪を勝ち取り、被告は釈放される。それに不満を持つ人々が家族に危害を加えることを心配した彼は家族に電話で警告のメッセージを送る。しかし、数分後、二人組が銃を持って家に侵入してくる。彼らは妻Gammaをその場で殺害し、15歳、13歳の娘たちはレイプしたうえ殺そうとして二人を近くの林に誘導する。姉妹は抵抗し、姉Samantha(Sam)は頭を撃たれて生き埋めにされるが、妹Charlieは隙を見て逃げて隣家に駆け込む。

28年後、妹Charlieは父親の法律事務所で弁護士として働くが、姉は二人とは絶縁してNYで特許関係の弁護士となる。そして今日、Charlieは後悔の念にさいなまれながら、バーで会い、一夜を共にした男のもとへ向かう。お互いが相手の携帯電話を取り違えてしまったために・・・一夜を共にした男はHuckabeeと名乗り、彼女が、昔、通っていた中学校の先生だと言い、彼女は携帯電話を取り戻すため久しぶりに学校へ行く。彼に会い、彼女が自己紹介した後、友好的だった彼の態度がよそよそしくなったことを彼女は感じる。彼は刑事弁護士である彼女の父親について知っているようで、すぐに出て行けと要求する。その場が気まずくなった時、彼女は4発の銃声を聴く。銃声の方へ向かったCharlieは校長室の前で、校長と少女が血を流して倒れていて、校長の夫人がヘルプと叫んでいる場に出会う。そして二人を撃ったと思われる少女Kelly Wilsonが銃を彼女自身に向けている様子が。Kellyは通報によって駆け付けた警官たちからの警告は無視するが彼女を知っているというHuckabeeの言葉に従い、銃を彼に渡し警察に逮捕される。事件は全国ニュースとなって町は騒然となる。事件を起こした少女は校長ばかりでなく少女を殺したことで非難が殺到し死刑を求める声が高くなる。当然のように少女の弁護はRustyが引き受け、その日のうちに少女に面会した彼は、Charlieに少女は無実の可能性が高いと告げ、彼女を驚かせる。彼女は事件現場にいてKellyが銃を持っているのを目撃していた。二人は捜査について意見を交換、Kellyが持っていた銃の所在が不明になっていること、学校の監視カメラには死角があること、Kellyは知的障害があり犯罪を犯す能力がないのでは等々・・・。Charlieが自宅で今日の出来事を振り返っている時、別居中の夫Benが彼女の様子を心配して訪ねて来る。そして、彼女は検事補であるBenにかかってきた電話から父親が刺されて重体だ知る。

母親のGammaと同じ44歳になった誕生日、NYで特許専門の弁護士として活躍するSamは、BenからCharlieが彼女を必要としているというメッセージを受け取り、急遽、二度と帰らないと誓ったPikevilleに帰る。彼女は亡くなった母親から妹を守ってあげるよう強く言われていた。彼女はCharlieが常に脅迫を受けている父親の法律事務所で弁護士業務をおこなうことは彼女の身に危険が及ぶことになると主張してCharlieの決断に強く反対したが、Charlieは忠告を無視する。以来、二人は何となく疎遠となっていた。しかし、彼女は一切返信することはなかったが、彼女の夫Benと父親は定期的に彼女にメールを送り続けていた。彼女が予期したようにBenと父親から送られてきた誕生日おめでとうのメッセージを読んだ後、事務所に着いた彼女は、Pikevilleの彼女が通っていた学校で18歳の少女が銃乱射事件を起こし、校長と8歳の少女が殺され、父親が彼女の弁護士となったというニュースに衝撃を受ける。ネットなどで事件の詳報を得ようとした彼女は、28年前の事件の関係者の名前を発見して呆然とする。そんな時、Benからの緊急のメールが送られてくる。Benからのメールを受けて、帰郷した彼女はICUから生還した父親から思いがけない提案を受ける。

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学校での銃乱射事件についてもさまざまな謎が提示されて興味深いのだが、ミステリーというよりは家族の絆の物語という感じだった。悲惨な事件の後、姉妹がどのように事件を受け止め、どのように生きて、今、過ごしているか、そこまで必要かと思うほど細かく描写されていく。そのためミステリー色が薄れている。理知聡明な母親と娘達との会話の楽しそうな様子、 弁護士となった娘の初公判の様子を秘かに傍聴して彼女の成長を喜ぶ父親。しんみり、ほのぼのとした気持ちになる。

ただ、映画『羅生門』のように姉妹それぞれの見方から悲惨な事件を語るというユニークなストーリー構成。読む方は悲惨な出来事を2度読みするのは辛い!

E-book(Kindle版)★★★★ 528ページ 2017年8月出版 500円(2018年1月購入)